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「魚をきれいに食べる人になりたい」

ちょっとええとこの日本食レストランで魚料理を食べる時、私はたいてい、夫の真似する。彼の魚の食べ方が、きれいだからだ。

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結婚前。義両親と私の両親、それに私たち夫婦が顔あわせのために食事したときも、私は夫の食べ方を真似した。「義両親にしつけられた夫の真似をしておけば、ご法度の行為はしないだろう」という怠慢ゆえに。

先日、子を連れて義両親と食事をする機会があった。ちょっとええとこのレストラン。先に子の食事を済ませ、つかまり立ちで個室を歩き回る子を夫と交代で追いかけつつ食事をとった。

一品ずつ出てくる料理を、たまった分だけ一度に食べる。

さあ、夫と交代したから次は私の番だ。おいしい、おいしい。ありがたくいただいていたところ、アユの塩焼きがのった皿に手をつけようとして、ハタと気が付いた。

みんなの皿には、美しい骨となったアユの姿がちょこんとのっている。

ーーやばい、食べ方がわからん。

アユって、頭からムシャッといっちゃっていいんだろうか。皮は食べられるんだろうか。なんか骨をスッて取る方法って、……夫はいつもどうしていたっけ。

私の目の前には義母。「そのアユ、おいしかったわよ」と完全に最初の一口を凝視している。

夫にコソッと「どこから食べた?」と聞きたいのだけれど、隣に座る夫の席が遠い。私と夫の間に4人くらい客が座れそうだ。

あ~~、魚の食べ方ひとつで、教養がない人間なのがばれてしまわないか? 親のしつけを適当にあしらっていたツケが、いま私にこうして回ってきている……。 

緊張の面持ちで、アユに箸をつけた。義母はじっと私の一挙一動を見守っていたが、そのうち視線を外して、義父と話し始めた。

ふ~。緊張した。

義両親と別れ、夫と子の3人きりになった時、「実は、いつも夫の真似をして食事をしていたので、アユを食べるのに困った」と話したら、夫は盛大に笑っていた。私が真似していたことに気づかなかったそうだ。

「適当でいいよ。たぶん、何とも思ってないよ」

夫はそう言ったが、本当だろうか。義母の視線が、私の手にかすかに残る。



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結井ゆき江/ゆきどっぐ
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