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コクーン歌舞伎『三人吉三』感想

ちょっと前にWOWOWで放送された、2014年『三人吉三』の感想を。

作品の背景

『三人吉三廓初買』(さんにんきちさ くるわの はつがい)とか『三人吉三巴白浪』(さんにんきちさ ともえの しらなみ)※短縮バージョン※等の題で知られる世話物の歌舞伎です。

コクーン歌舞伎とは

渋谷のシアターコクーンで行われる歌舞伎公演で、古典歌舞伎を新しい演出で上演されるもの。音楽で石野卓球さん、椎名林檎さん等を起用した演出もあったそうです。
あと観ていて気付いたのが、一階席の前の方は椅子ではなく座布団。あぐらをかいたり体育座りで観てる様子がわかりましたし、何より舞台とめっちゃ近くて、最後に紙吹雪の演出があるのですが、もりもりにお客さんもかぶってました。(私もいつかかぶりたい

スーパー歌舞伎との違いは?

私が以前鬼のように推していた『スーパー歌舞伎Ⅱ オグリ』も「歌舞伎を現代風にしたもの」という点で同じだけど何が違うのかな?と思ったら、コクーン歌舞伎は十八代目中村勘三郎(中村屋)が、スーパー歌舞伎は市川猿翁さん(澤瀉屋)がはじめたもの。確かに現代風・新しい演出を取り入れているという点では同じですが、テイストが全く違います。
スーパー歌舞伎(Ⅱ)は華やか・笑い
コクーン歌舞伎はシック・衣装は古典

みたいな感じ。
(他の作品見たらまた違う印象かも)

あらすじ

和尚吉三(勘九郎)、お嬢吉三(七之助)お坊吉三(尾上松也)という三人の泥棒のお話です。
おしょーきちさ、おじょーきちさ、おぼーきちさ。
元々別々で泥棒していた三人が出会い、意気投合した三人はお互いの血を飲んで(!)義兄弟の契りを結びます。
しかしながら因果応報とはまさにこのこと!ということが。明らかになった人間関係(言えない・・・)、すべてを知った和尚吉三が「悪ぃこたぁ、できねえなあ・・・」という言葉から、悲劇は始まります・・・

ちなみにお嬢吉三は女性だと思ってたのですが、男性なんだそう!他人のもとで役者として世話になっていたところ、娘姿で若い頃に役者女と間違え口説かれた・・・と本人が語っていました。

河竹 黙阿弥の名台詞

作者は『白浪五人男』でも有名な河竹 黙阿弥(かわたけ もくあみ)。七五調の台詞が続き、聞いていて心地よいです。
序盤に出てくるお嬢吉三の「こいつぁ春から縁起がいいわぇ~!」という台詞は、あまりにも有名ですね。(とはいえ私は去年知りましたw

あと、「畜生道」という言葉が出てきて疑問に思ったのですが、調べたところ、近親相姦のことのようです。
「畜生道」というのは人間として許し難い行為や生き方のことを表していて、肉親間の近親相姦にもこの言葉が使われるんですって。
「こんちくしょう!」みたいな捨て台詞でしか使い道を知らなかったから、また一つ勉強になった~♪

舞台上で表される猛吹雪

演出は串田和美さん
ネタバレになっちゃうからあまり言えないけど、私が一番「ああああ!!」ってなったのは、お坊とお嬢が死のうとしているところで、外から帰ってきたお坊。
しびれました。
くああああああってなった。

こちらの動画の最後の方で見れますが、雪の演出もみどころです。

ここではぼんっ!!ってなっていますが、クライマックスになる前ははらはらと降り続く雪。一定に降っているので綺麗です。
これどうやってやってるんだろう?

そして今回放送されたシネマ歌舞伎バージョンでは、映像ならではの編集による演出もあり、無音を上手に使っています。
舞台上で動いているのに無音になることはあり得ないので、これもシネマ歌舞伎ならではの魅せ方だなぁと。
私はあまりの迫力と静けさに、気づいたら息が止まっていました。(汗
皆さんも酸欠にご注意を・・・


おまけ:ネタバレあり

ていうか思ったのがさあ、
お嬢がお坊に「濡れ手で粟の百両」を見つかった時、なんで勝負に持ち込んじゃったんだろうね?(まあこれが無いといけないんだけど
お坊は関係無いんだから逃げちゃえばいいのに、平等に戦うなんて、さすが義理人情の江戸っ子だわなあ~って感じ。

あと和尚吉三が捕まりそうになったとき、お坊とお嬢を捕まえろって言われて、悪党なんだから本当に差し出すと思った。でもそこは血の契りを交わした仲。
ここからの友情というか人情というか、泣けますよね~

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