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Hope is in a Seed

カナダからこんにちは。

まだまだ上がってもマイナス気温で寒いトロント。
とはいえ、自営業でやっている種販売の方は実は1月から3月くらいまでが一番忙しい時期。

トロント周辺では霜の心配をせず、種を外で蒔けるようになるのは5月になってから。
室内で先に種を蒔いて苗作りをする場合は3月くらいから。

とはいえ、もう10月くらいには庭作業もできなくなるので、それから数カ月は雪と氷の季節。
こちらは冬の間は外では全く花を楽しむことはできないので、今頃になるとそろそろガーデニングをしたくて、うずうずするという時期。

今日も私が所属しているローカルのガーデニング・クラブの仲間が種のオーダーをしてくれて、ピックアップで我が家に来てくれた際にちょこっとおしゃべりをしたのですが、彼女も「今日はこれからこの種をウィンター・ソウイングするつもり!すっごい楽しみ!」と嬉しそうで、こっちも嬉しくなりました。

このウィンター・ソウイングについては説明するとちょっと長くなるので、これについてはまた後にでもじっくり説明しますね。

で、今日は種について。

私はトロントの我が庭で育てた植物の種を収穫して売っています。
(販売はカナダ国内のみです、日本への発送はしておりませんので、あしからず!)

種を売るにあたって、収穫した後、鞘から種を取り、種以外のものを取り除く「クリーニング」の作業があります。
ちゃんとした業者さんだとこれを機械でやるのですが、私の場合はすべてが手作業。

外で風を使ってこの種とそれ以外のものを分けるやり方もあれば、扇風機を使う場合もあるし、息を吹きかけて、というのもあります。

でも最終的には種を紙の上などに並べてごみを取り除き、サイズ分けもしたり、という、結構根気のいる作業が必要になります。

でもね、私、この種取りからクリーニングまでの一連の作業が結構好きで。

種をクリーニングしていると、それぞれの植物がどうやって種を内包しているのかを見ることになります。

一番上に載せた写真はScarlet Runner Bean、日本ではベニバナインゲンと呼ばれているようですが、豆の一種。
2-3センチほどの大きさで種を鞘から外すのも、その後のクリーニングもとっても簡単ですが、すべての植物の種がそうではないんですね。

植物によってはポピーなど、1ミリ以下の大きさのものもありますし、鞘から取り出すのも大変なものもあります。
目が疲れたり、肩が凝ったり、手がべたべたになったり、痛くなったり、なんてこともあります。

でもこうやってそれぞれの種と向き合うことで、その植物をもっと知ることができるというか、近くなれるような気がするんですね。

そして上のScarlet Runner Beanのようにとってもきれいな種を愛でたり、植物によって種の見た目も様々。
例えばオダマキの種はぴかっと光るような黒光りする綺麗さがあります。

かと思えばシノグロッサムの種は小さなとげのようなもので覆われていて服にくっついたりする、結構厄介者。

カレンデュラの種もまるでアンモナイトみたいな見た目でおもしろいです。

こうやって種のクリーニングをしながら「あなた、綺麗ねー」とか「あなたは面白い形をしてるね」とか心の中で話しかけて、その植物と対話しているような感覚になるんですね。

そしてこの小さな小さな種から芽が出て、きれいな花を咲かせたり、何十年もの年を経て、大きな木になったりするんだなー、と思うと、やっぱりすごいな、と思うのです。

私のビジネスのスローガンは「Hope is in a Seed」というもの。
つまり「希望は種の中に」ということなのですが、こうやって種を向き合っていると、本当にそう思うのですよね。

今は小さくて、見た目もあまりよくないかもしれないこの種が、育って綺麗な花を咲かせたり、木になって日陰をもたらしてくれたり、他の動物の食料や避難所、休憩所になったりして「希望」をもたらしてくれる。

すべてがここから始まるんだなー、と種のクリーニングをするたびになんだか感激するというか、ちょっと畏怖の念を抱く感覚に近いと言ってもいいかな?になります。

静かな時間だけれど、どこか大きな世界と通じているような、そんなちょっと不思議な気持ちになることもあります。

だからこそこの時間がとっても大切なものに思えるんですね。

今はなんでもファースト、手早く、という社会ですが、種のクリーニングをする時間はとっても「スロウ」。
でも心が満ち足りたようになるんですね。

なので、私にとって、種はただ単に植物を育てる元という「もの」だけではないんです。

種に希望が宿っていて、その希望を広げたい、という思いがあります。
花咲かじいさんならぬ、花咲かばあさん的な、ね。

今は実際にガーデニングや庭によるセラピー効果なども報告されていますが、私にとってのガーデニングもまさにそういうところがあって。
そんな話を次回にしようかと思います。

ではまた!

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