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1億円もの税金が流れてる"任意団体"!?"中央区文化・国際交流振興協会"のナゾ

 今回は、中央区の関係団体である中央区文化・国際交流振興協会について書きます。タイトルのとおり、けっこうな税金が投入されているにもかかわらず組織形態としても実態としても運営が不透明な任意団体で、改善の余地が多々あると考えております。


どんな団体なの?

事業内容

 まず、どんなことをやってる団体なのか。Webサイトには下記のような記載があります。

中央区文化・国際交流振興協会は、中央区で生活する人々が主体的に、自由に、はつらつと文化活動や国際交流を進め、「わがまち中央区」を、真に人間性豊かで、住みやすく、楽しく、誇れるまち、そして世界に開かれたまちにすることを目的として設立されました。

中央区文化・国際交流振興協会 Webサイト - 協会について

 主として行っているのは名前のとおり「文化振興」と「国際交流振興」。

 文化振興としては、コンサートや文化講座などのイベント開催や、区内で活動している文化団体への活動助成など。この他、毎年11月に行われている「中央区まるごとミュージアム」の運営を行っているのもこの団体。

 国際交流振興としては、在住・在勤・在学の外国人と日本人が日本文化を体験できるイベントである国際交流サロン、ボランティアによる日本語指導を行う日本語教室など。

組織 

 次に、組織について。組織としては事務局が7名に対して役員が18名(理事16名、監事2名)という構成。理事がいっぱい。

中央区文化・国際交流振興協会の組織構成

 理事については名簿もWebサイトから確認可能です。

中央区文化・国際交流振興協会の役員名簿(2023/7/12時点)

 各地域の連合町会長やPTA連合会会長など、地元の方々が満遍なく入っている印象。また、副区長をはじめとして区役所の担当部署の幹部も名を連ねています。ちなみに無報酬とのこと。

 事務局の方々は全部なのかは不明ですが、事務局長と事務局次長のポストはいわゆる天下りで、中央区の退職した職員。ちなみに、事務局長はこの団体の所管である区民部の元部長。よくあるやつ。

予算規模と内訳

 次に予算について。この団体の予算規模はおおよそ1.2億円。Webサイトから発見した支出の内訳は下記のとおり。

中央区文化・国際交流振興協会の2023年度予算における支出内訳

 内訳をより直感的に理解するために円グラフにしたのがこちら。

中央区文化・国際交流振興協会の2023年度予算における支出内訳(円グラフ)

 見てのとおりで、文化振興と国際交流振興を2つの柱としていますが支出規模からすると文化振興の方が予算の大半を占めています。国際交流は少しだけ。具体的にどの事業にどれだけ費やされているのかは不明。

 上記は支出でしたが、収入の方についてはこんな感じ。

中央区文化・国際交流振興協会の2023年度予算における収入内訳

 円グラフを作る必要もないほどに、区の補助金頼りの運営です。わずかに事業収入はあるにしても、たったの140万円程度。これに対しての補助金は1.2億円。一応作ってみたら、やっぱりこうなる。98.9%を区の財源に依存。

中央区文化・国際交流振興協会の2023年度予算における収入内訳(円グラフ)

何が問題なのか

 これまで、事業・組織・予算のそれぞれの観点から協会の概要について書いてきました。紹介してきた部分だけでも色々とツッコミどころは多い団体です。「活動内容が見えない!」とか「人件費多すぎ、天下り団体だろ!」とか「自主財源ほぼゼロかよ!」とかとか。

 しかしながら、そういう団体は他にも多々あります。だから問題ないということではないのですが、少なくともこの団体だけの問題ではありません。中央区の中にある様々な関連団体の中でこの団体に固有で、しかも大きな問題であろうという点。それは、この協会が「任意団体」であるということ

