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居場所を作る・子どもが求める安心感とは?
居場所がない子どもたちの叫び
「家にいるのが一番つらい。」
「学校なんて、行くだけ無駄だ。」
不登校や引きこもり、非行に悩む子どもたちと向き合う中で、私は何度もこうした言葉を耳にしてきました。
子どもたちの共通点は、「心を休められる場所」がないということです。家庭でも学校でも、自分が認められている、安心して過ごせると感じられない。その結果、彼らは心を閉ざしたり、問題行動に走ったりしてしまうのです。
居場所とは「安心できる環境」
居場所とは、単に物理的な空間ではありません。
高価な家具や広い家があっても、子どもがそこに「心地よさ」や「安心感」を感じられなければ、それは居場所とは言えません。
居場所の本質は、「自分をさらけ出しても受け入れられる」と子どもが感じられる環境にあります。
子どもが求める3つの居場所の条件
1. 安心して過ごせること
「怒られるかもしれない」「責められるかもしれない」と常に警戒するような環境では、心が休まりません。
2. 自分の存在を認めてもらえること
「あなたはここにいていいんだ」「あなたを必要としているよ」というメッセージを親が態度で示すこと。
3. 心のつながりを感じられること
親や周囲との信頼関係が築かれていれば、子どもは「ここにいてもいい」と感じることができます。
弁当が教えてくれた「親の愛情」
40年間の経験の中で、「居場所づくり」が子どもたちにどれほど影響を与えるかを実感したエピソードがあります。
非行に走る子どもたちを共同生活に招き入れていた頃のことです。私は彼らに、必ず母親が作った弁当を持たせて学校に通わせました。荒れた家庭で育った子どもたちにとって、母親が作った弁当は単なる食事以上の意味を持ちました。
ある子どもはこう言いました。
「弁当を開けた瞬間、母ちゃんのことを思い出した。俺のために、朝早くから作ってくれたんだなって。」
普段は「うるさい」と母親に反発していた彼が、この弁当を通じて母親の愛情を実感したのです。そして、それをきっかけに彼は次第に問題行動を減らしていきました。
このエピソードは、「親の愛情が見える形で伝わること」が子どもの心にどれほど大きな影響を与えるかを示しています。
子どもが「家庭」を嫌う理由
しかし、現実には子どもたちが「家にいたくない」と感じる家庭も少なくありません。
その原因の多くは、家庭が「子どもにとっての居場所」ではなく、「親の都合や価値観を押し付ける場」になっていることにあります。
居場所を壊す3つのNG行動
1. 子どもを否定する言葉を使う
「どうしてそんなこともできないの?」
「お前のためにしているんだ!」
否定的な言葉は、子どもの自己肯定感を奪い、家庭 を「居心地の悪い場所」にします。
2. 子どもの話を聞かない
子どもが何を考えているのか、何を求めているのかを無視してしまうと、子どもは「どうせ分かってくれない」と感じ、心を閉ざします。
3. 過度な干渉や管理をする
勉強や生活全般に細かく干渉しすぎると、子どもは「自分を信じてもらえていない」と感じてしまいます。
居場所を作るための親の行動
では、子どもが「家庭」を居場所だと感じるようになるためには、親はどうすればよいのでしょうか?
以下のような行動が効果的です。
1. 子どもの話を「遮らずに」聞く
子どもが何を言っても、まずは最後まで話を聞くこと。「それは違う」と遮ったり、アドバイスを押し付けたりしないことが重要です。子どもが安心して話せる環境を作る第一歩です。
2. 小さな愛情表現を増やす
毎朝「おはよう」と声をかける。
・笑顔で話しかける。
・子どもが好きな料理を作る。
こうした小さな行動が積み重なることで、子どもは「自分は愛されている」と感じるようになります。
3. 子どもを信じていると伝える
「お前ならきっとできるよ」「俺はお前を信じているよ」という言葉を繰り返し伝えることで、子どもは自分を信じる力を取り戻します。
親が変わることで、子どもの居場所は生まれる
「居場所」とは、物理的な空間ではなく、親が心を開き、子どもを信じ、受け入れることで初めて生まれるものです。
40年間で10,000人以上の子どもを支援してきた私が断言できるのは、親が変われば、子どもは居場所を感じるようになり、心を開き始めるということです。