楽しいラジオが聴けますように
いま振り返ってみれば、僕の見てきた世界はひどく退屈なものだったのかもしれない。僕はてんどんまんについてよく知らなかったわけだし、「ファーノ」にいたっては、そんな言葉があったことでさえ全く知らなかったのだから。
僕がドングリFMの声の低いヒゲの存在をはじめて知ったのは、noteの音声配信についてのイベントの時のことだったと思う。尊敬する宮武さん(Off Topic, Inc.)がイベントのゲストだった時だ。
“ディレクター”なんてスピルバーグみたいな肩書きをして、やたらといい声で話を進めるそのヒゲの男のことを、
「オフトピックをゲストに呼ぶなんてマジでセンスあるな」
って思ったことだけは、はっきりと記憶している。果たして君に決定権があったのかどうかは今になってもわからないままだけれど。
それから君の声が心地よくって、7年前の甲子園頃までさかのぼることになったわけだ。
🐿️ 🐿️
そこで語られていたことのいくつかは、奇妙なほどに僕の頭の片隅に残った。なぜだかはわからなかったけれど。
「男のランクはうんこを漏らした回数で決まる」
なんてことを平然と言っている男から、いったい学ぶべきことがあるのかどうか真剣に考えてみた。
考えるまでもなかった。
それでも君たちの、たわいもない会話の中のふとした一瞬に、大切な何かが隠されているような気がした。
それは君が何の恥じらいもなく、トトロについて熱く語っていた時だったかもしれない。
それは深夜一時半すぎの学芸大学の夜道のことだったかもしれないし、駆け出しのAV女優からのお便りを君が誇らしげに読み上げていた時だったかもしれない。
それとも、いつもとはほんのわずかに違う君たちの熱量のせいだったかもしれないし、ふとした瞬間の言葉の断片に見え隠れする、君たちふたりの優しさを感じた時のことだったのかもしれない。
🐿️ 🐿️
春樹よりも龍派だった。オッドタクシーよりもリック・アンド・モーティが好きだったし、ドングリよりもオフトピックに夢中だった。
リビングに積まれたこち亀50巻から70巻。
未開封のまま部屋の片隅に居座り続ける空調服。
ドンキの前を通り過ぎるたびに、腕毛に想いを馳せてみたり。
あれからなつめぐは眠れているだろうか。
そうやって、僕の平凡な日常にドングリが、呼吸をするかのようにやわらかく溶け込んで令和4年は終わりを迎えようとしている。
今年の夏も暑かった。
アカデミー賞は史上最高に盛り上がった。
女王は70年の任務を終えた。
バファローズはいつの間にか優勝していた。
僕はドングリと出会った。
君たちに出会えてよかった。
宮武さん、本当にありがとう。
来年も楽しいラジオが聴けますように。
米津玄師のLemonを聴きながら、
僕はそう願って、となりで彼女が楽しそうに笑った。
【ドングリFMリスナーの Advent Calendar 2022】
941さんからスタートして、25日narumiさんまで続きます。2日目の昨日はfumiさんでした。4日目の明日はSatomi Kawamuraさんです。