人と土のつながり②土壌も人間の腸も同じ
土が世界から消えているという話をした。同じことが人間の腸でも起きている。最近、『土と内臓』という本が出た。土壌細菌と腸内細菌の機能はそっくりで、生物多様性は私たちのお腹の中にもあり、掌や肌にもある。外なる生態系と内なる生態系のどちらでも生物多様性が失われようとしている。その原因の一つに遺伝子組み換えがある。遺伝子組み換えがどのような作用を与えているのか考えてみたい。
遺伝子組み換えはタネではなく細胞を操作する。精密な方法だと思われるだろうが、じつはパーティクルガン法といって、遺伝子銃で大豆のなかに大腸菌の遺伝子の一部をぶち込むというような方法が使われている。銃ででたらめに撃っていれば100回のうち数回はちゃんと入って農薬をかけても枯れない大豆ができる。またバクテリアを使って細胞を運ぶアグロバクテリウム法もある。こちらも100回のうち数回が成功という精度の低い方法だ。
遺伝子組み換え食品を食べても問題は起きないというのがアメリカと日本政府の見解だ。だが今、アメリカの市民はこれを完全にウソだと考えるようになった。要因はアメリカにおける慢性疾患の急増だ【グラフ参照】(リンク)。糖尿病患者の推移をみると、ちょうど1996年、遺伝子組み換え農業が始まった年から急激に増えている。上の折れ線はアメリカにおける大豆・トウモロコシの遺伝子組み換えの割合だ。1996年に始まり2010年には90%をこえており、現在は95%になっていると考えられる。真ん中の折れ線グラフが遺伝子組み換え農作物に使われるモンサント(バイエル)が開発したグリホサート(商品名ラウンドアップ)の農薬だ。これらが増えれば増えるほど、糖尿病患者が増えている。それだけでなくさまざまなガンも増え、子どもたちの健康が非常事態になっている。アメリカも日本も同じだ。自閉症が90年代後半から急激に増加しており、高齢者の認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病なども増えている。
アメリカでは今、警告として「私たちの子どもたちは私たちと同じだけ生きられない」という言葉がくり返されている。実際に2015年以降、年々わずかだが平均寿命が短くなっている。殺人などさまざまな要因があり一概にはいえないが、顕著なのは40代未満の人たち、とくに子どもたちの健康がとても悪くなっていることだ。「40代未満」というのは重要だ。遺伝子組み換えは24年前に始まった。そのときすでに成人していた世代は、遺伝子組み換えが出てくる前に免疫をつくってしまっているが、その後に生まれた人たちは遺伝子組み換えを食べながら免疫をつくっている。そこでさまざまなアレルギーなどが生まれる可能性がある。日本でも発達障害などで特別な支援が必要な子どもの数は急激に上昇している【グラフ参照】(リンク)。
◆虫の腸を破壊するBt毒素とグリホサート
では、遺伝子組み換えを食べるとどのような問題があるのか。例えばほとんどの遺伝子組み換えトウモロコシでは、虫が食べると死ぬようになっている。食品であると同時に殺虫剤でもある。このなかにはBt毒素が入っていて、虫が食べると腸の内壁に穴をあけて殺してしまう。
また、遺伝子組み換え農作物には農薬・ラウンドアップが使われている。モンサントはラウンドアップを「世界で一番環境に優しい」「人間の健康にも影響を与えない」と宣伝してきた。これは、主成分のグリホサートが植物の葉などから吸収されると、「シキミ酸経路」(光合成をしてアミノ酸をつくる仕組み)をブロックし、アミノ酸をつくれなくしてしまう。そのため植物は枯れてしまうという仕組みの除草剤だ。確かに人間や動物は光合成をしないのでシキミ酸経路を持っていない。モンサントは「だから人間や動物には毒性が低く、安全な農薬だ」という。しかし本当なのか。
私たちの体の中には大事なパートナーがいる。腸内細菌だ。腸内細菌は植物の仲間なので、ラウンドアップは植物を枯らすのと同様に、腸内細菌を殺してしまうことがあり得るのだ。しかし、すべての腸内細菌が殺されるかというとそうではない。大腸菌やサルモネラ菌など悪玉菌は強く、ラウンドアップをかけても影響をうけず、乳酸菌などの善玉菌がダメージを受けてしまう。そうなるとどのような問題が起こるか考えたい。
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