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帽子

闇に灯る
小さな明かり

重たい足取りで
引き戸を開けた

いらっしゃい
ご主人の猫さんが出迎える

店内を見渡すと
不気味に魅力的なものばかり

何語か分からない分厚い本
奇妙な形の古いランタン

どれも惹き付けられるのに
足が止まるのはひとつだけ

猫さんは微笑んで
私を見た

それかい?それはいいものさ
ぴったりだよ、お安くしとくから

商売上手な
猫さんに乗せられて

私は買ったばかりの
帽子をかぶって店の外に出た

そこには
薄闇が広がっている

突然、半透明で巨大な
太古の魚が頭上に浮かぶ

驚いて帽子を取ると
見えなくなった

私はもういちど帽子をかぶると
のんびり魚と泳ぐように帰路についた

どうして私が帰りたくないことに
気付いたのだろう?

猫さんに分からないことは
何もないのかもしれない

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