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マイクロメータの日々 6

 ここ最近の悩みは、ベトナムに持ってきた多量のサトウのごはんを日本に帰国するまでに食べきれるかということ。

◆ ◆ ◆
 金曜日。
 少し前に行ったカンジャンケジャンを食べた韓国料理屋は、じつはチヂミがうまい。
 イカゲソとにら、輪切りのとうがらしが入っている。生地は焼き加減がちょうどよく、もっちりとしたやわらかさ。酢醬油のようなタレにつけて食べる。最高だが、でかい。
 チヂミ、豆腐に豚キムチを添えた料理、タコビビンバをひとりでたのみ、みごとに苦しくなる。すべてを半分ずつ残してしまい、持ち帰る。すべてが、この店は大きいのだ。
 明日の朝もこれが食べられるとは幸せだ。

◆ ◆ ◆
 土曜日、朝と昼。
 朝ごはんとして昨日の韓国料理を家で食べる。1日たってもおいしい。
 昼に、自前の50ccバイクを走らせて、中古バイク市場に向かう。自分のバイクにガソリンが満タンに入っていることに気がつき、さみしくなった。
 1店舗目。このバイクを買い取ってもらうように言うと、「いくらが希望だ?」と訊かれる。「700万ドン(約4万円)だ」と僕が伝える。
 300万ドンと言われるが、折れずに交渉していると、どうやら530万ドンが限界らしい。ほかの店で見てもらうと言うと、どうしてこの鑑定結果なのかを延々と語ってくる。ほかの店でも同じ値段だと言われる。
「この店の評価に関して文句があるわけではない。ただ、市場価格を知るためにほかの店に行くのだ」と言っているのに、なおも同じ説明をしてくる。腹が立つ。
 やっと向こうが解放してくれると思ったら、店員のおっさんが僕のバイクにまたがり「おれの兄がやっている店につれていくから、そこで鑑定してみろ」と言ってくる。頭をなぐってやろうかと思った。

◆ ◆ ◆
 2店舗目は、きたないおやじが「300万ドン」と言うばかりで、僕の話をまったく聞いてくれない。無視して次の店へ。
 3店舗目。「ほかの店では700万ドンと鑑定された」とふっかけたが、最終評価は600万ドンとなった。じつは僕は600万ドン以上であれば売却しようと思っていたので、結局OKをした。
 最後の最後で10万ドン安くされそうになったが、ここでもねばり、600万ドンで終わる。

◆ ◆ ◆
 土曜日の夜。
 じつは昼から僕のアパートは断水していた。「水処理工場が急きょ停止して、家の地域一帯が断水している」と大家さんから、朝、住人のグループにメッセージが来ていた。ほかの住人も慣れた模様で、一日だけ滞在できるホテルの情報を共有している。ベトナムは、日本とはちがう。
 夜中、冷蔵庫のファンタの缶を飲もうとしたら爆発して部屋がファンタだらけになった。
 蛇口を前回まで開くとぎりぎり水が出てくれたので、べたつく手を洗った。バスタオルで床をふく。水拭きができないので、べたつきがとれない。なぜ、こんな日に。
 寝ようとしたらおなかが痛くなる。朝食べた韓国料理はとうがらしがきいていたのだ。
 トイレも流れない。我慢しながら目をつむる。なぜ、こんな日に。

◆ ◆ ◆
 日曜日。
 目覚めると、朝から水が供給されていた。安心してトイレに駆け込む。
 昼ごはんはサトウのごはん。まだ、12食分ぐらい残っている。カップ麺も残っている。今月末で帰国だというのに、大丈夫だろうか。

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