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小説「ムメイの花」 #8冒険の花

朝の日課。
家の前に立つ。
右手には1本の花。

見なければ何も進展しないと思う反面、
答えは見つからないものだ
ということも考えてしまう。

まぁ、それはそれで理論と数字の
無感情な世界で生きていくだけだ。
極端に不自由というわけでもない。

「そう思うと、諦めがつ……」

こころが行ったり来たり。
アルファのこころは定まらずにいた。

朝の挨拶と共に、
いつもの顔ぶれが集まってきた。
みんな気がついているかは知らないけど、
朝起こる不思議な出来事がある。

家の前に集まると
デルタ、僕、チャーリー、ブラボーの順番になること。

決まっている訳ではないのに
いつもこの順になる。

不思議だと思いつつも
それ以上に先に解決すべき
「花の答え」をみんなに聞いてみることにした。

「少しだけ考えてみてほしいことがあるんだ。
 もしも自分が『花を見るチカラ』が
 足りないって言われたら、
 そのチカラはなんだと思う?」

「僕は本で『全盛期』を表すワードとして見るから
 『成功を見据える』なんてね」

「花を見るチカラでしょ?
 『観察すること』に決まってるよ!」

「私は『本当の姿を見抜く』かなぁ」


数字と違って、みんなの答えが一致しない。
答えが明確にひとつじゃないなんて
『数字をこころとせよ』の家訓に反する。

カメラを構えたデルタが聞いてきた。

「で、アルファはどう思うのぉ?」
「僕は、何だろうか……」

「アルファはすごく考えているんだね」
「立派で偉い人は、答えをすぐに出せるって
 ボクのパパは言ってたよ!」

ブラボーとチャーリーは隣で
互いの考えを言い合い始める。

意見の飛び交いを他所よそ
右手の花と向かい合っていると
デルタがさりげなく言葉を置いて去って行った。


「アルファの本心はもう決まってると思うよぉ」

このたったひとことが
アルファのこころを静かに固めた。

「どうにか花と僕の歯車を回す……花と冒険か」

右手の花のように言葉は出さずとも
数分前の僕とは違うのが自分でわかった。

いつの日か、花がしゃべらない代わりに
僕がみんなの前で証明をする。
花を見るチカラは自分も世界も豊かにさせる」って。

アルファが新たな決意をしたことなんて知らない
ブラボーとチャーリーの言い合いは
数分たっても未だに続いていた。

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