結婚指輪がつけられない理由
私
「前回の続きです。私が薬指に指輪をはめると違和感があってすぐはずしちゃう件について」
吸血鬼夫
「前回少し話したけど、僕らが4500年前に婚姻契約をしたことが直接の理由だ。君が、または世界中に散らばった君の分魂が、女性として生まれてきたときに限っては、君は薬指に指輪をはめることができない」
私
「別に、指輪はめられないってわけじゃ…厳密には、月に1回くらいしか結婚指輪をはめられない、だよ。気分的に。あ、でも少ないか…」
吸血鬼夫
「君の地上の夫には、僕の分霊が入ってるって言ったろ。でも、魂は彼自身の魂なんだよ。僕の魂はこの地底の神殿にあるままだ」
私
「魂と分霊って違うの?」
吸血鬼夫
「違う。たとえば、分霊は攻撃されても他の分霊や魂は死なない。いっぽう魂が消えてしまうと、分霊たちはぜんぶ消える」
私
「魂は生命の核ってことね」
吸血鬼夫「そうだね」
私
「でも、私は地上の夫と…仲は悪くないよ。そこそこ…いい気がするけど…」
吸血鬼夫
「果たしてそうかな。もともとケンカが始まると君たちふたりは、ライオンと虎くらいの取っ組み合いに発展してたろ。忘れた?」
私
「覚えてるけど…でもそれは、地上の夫が考え方を変えてくれた寛容さがあったから、ある程度改善したと思ってた」
吸血鬼夫
「思い出せ。君は彼との最後の大喧嘩の真っ最中、それはそれは縁の深〜い神社でお願いしたろ。夫ともう少し仲良くなりたいって」
私「あ、そうそう」
吸血鬼夫
「僕はその神社の神と話し合い、僕自身の分霊をもう少し多く、君の夫に入れた。つまり分霊を増やしたんだ」
私「…ええ〜?」
吸血鬼夫
「読む人にはつらくなるかな、ちょっと情報量が多くなるけど…君の地上の夫は、先祖が徳川家康だよね?」
私「はい」
(地上の夫の先祖は徳川家康です)
吸血鬼夫
「そもそもね、君は今世、子どもどころか家族を持たず、漫画を描き続けて、45歳以降に事実婚男性とそのまま生きて、死ぬ予定だった」
私
「はあ…事実婚…入籍してないってことね。そこけっこう重要なの?」
吸血鬼夫
「うん、まあ。で、君は…2015年、徳川家康を祀る神社で、飼育しているリクガメの病気回復の祈願を100日間やり遂げたことがあるだろ?」
私
「100日参りね。覚えてるよ。家康様に今でもすごく感謝してる」
吸血鬼夫
「君のあの、リクガメを想う真面目さが気に入られたんだよ。徳川家康に。だから僕は、この神の…徳川家康の子孫だったら、君が地上で結婚してもいいと許可した」
私「は??」
吸血鬼夫
「僕はそんじょそこらの普通の男の中に分霊を入れない。というか、入れたくない。汚いから。カルマが少ないタイプの男にしか、分霊を入れたくなかった」
私
「悪口も程度ってもんがあるけど…あなたは神官だもんね。潔癖だし…つまり…地上の夫はカルマが少ないから、それなら自分の分霊を入れられるから、それで私は結婚できたと」
吸血鬼夫「そのとおり」
私
「なんか…腑に落ちないものがあるなあ。決定権はすべてあなたが握ってるってこと??」
吸血鬼夫
「よく考えてごらん。君のその、非常識なまでに気ままな、自分勝手な性質で…よくあの夫と結婚できたと思わない?」
私
「いや、思ってるよ。だから地上の夫には感謝しかないんだけど…」
(現に地上の夫には君は南の国出身だと言われている)
吸血鬼夫
「地上の常識をもとに話をするなら、君の長所は亀が好きなことくらいだよ。それなのに、そんな自分に見合わないような夫と結婚できたと思わない?」
私
「私をディスりすぎだと思います!」
吸血鬼夫
「君は忘れてるだろうけど、2015年、徳川家康にこう愚痴をこぼした。
もう家で、引きこもって漫画を描きたい。あの、インスピレーションが降りまくってくるあの、地底の吸血鬼の漫画を。何も考えずそれだけやって生きていきたい。不器用だから、連載しながら趣味で地底漫画描くのは難しい。体も弱いし。家でコツコツ描きたい。だけど、理想的な家族も持ってみたい。でも貧乏はいやだ!貧乏きらい!どうしたらいいの?おじいさま!!と」
私「それは覚えてるよ…」
(改めて言語化されるとすごい欲張りだなと思う…)
吸血鬼夫
「君の祈り方が決め手になった」
私「祈り方……?」
吸血鬼夫
「理想的構成の家族を持ち、地底や吸血鬼の漫画だけを描ける、肉体的負担も少なく済む方法。あのとき、その状況はすべて整った」
私「………それで地上の夫と結婚…」
(パズルのピースがはまるように、当時の状況を理解する)
私「そういえば…地上の夫との出会い方は、人智を超えていたよね…」
(私の予知夢がもとで出会った)
吸血鬼夫
「呪われた実父を捨て家出した、30歳のころ、君は右手の薬指に深いホクロが出ただろう?あれは、君が一般的な恋愛や結婚をしないために出現したホクロだったんだよ」
私
「ヤミ医者みたいなとこで力づくでとったやつね。手術が必要だった」
吸血鬼夫
「僕らが地底で婚姻契約をしているから、君は地上で結婚できないはずだったってことさ」
私
「本来なら一生涯を制作に費やす予定だったと」
吸血鬼夫
「そうだ。ところで君は、世界中に散らばる、君の分魂たちを知っているだろう?」
私
「知ってる。あなたを作品に出してるクリエイターたちのことね」
吸血鬼夫
「その中で女性に限っていえば…どう?結婚してる?」
私「…してない!!」
吸血鬼夫
「君の分魂が男性だった場合も、まあ、そう。クリエイターの場合、ほとんど結婚していない。まあこれは、どちらかというと君の気ままな性質のせいでもあるんだけど」
私「私の分魂がクリエイターじゃない場合は?」
吸血鬼夫
「結婚してても夫婦不仲か、契約遂行不能ということで、君が早死にしてる」
私「…え〜…」
吸血鬼夫
「まあ…仕方ないよね。僕と君は婚姻契約をしただけじゃないから。君が邪神と関わらずに済む契約、創造主神に作品を捧げる契約、新しい別の契約と、よっつもあるから」
私
「まあ…その…邪神と関わらずに生きれたことなんかは、メリットしかないよ。そして作品を捧げるってことがもっとも重要なんだよね…まあ、でも、この話を聞いても、私は自分が地上で恵まれて生きてきたなーとしか思っていないからね。うん、まあ、これでいいんでしょう」
吸血鬼夫
「君のそういう、なんとなく…居心地よければそれでよし、とするいい加減さも、長所だね」
私「褒めてないよね?」
吸血鬼夫「全力で褒めたつもりだ」
ここで会話は中断。
生きること、生き続けること、転生すること、そのすべてにおいて役割が与えられ、私たちは契約のために生きている。
この世界で生きるとき…支配されるなら、誰を据えるのか?
それは私が決めること。
誰かに言われて決めることじゃない。
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