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中央区の町会/自治会の実態はどうなってる?今後の住民自治のあり方を考える(2023第4回定例会一般質問より

 11月の一般質問で扱ったテーマについて背景を踏まえつつどういった質問をしたのか、そして区からどのような反応があったのかについて整理しておくシリーズ第2回。今回は、町会・自治会による情報周知/意見集約に関する件について扱います。

1. 放課後の居場所対策のさらなる改善について
2. 区民への情報周知、区民からの意見集約の現状と今後について ← コレ!
3. 行政DX化のさらなる進展と体制強化について
4. 個別最適な学びを実現するためのタブレット活用について
5. 事前審査や事前説明もしくはこれらに類する行為の実態について


質問の背景

 まず、中央区の行政運営において町会・自治会という存在は極めて大きな存在です。令和4年度の決算書ベースでは、直接的な助成である「コミュニティ活動支援事業」ではおよそ6600万円、この他地域イベントに関する事業や地域防災対策などの事業も含めれば町会・自治会の活動に対して直接的・間接的に補助している予算額は年間2億円を超える規模感

決算書の一部。エリアごとに計上されてて合計すると約6600万。

 他方で、近年は共働き世帯の増加や価値観の多様化等に伴い、地域活動への関わり方の変化や担い手不足といった課題が顕在化、さらにコロナ禍の影響もあり、これまで担ってきていた機能を十分に果たせていません。

 なお、「町会等の機能」と言うと様々な要素が含まれますが、今回は中央区から区民に対しての情報の伝達の観点、また、区民から中央区への意見の集約という2つの観点から取り上げます。「防災」とかは一旦含めてないということです。

「情報伝達」、「意見集約」の現状

 まず、情報伝達の面では現状では様々なイベント等のお知らせを各町会等に配布し、それを各団体の中で回覧板や掲示板等の手段を活用して周知を図るという枠組みがあります。

 意見集約という面でも、町会等は大きな役割を担っています。区民からの「行政全般の要望を受ける場」である行政懇談会の対象は町会等における会長です。この他、区の様々な審議会等の場に住民代表として町会等に依頼をするという手法も頻繁に見られます。

 このように町会等は、情報の周知、意見の集約というそれぞれの面で区の運営へ強い関わりを持っていると言えます。こんな感じです。

中央区と町会/自治会の関係性

「区民の声 = 町会・自治会の声」なのか?

 一方でわたしの問題意識としては、町会等に周知することが区民に対して周知することとイコールであるのか、また、町会等の意見を聞くことが区民に対して意見を聞くこととイコールであるのかという点です。

町会/自治会 = 区民?

 たとえば「町会長」という役職それ自体に公的な権限があるわけではありません。町会等が行政運営において重要な役割を占めていることの前提にあるのは、これらが「組織として区民の大多数を網羅できている」ということ、かつ「団体内において情報の周知や意見の集約が行える」こと。

 意見集約という観点では、その町会には町内の大多数の区民が加入していて、かつその内部の多様な意見を集約できているという前提があるからこそ、地域の代表として審議会等に委嘱されているのではないかということです。

中央区と町会/自治会、区民との関係性

 しかしながら、現状生じていること、そして我々が受け止めなくてはいけない事実は、この前提が大きく崩れつつあるということです。

 その1つの要素が町会等の加入率。町会等に全ての区民が参加しているわけではありません。現在オフィシャルな数字としての加入割合は平成19年(2007年)度の調査時点で64.3%です。この時点での人口はわずか10万人程度であり、その後に湾岸エリアを中心として若い世代の流入が増えていることを踏まえるとこれは大きく減少している可能性があります。

 もう1つは、町会等内での関わり合いの減少。近年のコロナ禍等の事情により、加入者の中での情報の周知、意見集約という点でも課題があります。わたし自身の経験としても、また、会派に来るご意見としても、町会等に加入していてもそもそも情報が入って来ないし、何らかの意思決定について意見を求められたということもないといった声を多く伺います。

 要するに、町会等に加入する人自体が減っているということと、さらにその加入者の中での関わり合いも減っていることから、実質的にきわめてわずかな方々の意向が「区民の声」として扱われているのではないかということです。

町会/自治会の加入者と関与の強弱についてのイメージ(数字はざっくり)

