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ding-dong

※この詩は、バンドマンの方がレコード屋さんをされていて、先日、わたしが駐車場からお店までありいているときに、そのボーカルのバンドマンの店長が木製の古びた椅子でタバコをふかしていた。その横から見た姿にワタシは哀愁を感じた、即席でかきました。あしからず笑、



そのままの静止画が欲しいと思った
そのままの一瞬を切り取ったフレームが

それは

決して新しくなんてなくて
決して美品でもなくて
まるで古時計を思い出させる埃の匂い

決してこちらなんて気にしていなくて
決して諦めなんて言葉はとっくに捨てた老木様

すこし曲がった背中
くたばったTシャツ
一本気な年輪と頑固さを煙たさが庇う

決してまっすぐな視線なんかではなく
決して原色性なんかではなく

決して他人の生き様なんて羨む事はやめた「静」
律して他人と比べるくだらなさを微笑した「動」

すこし軋む木製の椅子
すこし舞うタバコの煙
手作り感を醸し出す椅子
すこし煙たい灰皿 

店主の無精髭が一層風合いを増している

決して自信で前をみつめるわけでもなく
決して後悔と弱音を広げるわけでもなく
決して奥底では魂は捨てるはずもなく

45年目の輪を重ねようとしている
たった1人の
たった1人の人間の
たった1人の店主の

丸くて小さな幸せを大切に生きようとする
小汚くて他人に迷惑をかけないように佇む

どこか、いい「諦め」を持った「静」
どこか、いい「頑なさ」を持った「動」

そんな真横からの姿に
私にだけ映るスライドショー

「哀愁」といえば簡単で
「悲哀」といえば違和感で

椅子の木と同じ色のシャツが汗ばんでいる

「幸福」といえば簡単で
「生きていく術」といえば簡単で

椅子と同化する横顔に
少し丸まった背中

くたびれたシャツに
計算された野暮ったい髭

大きなスクリーンが一気に広がる

私は深い溜息と憧れを吐き出す

映画のワンシーンから切り取られたような
日常のワンシーンから切り取られたような

何気ない
「横顔」と「露わな心裸体」

店の隙間から英語のミュージックが漏れている
相棒たる店内のハーブ葉香と波乗りジョニー

それらが「さぁ」と
一気にエンディングへと引き寄せる

心地よく瞼を開らく瞬

そこには

椅子からのっそりと立ち上がり、
くたびれた風貌たる人間が。

店主はあっさりはスクリーンを跨ぎ来。

決められたセリフを持って


「いらっしゃいませ」

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