そもそも"任意団体"って何なのか

 「任意団体」とは、特に法人格を持たない団体のことです。これに対するのが法人格を持っている団体で、株式会社や公益財団法人、NPO法人などがこれにあたります。

 要するに任意団体とはこれらの法人格のいずれも持たない、言ってしまえば「ただの人の集まり」であるということ。町会などの地域団体やサークル活動集団、同窓会と同じ。以下の表が分かりやすいです。

ちまたの会計Webサイトより

 この任意団体であることによる問題点は色々とあるかと思いますが以下に2点挙げます。

問題1.会計報告などの義務がない

 まず、法人格がないということは運営に対する定めがゆるゆるであるということ。だって、サークル活動などと同列ですからきっちりとしたルールがありません。

 以下は法人形態による様々な観点での比較。今回の件で着目するのは一番下の「監督所轄庁」の欄で、公益社団/財団法人やNPO法人であれば監督官庁への報告義務があります。

FUNDREX Webサイトより

 一般社団法人や一般財団法人の場合には同様の報告義務はないにせよ、貸借対照表や損益計算書、事業報告書を作成して総会において報告を行う必要があります。

 実態としては「監事」という役職も設定されていることから何かしらの会計処理と報告は行っているのでしょうが、問題はそれが何かにしっかりと定められたものではないということ。そうすると、その時々の担当者個人や組織によってその運用が歪められてしまう危険性があります。

問題2.業務運営上で問題がある

 次に、業務運営上においても法人格を持たないということには問題が生じます。任意団体としての活動である場合には、一般に銀行口座の名義や各種契約の主体は理事長個人とならざるを得ません。法人格がないですから。

 最近までわたしは学童クラブの父母会の会計をやってましたが、その父母会の銀行口座は会長の名義。そして、会長が変わるたびに郵便局に行って名義変更を行うというのが会長の最初の仕事となっていました。PTAだとかサークルだとかで口座を作ってる場合は同じような運用をやってるかと思いますが、これと大差ない運用をやらざるを得ないのです。

 また、別の業者などから何かを購入したり業務を委託したりといった契約行為を行う場合にも任意団体ではその主体となることができないとされています。その結果、契約を行う場合には理事長や事務局長、経理担当者などの個人がその主体にならざるを得ません。そうすると、トラブル時に責任が降りかかるのはその契約の個人名となるといった経営上のリスクもあります。

問題のまとめ

 繰り返しになりますが、「任意団体」という組織形態が想定しているのはあくまでPTAとかサークルのような小規模な団体。冒頭に書いたとおりこの協会は年額で1.2億円ほどの規模の事業を行っており、とても同列に扱われるべきではないでしょう。

 会計での依るべき基準がなければいい加減な報告になるおそれがありますし、事業運営としても個人でしか契約が行えないというのは様々な不都合があります。これらを踏まえると、いずれかの法人として登記を行うことが適正な運営のためには必要なことと考えます。

今回の質疑

質問したこと

 これまでの話を踏まえて、わたしが今回質問したのは3つ。

問1.この協会が法人化がされていない理由

 まずは、単純にこの協会が法人化されていない理由。というのも、似たような外郭団体は他にもいくつかあるのですが、いずれも何かしらの法人化はされていて、この団体だけされてないのですね。

問2.経営状況を区としてはどのように管理しているのか

 次に、現状での管理方法。問題として挙げたとおり、任意団体としては会計報告などのフォーマットはないことからいい加減な運用が可能です。それを区としてはどのように管理しているのかという点。

問3.今後の対応

 最後に、1.2を踏まえて今後の見通しについて。

回答

 上記の問いに対する回答は、おおまかに以下のとおりでした。

問1.この協会が法人化がされていない理由
→ 他の団体で法人化しているのは財産や会費収入があるような場合。この団体の場合には法人化によるメリットがないため行っていない。
2.経営状況を区としてはどのように管理しているのか
→ 理事会の中で予算や決算、経営状況や財務状況について確認している。
3.今後の対応
→ 現状として法人化すべきという考えはない。