町会・自治会依存がもたらす弊害

 これらの結果として生じているのが、行政としては地元の意見を聞いたと思って進めようとしていることが、いざそれを進める段階で区民からの反発を招くという事象です。

 具体例には、本年の議会において請願の提出もあった浜町公園への仮校舎設置にかかる樹木移植及び築山の解体の一件です。また、これは東京都の事業ですが、昨今問題となっている晴海ふ頭公園におけるモニュメント設置についても同じ構造です。さらに言えば、現在取りまとめを行っている築地市場跡地再開発における区の考えへの意見集約においても同様の事象が起こることを深く懸念しています。

 そして、これらはあくまで氷山の一角に過ぎず、より細かな情報周知、意見の集約において同じようなすれ違いは多々発生しているのではないかとわたしは考えております。

 さらに、本区は今後も晴海エリアを中心にさらに多くの人口増加を見込んでおります。その際に流入してくる方々は相対的に若い世帯が多いであろうことを考慮すると、現在生じている町会等への加入率の低下、関わり合いの減少という事象はさらに進むものと考えられ、その対策は急務です。

 というのが前置き(長い?)。これらを踏まえての質問はこちらの3つ。

1) 現状において、町会/自治会は十分機能していないのでは?
2) 町会/自治会の加入率を把握するべきでは?
3) 新たな意見集約のあり方を検討すべきでは?

質問1:町会/自治会は十分機能していないのでは?

何を質問した?

 まずは、質問したのは町会/自治会の現状について把握しているのかという見解。これまで背景として書いてきたとおり情報周知と意見集約のそれぞれにおいても十分な役割を果たせていないのではないかという問題意識に対しての中央区の見解を問うものです。

どんな回答があった?

 答弁では、「共働き世帯の増加や価値観の多様化などに伴い、加入率は低下傾向にあることから、町会等への説明をもって地域への情報周知や意見集約が万全とは考えておりません」ということで、町会等への説明では不十分!という答弁を引き出せたのは良かったところ。

 ただ、それを補完するものとして挙げられたのは「地域住民を対象とする地元説明会の開催、審議会等への公募区民の参画やパブリックコメント」といった既存の手段。これらについてはもちろん存在を把握しているものの、問題は多くの場合で「とりあえず話を聴きました」というポーズのために行われているという実態

 パブコメに対する徒労感は、一度でも意見を提出したことがある方は良く分かるのでしょう。また、浜町公園への仮校舎設置は当初の中学校関係者向けの説明会の時点ではっきりと「決定事項である」とされていました。

保護者説明会質疑応答一覧

 このように、当該事業についての決定プロセスに関与することができなければ何の意味もありません。

 町会・自治会は、住民等で構成される地縁団体であり、その多くが長い年月を経て地域の合意形成を図りながら、にぎわいを創出する地域活動を継続し今日に至っております。こうした経緯とともに、区はこれまで、町会等との良好な双方向の関係性を築いてまいりました。
 しかしながら、共働き世帯の増加や価値観の多様化などに伴い、加入率は低下傾向にあることから、町会等への説明をもって地域への情報周知や意見集約が万全とは考えておりません。そのため、事案に応じて、地域住民を対象とする地元説明会の開催、審議会等への公募区民の参画やパブリックコメントなどを実施しているところであります。
 町会等は区内全域を面的に網羅しており、今なお多くの区民の方が加入していることに加え、企業などを会員として包含できる唯一無二の団体であり、区といたしましては、その存在意義や役割は、貴重かつ重要なものであると認識しております。

質問1への答弁

質問2:町会/自治会の加入率を把握するべきでは?

何を質問した?

 次に加入率。すでに書いたとおり、町会/自治会の加入率に関するデータは16年前のもの。そこから一切取得はされていません。よくぞ誰も突っ込まかなったものです。

 これは、どう考えても問題です。第一に、町会等に情報を周知することや意見を諮ることによってどの程度の区民の声を反映できるかの想定ができないためのです。16年前と同様に60%程度を維持できているのであれば「それなりに区民の声をカバーできてるな」と言えなくもないのですが、もしかしたら現在は30%くらいかもしれないわけです。そうすると、やはり「町会ばかりに頼っていてはマズい」となるでしょう。それが今はさっぱり分からないのです。

 もう1つの問題は、その町会等の運営に対する補助金がどの程度効果をもたらしているのかという点が一切検証できないということ。先述のとおり、コミュニティ助成単体で6600万程度/年の補助が流れています。これらは地域コミュニティの強化、すなわち町会等に加入者が増えることを目的としたものですが、個々の事業での効果測定が一切できません。

 したがって、早急に現状での加入率を把握すること、そして定期的に把握する仕組みを構築するべきという点について質問しました。

どんな回答があった?

