中央区の審議会・委員会は区民に開かれてるか? - 積極的な情報発信により、さらなる区民参画の実現を!
行政の運営に関して、役所の人たちだけでなく住民も交えて議論をしていくことによって、より良い意思決定をしていこう!という取組は全国的に行われており、中央区においてもこのような考え方は導入されています。
基本計画2023には「計画推進のための区政運営の考え方」の柱の1つとして「さまざまな主体との協働」が掲げられ、その取組として「区民の区政参画の促進」や「開かれた区政の推進」が挙げられております。
これは要するに、より多くの区民の皆さんに区政に参加していただくこと、より透明性の高い区政を実現していくことを目指しているものと考えています。
そして、このように区民の皆さんにもっと行政運営に関わってもらうことを目指すのであれば、まず行政として行っていることを知ってもらうこと、そして、その上で参加できるような場を設けていく必要があります。
こういった観点から現状の施策を見てみると毎度ながらいろいろ課題がありまして、今回は日々行われている様々な審議会・委員会などの運営について掘り下げます。
何が問題?
そもそも審議会・委員会って何なの?
行政における様々な意思決定の多くは行政の職員だけで行われているわけではありません。「○○○○審議会」や「✕✕✕委員会」と呼ばれる、いわゆる附属機関において専門家の意見などを交えて大きな方針が決定され、それをもとに詳細を行政の内部で詰めていくというパターンが多いです。
これについて良い感じの説明がないかなと思って調べていたら、町田市のガイドラインにこのような表現がありました。
執行機関(=役所)を補完する目的で、具体的には以下の3つの目的のために設置されるとあります。
高度な専門性を必要とする場合
身近な立場からの情報を必要とする場合
中立・公正性の確保が必要な場合
1と3の棲み分けがやや不明ですが、これらが想定するのは大学等の研究者や弁護士など専門的な知見を持っている方々。2については地域住民ということです。
このような考え方に基づき、中央区においても以下のような附属機関がたくさん存在しています。
どうやって関わるの?
これらの審議会(附属機関というと伝わりにくそうなので、厳密な定義はさておき以降はこれで統一します)は区の施策の方向性に大きく影響を与えるものですから、基本的な考え方としてこれらの会議は「公開」となっています。傍聴できるということです。
上記のように、「原則的に公開」とはっきり書いてあります。これらが公開されるというのは、施策の決定プロセスを明らかにするという意味で極めて重要なことです。
しかしながら、問題はその運用の実態。これらの審議会はそれぞれの部署が実態としては運営していることから、その運用は実に様々。その結果として、基本計画に掲げる理念を十分に活かすことができておらず、区民に開かれていない(議員も含め)と思われる状況が散見されます。
問題は多岐にわたりますが、今回取り上げるのは以下の3点です。
開催状況の把握が困難
傍聴時のルールがバラバラ
配布資料の公開のルールも様々
問題1.開催状況の把握が困難
1点目に、いつどこで審議会が開催をされているのかを把握するのが困難であるという点。
というのも、開催に関する情報はそれぞれの審議会等のWebサイト上のページに掲載されており、その情報にたどりつくためには都度それらのページを確認する必要があるためです。そして、実際には探せないのです。
こちらは「文化財保護審議会」の例。開催日時や場所の記載がありますが、その階層は深い。
このページのある階層をトップからたどるとこんな感じ。
Webサイトのトップから5階層たどる必要があります。
いやいや、こういう開催案内はわざわざ階層からたどるというよりはWebサイトのホームにある"新着情報"だとかXなどの"SNS発信"などからたどるものじゃないか、という賢明な方もおられるでしょう。普通はそうです。
しかし、ここはその「普通」が通用しない世界。
まず、開催案内は新着情報に流れないものが大半です。こちらが新着情報一覧のページ。先ほどの文化財保護審議会のページの最新の更新日は「7/9」で、おそらくこのタイミングで開催案内が掲載されてるはずですが、新着情報一覧には表示なし。
そして、もちろん公式XなどのSNSにもお知らせはありません。
新着情報には出ているものの方が少なく、現在表示されている6月から7月にかけての新着情報で開催情報がはっきり書かれているのは「中央区子ども・子育て会議」だけ(素晴らしい)。
一応言っておくと、この期間にこれだけしか会議がないというわけではないです。これで全部かは確実じゃないですが、少なくとも下記の審議会の開催(予定も含め)は確認しております。この9つのうち、掲載されていたのは上記に挙げた「中央区子ども子育て会議」の1つだけなのです。
この他、さらに問題なのは審議会のwebサイト上に開催案内すら掲載されないパターンもあるということ。何せ掲載すらされてないので例示するのは難しいのですが、しれっと開催報告のみが掲載されているものがあります。
言うまでもないですが、これらの開催情報が掲載されないもしくは極めてわかりにくい場所にしか掲載されないということになれば、そもそもその審議会等の開催を認識することができません。そして、認識できなければ「傍聴してみようかな」とか「後で会議録だけでも見てみようかな」という思いすら抱くことはできません。
問題2.傍聴ルールが不合理かつさまざま
2点目に、傍聴のルールは審議会等によって様々であるという点。
「問題1」で挙げたとおりそもそも見つけるところに大きなハードルがあるわけですが、その上で見つけていざ傍聴してみようかなと思ってもそう簡単には行きません。審議会等によって色々とルールが異なるためです。
