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博士キャリアセミナーに潜り込む(後編)

【前回の記事はこちら】

民間企業が博士という存在をどのように認識しているかを知るために、人生初のキャリアセミナーに参加したわけですが、そこでどのようなことが話されていたのか、自分なりに少しまとめてみたいと思います。

今回参加したセミナーでは、文系博士と理系博士の両方のことについて説明がありました。ちなみにわたし自身は文系に属する博士学生(※1)ですが、結果を先取りして言うと、両方聞けてよかったと思います。

異分野に飛び込める文系

まずセミナーの前半では、文系博士の強みについて話されていました。
世間一般では、

文系の院生はただでさえ就職しにくいのに、ましてや博士まで行く人って…

という言説がまかり通っているわけですが、そのへんについて、セミナーではどういった肯定的な意味付けを提示してくれるのだろうか、という点について参加前から楽しみにしていました。

おおざっぱに話されていた文系博士の強みについてまとめると以下の通り。

・そもそも専門性が高い
・高品質な知を現場に提供できる存在である
・同時に、分野が異なっていても一通り遂行できるスキルを身につけている
 =専門外でも時間をもらって調べれば一通りはできる
・そのため、他の人材よりも「未知のもの」を扱う能力にたけている

ただ、今回講演されていた講師の方が、社会科学系の人であったため、何かと風当たりの強い人文科学系のキャリアについては、推測にとどまっていたので、人文科学系の博士キャリアについても聞きたかった~とも思います。
社会科学系であれば、シンクタンクやコンサルタントなどの具体的な職種が浮かびますが、人文科学系となるとやはり浮かばないのが現状。
もちろん、「文系」という広い意味での博士の強みを知れたことは大きかったです。

未知との遭遇①:キャリア業界の専門用語

別のキャリア講師の方のお話では、聞き馴染みのないカタカナやアルファベットがたくさん出てきて、正直困惑しました(苦笑)
ようわからんなあ…と思いつつネットで調べ(※2)、今のキャリア教育ではこういう言葉が当たり前のものとして使われているという事実に驚きました。誰が使っているんだろう。就活生なのか、はたまた理系の院生なのか。

セミナーで出てきた言葉の一例を紹介。

・MECE
・チャンクUP/DOWN
・トランスファラブルスキル(transfer-ableと書くとわかりやすいですね)
etc……

読んでくださった方の中で、「いやこんな言葉も知らないのか…」と思われるかたもいるかもしれません。就活が異分野の人間からすれば、”GD”だってギリギリわかるけどまだ見慣れない英字の羅列なんですよ…(Group Discussion)。

未知との遭遇②:理系に求められる論文の数

もう一つ、今回のセミナーで驚かされたこととして、理系の博士学生および研究者に求められる論文数の多さがあります。
これまた別の講師の方が、「年齢と論文数が同じぐらいじゃないと~~」と真面目な顔で言っていて、愕然としました。

たしかに理系分野では共著や短報というスタイルがあり、書いたものの「数」で言えば文系よりもはるかに多いことは知っていましたが、年齢と同じぐらいを求められるとは…恐ろしい世界です。
(文系は、1年に1本原著論文を書けるかどうかだと思います。)

所感:相互交流の効用

博士学生として過ごすあいだで、論文を書いたり発表をする中で獲得できる技術ももちろんあると思います。ただ、それだけを獲得するのでは必要最低限でしかないですし、プラスアルファで必要があると思います。

現状、意識的に取り組まなければならないと感じたのは、主に2つのことについて。①異分野との交流と②人的ネットワークの構築です。

とりわけ②については、自分が年を取ればとるほど、関係を構築する相手というのは限られてきてしまうことが予想されます。立場が大きく高くなればなるほど、同じような業界の相手と儀礼的で形式的な関係を結ぶにとどまるのではないかということです。
なので早いうちから各々の分野や、アカデミアという”垣根”を超えたところでいろいろな人と会うことができればいいのかなと思います。
どうしても象牙の塔なんて揶揄されることもある大学の中に引きこもっていると、他業界の人とも他分野の人とも会うことがないですから、積極的にいろいろなところに顔を出すように努めないといけないのかもしれないですね。。。

結論:博士に求められること?

さて、かなり前編で言おうとしていたことからは脱線しましたが、そろそろ文章を帰着させようと思います。

前編で僕が提示した「民間企業は何を求めているのだろうか?」というクエスチョンについてここで大まかに答えようとするなら、「どの場面でも使えるような(=トランスファラブルな)、普遍的なスキル(しかも超高度)を持っている」ことが、答えになる気がします。

自分の専門の世界を極めるためだけにスキルの幅を狭めすぎず、普遍的なスキルも意識的に育てていきたいですね。

【注】

※1…取り扱う事例は理系寄りなので、一概には括れないとは思いつつ。
※2…まあ、こうやって困惑しつつも、知ろうとして調べてるあたりは前述の博士を目指す学生らしさなのかもしれませんね。とはいえ、学術の世界で使われている語彙についてたくさん勉強してきたつもりでしたが、まだまだ知らない世界の言葉があるのだと、まさに、「井の中の蛙大海を知らず」状態…。

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