2021年の100冊 #14 「空が青いから白を選んだのです」(寮美千子)
なんとなくタイトルに惹かれて手にとったけど、開けてみたら詩集とのこと。詩集なんて全然興味はない。
でもなんとなくパラパラ見てたら、なんだかすごいことが起こっている。
少年刑務所で。
詩から見える社会の歪み
2021年の100冊、ジャンル問わずとにかく本を読んで勉強することを目的に開始。ログはスマホで15分で書き上げることを目標にしています。
14冊目は、詩集と解説文半々のようなこちらの本です。
Amazonの紹介文には以下のように記載されています。
美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった──「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。
「彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった──」編者の方はこう書きました。
子どもたちは、なんと可能性にあふれているのだろう。
彼らには、社会の歪みがのしかかっている。
少年犯罪は決して個人の罪ではないのではないか。
そんなことをひしひしと感じます。
この本のタイトルになっている詩。「空が青いから白を選んだのです」。タイトルは何だと思いますか?
彼らの詩を見た編者はこのような感想も漏らしています。
「こんな繊細な子たちが、社会ではどんなに生きづらかっただろう。」
空が青いから白を選んだのです
改めて、この詩のタイトルは何だと思いますか?
「くも」です。
くも
空が青いから白を選んだのです
たった一行。
この一行に込められた背景、思い、そこから広がった少年たちの心の輪。ぜひ、本著を読んで直接味わってほしいです。
「きみたちのことを大切に思っているよ」というメッセージ
本著に収められている57の詩たちは、奈良少年刑務所の「社会性涵養(かんよう)プログラム」から生まれたものが掲載されています。
言葉は少ないのに、ハッと心を打つもの、涙が出そうになるものばかりです。
対象者は、刑務所の中でも極端に内気だったり、みんなと歩調を合わせるのが難しいかったり、虐待された過去があって心を閉ざしがちだったりする人々です。殺人や強盗、レイプなど重罪を犯した少年たちも含まれています。
でも、全6回半年の講義を受けるうち、無表情だった子、野良猫のようにサッと構えてしまう子、不機嫌な態度や横柄な態度の子たちが、明らかにどんどん変わっていったそうです。
自傷傾向があったけど今では人の人生相談に乗るまでに客観的に内面を見つめられるようになった子。スカートの影から恐る恐る人の顔をのぞいていたような子が、得意なことを一つ見つけて関心を持ってあげただけでみるみる積極的になっていく。ふんぞり返った態度だった子が、俳句をほめられたことをきっかけに腰掛ける姿勢まで変わり、授業に身を乗り出すようになった。
良循環がどんどん重なっていったそうです。
教官も講師も、ただ彼らが心から安心できる場所、くつろげる時間を作ろうと努力しただけ。いつもきみたちを見つめているよ、きみたちのことを大切に思っているよ、なんとか更生してほしい。ただそれだけの気持ちで彼らを一心に見つめているだけなのだ。
それだけで、彼らは自分たちで芽を出し、みるみる成長していく。刑務所に入るような重い罪を犯した人間でさえ、心にこんなやさしさを抱いている。どうしてこれが、いままで発揮されないまま、彼らはここへ来てしまったのか。そう思わずにはいられない。(p.201-2)
日本の刑務所に収容されている人の、約55%弱が再犯者なのだそうです。そもそもこうした社会の歪みを矯正することも大事だけど、単純に考えても刑務所が更生施設として機能すれば日本の犯罪の半分はなくなり、刑務所はガラガラになるはずだというのが編者の考えです。
教育、人の内面を引き出すこと、人に関心を示すこと、マイナスをプラスに変えること。そんな仕事への興味も頭をちらついてしまうほど、短いですが衝撃の多い本でした。
(noteログ 45分)