一例としては傍聴受付の期間。傍聴を希望する場合には事前に申し込みを行う必要があり開催案内などにその期限があるのですが、この期限設定が実に多様性に満ちています。以下は中央区防災会議でこちらは20分前まで。
他の例をいくつか挙げると下記のとおり。けっこうばらばらなので、ある審議会に傍聴に行こうと思ったら「傍聴の受付期間が終了して断られる」ということも過去に何度かあります。
この他、審議会によってはPCやスマホなどの電子機器の使用ができない場合もいまだにあります。さらには、当日配布資料の持ち帰りまで制限される場合もあります。こちらはそれほど多くなく、経験している範囲では教育委員会だけ。
問題3.資料の公開もさまざま
3点目に、会議開催後の配布資料や会議録のWebへの公開についても審議会によって対応が異なっています。
例えば「防災会議」では配布資料と会議録がそれぞれWebに公開されています。これは良い例。
他方、「中央区スポーツ推進審議会」では配布資料は公開されておらず、会議録だけ。これは良くない例。
なお、こちらの会議の場で配布資料がないわけではありません。会議録にははっきり当日の配布資料があったことは記載があるので。あるにもかかわらずWebには掲載してないのです。
この他、公開の時期についても本来は開催後に速やかに行われるべきですが、早いもの、遅いものと幅があるのが実情です。
遅い例としては「中央区いじめ問題対策委員会」の会議録。執筆時点(2024/7/19)の時点で最新は令和4年(2022年)6月9日開催の会議。2年以上前のものです。
もちろんそれ以降まったく開催されていないなんてことはなく、令和5年(2023年)に2回、 令和6年(2024年)に1回開催されているのは確認済。あるはずだけど掲載していないのか、そもそも作ってないのですね。
問題点まとめ
ここまで、それぞれに具体的な例を挙げながらこれら審議会に関わるのが簡単ではないことについて書いてきました。
1点目に、いつどこで審議会等が開催をされているのかを把握するがまず困難です。それぞれの審議会等のWebサイト上のページに掲載されており、その情報にたどりつくためには都度それらのページを確認する必要があります。また、中には事前にWeb上に開催情報が掲載されない場合もあります。
2点目に、傍聴のルールは審議会等によって様々です。傍聴を希望する場合には事前に申し込む必要がありますが、その期限がまず様々。また、資料の持ち帰りやPCの利用可否などについても制限するルールがある審議会もあります。
3点目に、会議開催後の配布資料や会議録のWebへの公開についても審議会によって対応が異ります。配布資料と会議録のそれぞれが公開される場合もあれば、会議録だけの場合もあります。また、公開の時期についてもいつまで経っても掲載されない審議会もあります。
これでは基本計画に掲げる「区民の区政参画の促進」どころか「開かれた区政の推進」も成り立たないでしょう。
どうすれば良い?
それでは今後どのように改善していくべきでしょうか。それぞれ、軽く説明していきます。
まず、開催状況の把握が困難である点については一覧できるページを作るべきと考えています。この好事例として挙げられるのが千代田区。「千代田区附属機関等の会議開催日程」として、審議会等の開催状況が時系列に並べられています。
このように、日時や場所、公開可否、傍聴の条件など必要な情報が網羅されています。
このページがあれば、関心のある審議会を見逃す可能性はだいぶ低くなるでしょう。また、時系列で網羅的に開催状況が掲載されていますので、この一覧を見て関心を持って傍聴に行くという流れも想定されそうです。
傍聴に関するルールや会議開催後の配布資料の持ち帰りや公開などについては、できる限り区民の皆さんが参加できる・閲覧できるという観点から改められるべきでしょう。
傍聴に関しては直前まで受け入れるようすべきですし、配布資料の持ち帰りやPC等の利用は制限されるべきではありません。また、参加できなかった人たちに情報提供するという意味で配布資料や会議録はWebサイトに速やかに公開されるべきです。
また、そもそものところでガバナンスが効いていないという問題があります。これらの仕組みは中央区が行っている参加の機会や区政情報の提供であり、個々の担当部署任せでそれぞれ対応が違うというのはおかしな話です。区として全体のあるべき姿を定めた上で、横串を通して運用が徹底されるよう整理されるべきでしょう。
今回のやり取り
質問したこと
これらを踏まえて、今回の質問はこれらの審議会運営についての現状について。基本計画に掲げる「区民の区政参画の促進」「開かれた区政の推進」という観点からどのように現状を把握しているのかという点です。
もう1つは、これらの現状の改善に向けた今後の展望について。
質問に対する答弁
答弁はこちら。
答弁への考察
まずもって「一律の運用は困難」という残念な入りですが、情報提供を行うことは「区政への興味と関心を高め、開かれた区政推進の一助となる」ことで「可能な限りの対応」との答弁。
もちろん全ての審議会でまったく同じ運用を行うことは非現実的であるにしても、既存の様々な運用の中から望ましいモデルを導いて、それをテンプレートとして周知していくということはできるはず。
また、今回の記事で挙げてきた様々な不合理な運用についても、改めて基本計画などに掲げられた理念をもとに見返してみることで改められる部分は多々あるでしょう。
たとえば、以下のような点は審議会の「設置目的」だの「事案の内容」だのを問わず共通して適用できるものでしょう。
この件についてはまず中央区内での審議会をサイト内検索でゴリゴリ探してリストアップ(そもそもリストアップすらされてない!)しているところで、その作業の後に個々の審議会の現状についても整理して改めて改善の提案を申し入れようと考えております。
今回の記事についての感想や、その他ご意見などあればぜひお聞かせください。