ギリシャ神話 アポロンと記憶
アポロン
アポロンはゼウスとレートーの子。月と狩猟の女神アルテミスとは双生児。
さて、母レートーは、オリュンポスの神々に敗北するティターン族の娘。 ティターン族は発生段階としては外胚葉初期、 進化段階としては大脳の深部の中枢機能を表している。ゼウスー間脳に上位中枢の地位を奪われた領域。
レートーが象徴するのは、変動周期及び大脳辺縁系。 大脳辺縁系は大脳基底核の外側を取り巻くようにあり、人間の情動の表出や意欲、記憶、自律神経に関与する部分。
アポロンが音楽、数学の神とされるのは様々な体内リズムを刻むため。呼吸リズム、心拍など。電気信号の指令を出している。脳波も含む。
アポロンがイルカと関係する由縁もここにある。イルカは周波数を持ったパルス音を発するからだろう。
このリズム、信号の特性が、記憶に繋がってくる
アポロンは非常に多才で、芸術、予言の神ともされるがこれは記憶とつながっている。
記憶
ティターン族の記憶神ムネーモシュネーとゼウスが結ばれて、9人のムーサ文芸の女神が誕生する。
アオイデー(歌唱)、ムネーメー(記憶)、メレテー(実践)、テルクシノエー(魅惑)、アルケー(始原)など。
アポロンは、ムーサ(文芸)の9人の娘を主宰する。
大脳皮質は、聴覚や記憶に関連した様々な機能を持つ。
(側頭葉)
聴覚野ー聴覚情報の受取
側頭連合野ー視覚・聴覚・色・形・音の記憶
ウェルニッケ野ー感覚性言語中枢
(前頭葉)
ブローカー野ー言語処理、音声言語処理
(頭頂葉)
角回ー言語理解、連想記憶部分
縁上回ー音韻のワーキングメモリー
自然言語の文法処理は、脳の構造によって決定されている、そしてその文法構造は再起的な性質を持ち、文章は可能無限的に延長されていく。この言語記憶処理がアポロンが予言神たる所以だと思う。
さて、カッサンドラの悲劇である。
カッサンドラはアポロンに言い寄られ、交換条件にアポロンから予言の能力を貰う。その瞬間、彼女はアポロンに捨てられた自分を予知し、アポロンから逃げた。アポロンは怒り、カッサンドラの予言は嘘だと呪いをかけた。
これはレム睡眠と予知夢の話だと思う。 睡眠にもレム、ノンレム睡眠とリズムがある。 カッサンドラはレム睡眠領域にあたる。 ヒトが得たさまざまな記憶(知識)は、大脳の外側の層である大脳皮質に分散して保存される
ヒトの大脳皮質には、多くの神経細胞がある。
神経細胞はつながりあっていくつものネットワークをつくる。
その中の特定のネットワークに電気信号が流れると、分散して記憶していた大脳皮質の神経細胞が同時に活動することになり、まとまったひとつの記憶として思い出される。
ヒトが目覚めて活動しているときは、その時々で必要なこと以外に注意が向かないよう、必要な脳内の神経ネットワークのみが選ばれ、他の不要な情報は意識にのぼらないように抑えられている。
しかし、夢を見る睡眠(レム睡眠)中ではこの抑制がはずれ、起きている間には結合が抑えられた神経細胞もネットワークに組み込まれてくる可能性がある。
これらの神経細胞の活動によって、目覚めている間はつながりあうことのなかった記憶どうしがつながり、通常では考えられないような記憶の組み合わせが生じてひらめきがおこるのではないかと考えられている。
カッサンドラの予言は、この閃きの力を指すのではないか。
アポロンは音や光など様々なリズム(伝達信号)を司り、記憶する。
この中には、免疫記憶も含まれる。これは次回解説します。