 この加入率について、16年前から更新されていないということはさすがに「問題ない」とは言えなかったようで、「再調査の必要性を認識」という答弁がありました。

 これは調査を行うことを約束したようなもので、大きな収穫です。一方で、方法や時期については明言されていないので放置される、もしくは単発で次の調査はまた16年後ということも危惧されます。定期的な把握が行われるようになるまで、突っついていきます。

 町会等の加入率については、平成19年の調査から年月が経過していることやコロナ禍の影響を捉えることからも、再調査の必要性を認識しております。今後、調査方法や時期について検討してまいります。

質問2への答弁

質問3:新たな意見集約のあり方を検討すべきでは?

何を質問した?

 最後に質問したのは新たな意見集約について。質問1とやや関連しますが、既存の町会等による情報周知と意見集約の機能を補完するもの、また、町会等におけるこれらの負担軽減するものといった位置付けから、新たな枠組みの検討が必要ではないかという点です。

 情報周知の面では、広く全ての区民に対して周知するべきものであれば、公式LINE等での発信の強化やその利用の促進、講習会の実施をより強化していくことで町会等での回覧板や掲示板を経由することなくイベント等の情報を周知することが可能です。

 また、意見集約の観点ではDecidim(ディシディム)my groove(マイグルーヴ)などのオンライン上での意見交換や合意形成を行えるようなサービスが生まれ、実際に自治体で運営されている例も増えています。

 これらを活用すれば、会合の場を準備する事務職員の負担軽減にも繋がりますし、時間的な制約等によって会合に参加ができない若者や子育て世帯も議論に関わることができるようになります。

どんな回答があった?

 答弁として、特に新たなことについて検討するといった内容はなし。

 出てきたのは「区政世論調査」や「パブリックコメント」などで、すでに実施されているものばかり。現状でカバーできていない新たな声を積極的に拾っていこうという姿勢は残念ながら見えないというのが現状。答弁には「区民の生の声に耳を傾け」というフレーズがあり、オンライン上へのやり取りへの毛嫌い感もはっきりと現れております。

 この点についての突破口は質問2の加入率ではないかと考えています。そもそものところで既存の聴取方法では一部の声しか聞くことができていないという点が明らかになれば、他の手段を導入するという機運も出てくるでしょう。

 本区では広報紙をはじめ、ホームページやSNSなど様々な媒体を活用し、広く区民に区政情報をお届けしています。また、各種福祉サービス等に関しては、対象者への個別通知のほか、民生委員やケアマネージャなどの関係者を通じて、必要な方に確実に情報が伝わるよう努めております。
 区民からの意見・要望については、これまでも、日々区民と接する中で、また、区政世論調査や区長への手紙などを通じてお寄せいただいているほか、パブリックコメントや個別の施策における実態調査の実施など、様々な機会を捉えて区民ニーズを把握し、区民の意見を区政に反映できるよう取り組んでいます。加えて、まちづくりや防災などにおいては、区民と行政が双方向に意見を交わすなど、地域や団体を代表する方々の声を直接聴きながら区政運営を行っているところです。
 オンライン上での意見交換や合意形成の仕組みを導入している自治体があることは承知しております、区といたしましては、今後も引き続き、さまざまな方法により必要とされる方に迅速かつ正確に情報を伝えていくとともに、区民の生の声に耳を傾け、区議会とともに地域における課題解決に取り組んでまいる所存であります。

質問3への答弁

最後に

 今回のテーマは町会・自治会、特にその情報周知と意見集約の機能にフォーカスして現状の課題と今後のあり方について取り上げました。

 現状の何よりの問題は、町会/自治会にどの程度の人たちが関わっているのかという部分が明らかでないという点。それが分からなければどの程度の声をカバーできているか分からないですし、費やしている補助金が有効に使われているかどうかも判断できません。

 そして、おそらく実態として区民の意見集約機能は十分に機能していないと思われ、その実例が日本橋中学校の仮校舎や晴海ふ頭公園のモニュメントの問題です。

 これらに加えて、わりとこの問題が中央区の抱える諸問題の根っこにあるのではないかとわたしは考えています。特に子育ての分野で近隣の自治体と比較して行政サービスが今ひとつという印象の強い中央区ですが、その背景には既存の意見集約機能において子育て当事者の声が十分に拾えていないのではないかということです。


 そんなヤバい状況であることについて問題提起できたこと、そして加入率調査の実施を取り付けるという形で実態の解明を一歩前進させられたのは今回の成果です。早急に調査が行われること、そしてその調査結果が今後の施策に生かされることを期待しています。

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