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エキカレの卒業式がありました。
2023年3月21日、エキセントリック・カレッジ(以下、エキカレ)の卒業式がありました。エキセントリック・カレッジとは、福井県と慶應義塾大学SFC研究所がコラボし主催する、地域社会を盛り上げるための実験的仮想大学です。9月開講より、月2〜3回の講義と3回の合宿で、様々なエキセントリック講師のお話を伺ったり、ワークショップをしたりしました。そして、最後の卒業課題は、言葉だけでは表せないエキカレの学びや意義を「劇」という形で表現するというものでした。劇の完成度ではなく、その劇を作る過程を重視する卒業課題。例えるなら、砂場でお城を建てるのではなく、ひたすら掘る作業にフォーカスする課題ということでした。
私達のグループが取り上げたテーマは「奇品」。
これは、エキカレの学びや要素を考えた時に産まれた造語です。メンバーの一人が提案してくれた言葉でしたが、グループ内で様々な意見があり、その議論は正に砂場を掘りまくる時間でした。
議論途中でおおよそ共通した考えは、コミュニティーと、個々それぞれがもつ2つの「奇品」でした。
コミュニティーとしては、それぞれの考えを尊重し、まず受け止めようという姿勢や、「そんな考えもあるんだね。」と話しに耳を傾ける寛容さ、それぞれの過去を詮索することもなく、パーソナルスペースが確保されている安心感や、思いを吐露したい時間を許してもらえる優しさ…一般的な社会ルールということではない、人と人が心地よくつながる風土に「品」というものを感じました。また、周りに流されないそれぞれの様々な意志(スタイル)に尊厳や誇りを、一歩を踏み出している人の姿にプライドという「品」を感じました。品は「しな」とも読め、「とりどりの個性をもつ」という意味があることをメンバーが教えてくれ、正にぴったりの言葉だと実感しました。
そのテーマを表現する題材が「寒中の半袖短パン」でした。ストーリーは、寒中で半袖短パンを着たい主人公が、世間の声で、自分の表現したいことに自信をなくし、その姿を隠してしまいます。しかし、街中で会った「自分を受け止めた人」「表現したい何かを一緒に面白がる人」の存在で、自信を取り戻し、隠すのに使った上着を脱ぎ、世間に明るく向き合っていくという内容になっています。街中で会うロングTシャツの袖を片方だけ切った服の青年は、奇抜さと寛容さの象徴だと私は思います。
一見、「なんじゃこれ!?」という寸劇ではありますが、個人的には「奇品」を表現するのにピッタリの内容でしたし、私達メンバー皆が向き合い、輝けた作品になったと自負しています。
エキカレのメンバーの中には、過疎化する自分の町や担い手の減る産業を盛り上げたい、不安な経済状況でも個人所得を増やすような取り組みに貢献したい、市町を活気づけるため行政に新しい風を吹かせたい等、減少・衰退という社会の変化や、現状維持という不変化に逆らって、自分にとって大切なもの・場所を守ろう、発展させよう、変化させようとチャレンジしている人達がいます。そのような姿に、私は「奇品」を感じます。今回の寸劇では、「逆境に挑戦するプライド」を「寒中の半袖短パン」で表現したと、私は解釈しています。
乳幼児教育に携わる私は、日本の11時間保育に疑問を感じています。平成27年度より子ども・子育て支援制度が始まり、全国で幼稚園と保育園の機能を併せた認定こども園が続々と増えていきました。私の所属する園も、幼稚園から認定こども園に変わった園のひとつです。幼児教育と養護の機能を合わせた施設ということで、少子高齢化の社会を支える子育て支援の場としては、社会的意義が大きいと思います。しかし諸外国と比較しても、日本の保育時間は長く、現場もゆとりがないのが現実です。11時間の長時間保育が保証されていることに伴い、両親ともフルタイム勤務を選ぶ家庭、特に核家族の親は、分刻みの生活を送ることになります。そこに子どもとゆったり向き合う、親自身が子育てを楽しめるゆとりが持てるのかと懸念します。当たり前になってしまえばこなせはしますが、全速力で走っては、疲れてしまいます。人の脳の大部分ができあがる乳幼児期は、子ども達一人ひとりの生涯を支える原風景となります。11時間保育がその重要な時期の子育て環境として適しているのかモヤモヤしています。
社会を支えることと、ゆとりのある子育て環境を作ることは、卒業式で知事とプロデューサーの若新雄純さん、エキカレメンバーの対談でも話題に上がった「間」の話がヒントになるようにも思います。「間のある福井」つまり、立ち止まったり、生活に余白があったりする生活は、子どもの豊かな原風景を保証するようにも思います。子育ての効率化という社会の流れに反するかもしれませんが、それぞれの現場で、片袖の敗れたメンバーがいることを励みに、大切だと思うものを守れるよう、これからも精進していきたいと思っています。
最後になりましたが、杉本達治知事はじめ、プロデューサーの若新雄純さん、CODの寺井雄介さん、担任の村上純一郎さん、講師の方々には心よりお礼申し上げます。こんなにも面白いコミュニティーに参加させて頂けたことを大変光栄に思います。また、劇を作るにあたり、夢の蕾を膨らませ始める美しいEちゃん、ユーモアと洞察力で方向性を示してくれたG君、湧き出るアイディアでエネルギーチャージさせてくれたRちゃん、自身へのもがきに真正面から向き合う勇敢さを示してくれたCちゃん、刺激と勇気と可能性を教えてくれるエキカレメンバーには心から感謝しています。
素晴らしい時間を、ありがとうございました!