答弁への考察

見解

 問1の回答について、ここで言っている「法人化によるメリット」という点は節税などの話なのだと推測しますが、それはあくまで協会側のメリット。なぜ協会側の視点から物言いが出てくるのでしょう。聞いているのは、あくまで中央区としての見解です。

 気にするべきなのはあくまで区としてこの協会の適正な運営をどう担保していくかという点。税金によって補助金を給付するというのであれば、そこが適正に執行できるかを判断するのは最終的にはその対象を選定した区の責任です。法人化されることによってそれが担保できるというのは大きなメリットではないかと思います。そもそも、これだけの規模感の補助金の給付対象として任意団体を選定するというのが普通はあり得ないでしょう。


 問2への回答については、あくまで理事会などでチェックを行っているとのこと。内部ではもちろん確認はされているのでしょうが、それは当然のこと。組織ぐるみで隠蔽されてしまえば分からないからこそ外部の目が必要なのであり、それで十分であるという認識であるのは(協会側がそう判断するのはともかく)支出している区の立場としては極めて危機感が薄いと感じます。

※ なお、後で確認したところによれば中央区の監査委員による監査も受けているとのことでした。ただし、4年に1度であってこれも十分とは言えないでしょう。


 これらの結果として問3の回答のように「法人化はすべきでない」ということになっているのですがこれは到底納得行きません。

今後の対応

 当初の疑念は全然晴れなかったので、本件については今後も扱います。あくまで中央区としては現状でも十分に適正な運営が行われている(だから法人化までやる必要はない)というスタンスのようなので、その判断に足るだけの情報をそもそも区として把握しているのかという観点から、関係の書類の開示請求など進めていきます。協会の方は行政機関ではないので直接情報を手に入れることはできないですが、区が補助金を出している以上は、その報告書類は区が行政情報として保有しているはず。

最後に

 任意団体の法人化という点については、過去の区議会の議事録を眺めてみると「中央区観光協会」が扱われていました。2008年の時点ではこの団体も任意団体だったようですが議会でその点を指摘され、因果関係は不明ではありますが現状では法人化されています。そのときの議事録がこちら。

平成22年 決算特別委員会(第2日 9月30日)

 当時の商工観光課長の答弁がこちら(強調は、ほづみ)。

 任意団体であることと、法人化した場合の違いということでございますけれども、まず1つは、現状におきましては、任意団体として何か活動する場合、そのすべて責任といいますか、代表する会長にその団体としての行為の責任が及ぶという構図になっております。これが法人化になりますと、その法人自体ということで、組織全体で事業を実施あるいはさまざまな行為についての責任主体となり得るという点で違いがあるものというふうに考えております。

 これは今回の問題点としても挙げた点で、区としても認識があるのであれば改善を求めていくべきかと考えます。


 また、他の自治体の事例としても似たような任意団体は存在しているようです。即座に法人化というわけではないにせよ、今回取り上げてきたように会計上の問題が生じやすいことから通常以上に丁寧に監査を行い常に改善を求めるということも行われているようです。一例として、以下は京都市の監査報告での所見。

任意団体については,特別な届出の必要がなく設立が容易で自由な活動ができる反面, その計理事務等に関しては,明確な法令等の規定がないことから,事務処理上のミスが 発生しやすい状況にあります。

平成 25 年度 行政監査結果報告

 経理事務等において明確な規定がないことから事務処理上の問題が生じやすいことから、具体的に下記のような検討項目を挙げて改善を促しているようです。

平成 25 年度 行政監査結果報告

 区としては会計処理については適正にやってます!という見解でしょうし、さらに言えば個人的にもそこはあまり疑っていなくて、問題はそれが対外的に見えないことと、何かしら問題があったときに気付きにくい構造になっていること。ということで、法人化に限らずこれらのような明示的な対応も求めていくべきと考えています。


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