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今日のための曲 #01

今日にぴったりな、今日のための音楽を紹介

フレデリック・ショパン(1810−1849) /     夜想曲 作品15


あまり気分が乗らないくもりの日。灰色の空。におい。

道路を走る車とともに聞こえる水たまりたちが踏みつけられる叫び。

止んだ雨に気づいた森の鳥たち、喜んでいる。

しかし完全にハレ、ではないので油断はならない。そんな日。


そんな今日にぴったりの曲は、ピアノの詩人であるショパンの夜想曲作品15

英語ではノクターン、フランス語ではノクチュルヌ。ショパンが20歳頃から亡くなるまでのあいだ、ライフワークのようにかき続けた小品のタイトルで全21曲がある。中でも馴染み深い曲は作品9の2楽章できっと誰もが耳にしたことがあるはず。

今回紹介する15番は、彼が世界的な音楽家になるために故郷のポーランドから旅立ちパリで活動を始めたばかりの1831年から1832年に書かれたもの。
夜想曲は基本的に3部構成ですが、今日のような雨上がりに(しかしさらさらとした細かい雨が時折思い出したように降る)オススメなのは2楽章の嬰ホ長調。
アウフタクトの符点のリズムで始まるこの楽章は、晴れやかで美しく、心がほっこりとする。
楽譜を見るとわかるのだが、何とシャープが6箇所もついている。このシャープたちが曲の中の和音にほんのりと深みをだしているのだ。リズムも耳にするより複雑に書かれていて奏者によって雰囲気がまったく変わってくるのも面白いポイント。(下記の音源はわたしの好きなもの)

故郷では有名人だったが、音楽家たちが多く集まるパリの街では無名だった彼、そんな彼はフランツ・リストの紹介などで積極的に舞台に立つ。当時サロン音楽(お金持ちの貴婦人たちが社交界で優雅に楽しむ音楽たち、きらびやかなシャンデリアと良質な絨毯のひかれた)というものが流行っていたため、このような曲が好まれていた。
晩年になるにつれて作風がどんどん深みを増していくのもこの夜想曲の素敵なところではあるが、比較的初期に書かれた15番は素直で繊細なショパンらしさが詰まった作品。ぜひ今日のお供に。



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