目覚めると、タモツの目の前には椅子に縛り付けられた今日子がいた。
「今日子!」
駈け出そうとするが体が言うことを聞かない。ふと自分の体に視線を向けると、タモツ自身も椅子に縛り付けられている。
向かい合って座らされている二人。
今日子は怯え切った目でタモツを見る。
「タモツ・・・」
「今日子、大丈夫か!?なんでこんな事に?」
「わからない・・。仕事が終わって、職場を出たら突然意識が無くなって・・・」
すると突然、今日子の後ろの扉が開く。
「フッフッフッ!ようやくお目覚めかな?関西人よ。」
扉からは、不敵に笑う怪人が現れ、今日子の方に歩み寄ってくる。
「誰やお前!今日子に何するつもりや!!」
「フン、私のターゲットはこの女ではない。お前だ、関西人。」
「俺?」
「一つお前に質問しよう。おい。関西人!お前はこの女を愛しているか?」
「当たり前やろ!今日子は俺の宝もんや!お前、今日子に指一本でも触れてみぃ、タダや
置かんからな!!」
鋭い眼差しで、怪人を睨みつけるタモツ。しかし、怪人はものともしない様子でいる。
「ほぅ、それほど愛しているのか。この女を何者からでも守ってやると?」
「そうや!今日子を悲しませたり、辛い思いさせるもんからは、俺が守ったるって誓った
んや!!」
タモツと今日子、二人の左の薬指には指輪が光っている。
「だから俺は絶対にお前を許さん!絶対にぶっ飛ばしたるからな!!」
「フン、面白い。それではその愛とやら、試してみるかな?」
「あぁ!?」
怪人は不敵に笑いながら、さらにゆっくり今日子に近づく。
怯える今日子。
「何する気や!やめろ!!」
怒り、体をもがかせるタモツ。
しかし、怪人は尚も今日子に近づくと、ゆっくりと手を伸ばす。そして、今日子の着ているセーターの襟元の後ろを掴むと、グイとタモツの方へ引っ張り出す。
そこには、ネームタグがあった。
驚いた表情のタモツ。
「お、お前・・。」
しかし我に返り、何かをためらう様子で視線を背けるタモツ。
「どうした?関西人」
笑みの色がさらに濃くなる怪人。
「くっ・・。」
悔しそうに歯を食いしばるタモツ。
「どうした?何をそんなに堪えている?」
不敵な笑みを浮かべたままさらに詰め寄る怪人。
「なんだ?楽になっていいんだぞ?」
「くそっ!・・・この野郎・・。」
タモツの額には脂汗まで滲み始めている。
「さぁどうした?吐き出せ関西人。」
歯を食いしばり続けていたタモツだったが、ついに今日子の方に視線を向けなおす。
「お前、セーター裏表逆やないか!」
衝撃を受けた様子の今日子の顔は、見る見る紅潮していく。
「あぁ!恥ずかしい!恥ずかしくて辛い!!タモツぅ!!」
恥ずかしさのあまり涙を流しながら、身悶えする今日子。
「ハーッハッハッハッハッ!」
怪人の高笑いが、室内に大きくこだまする。
「くそぉ!くそぉ、この野郎!!今日子!今日子ぉ!!」
自我に負けてしまった後悔に、身をもがき、苦しむタモツ。
泣く今日子。
苦しむタモツ。
高笑いする怪人。
「くそぉ!!くそぉー!!!今日子ぉー!!」
(終)