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上達するかもしれないし、しないかもしれない「大人の習い事」

体調が悪いと訴えると、夫はたいてい、「運動が足りていないんじゃない?」と返す。彼の表情は普段通りだ。ギャグではない。たぶん、心の底からそう思っているんだろう。
今でも外で走る習慣がある夫は健康体で、部屋の中で動きもしない私はすぐに風邪を引く。体調が悪い時に無理をして運動する必要はないけれど、体調が良い時には、やっぱりちょっとは体を動かした方がいいんだろうな。とはいえ、「横になったら?」「もう少し寝たら?」という甘い言葉を期待していたので、やや肩透かしを食った気分だ。
夫とは、付き合い始めて約10年。不思議なもので、それだけ一緒にいると相手の思考に少しずつ寄り始める。体調の悪さを感じると私も、「もしかすると、運動が足りていないのかな」と思うようになった。
それで、実は、大人の習い事としてダンスへ通いはじめた。40歳手前にして、久しぶりの習い事だ。習い始めてそろそろ3カ月は経つ。週に1度、たった1時間ではあるけれど、怠けている大人を対象にしたダンス教室はしっかりと筋肉をほぐす体操から始まるので、想像よりも心地いい。「素早い動きができるように」と、ダンス教室のない日にも筋トレを始めるまでに。老後は足腰の弱いおばあちゃんになること間違いなしなので、生きるための筋肉をつけたいところだ。
ダンス教室に通い始めて良い尽くし。なのだけど、私にとっては「自分のダンスが恐ろしく映えない」ことが課題となっている。
音楽に合わせて膝をあげると行進になるし、足を広げて両腕を広がるとただの「工」の字をしている人になる。なんというか、すごく真面目な雰囲気のある動きというか……。ロボットダンスのよう。私は、ダンスがしたいんだけど……。
漫画『ひかるイン・ザ・ライト!』(松田舞著/双葉社)でアイドルを目指す主人公・荻野ひかるがダンスを習う場面で「なんかださい」と愕然とするがその通り。初心者のダンスは、「なんか、ださい」。
最近は、ダンスを舐めていたのかもしれないな、と反省している。小学生がお祭りのステージで踊るのを見て、「私にもできる」と簡単に捉えていた部分は否めない。これからは考えを改めなくては。彼女たちはダンスの大先輩なのだ。
まぁ舞台に立つ予定もないから、ダンスがださかろうが、いびつなロボットダンスだろうが、誰も気にしないし、もし舞台に立ったとしても、「年を取っている割に頑張っているな」と思われるだけだ。
そう割り切れるのは、アラフォーになった年の功かもしれない。思春期の頃だったら、恥ずかしくて続けられなかっただろう。

私が通うダンススタジオは、古いビルの3階にある。いつも外から眺めては「夏祭りで見かける小学生ダンサーはここへ通っているのかな」と思っていた。外の看板には、主婦向けクラスの曜日と時間が書かれている。まさか私も通うようになるとは。
習い事をダンスに決めたきっかけは、仕事相手が2人続けて「幼い頃にダンスを習っていた」と話したことだ。「人生をかけるほどダンスって面白いのか」と興味を持った。それに、ジムへ通うよりは、楽しみながら運動ができるかもという淡い期待が私の背中を押した。
これまでの人生で、入る機会がなかった教室へ向かう。毎回、少しだけ緊張するけど、とりあえずは大きな声であいさつをすれば礼儀は通ると、これもまた年の功でわかっている。
「おはようございます」
少しだけ声を張り上げると、ダンスの先生が振り返った。
一緒にレッスンを受けるのは、私より少し年上の女性たち。そのうちの1人が、私にほほ笑みながら手を振ってくれている。

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