インタビューウィズ地底人②
(おさらい)「私」は地底で契約をしている。ひとつ目の契約…地底で創造主に創作物を捧げる契約。ふたつ目の契約…邪神界の神と縁ができないようにする契約。)
私
「今ならわかるよ。アンライスは本当に吸血鬼レスタトと話してたんだって」
(注)吸血鬼レスタト…アンライス作品の主人公)
地底人
「だろうね。彼女には吸血鬼からのコンタクトがあった。たぶん契約も」
私
「アンライスは今?」
地底人
「どこかの教会でイエスキリストの下働きをしてるよ」
(たぶんニューオリンズの教会)
私
「吸血鬼レスタトはあなたの知り合い?」
地底人
「全然。有名だから名前だけ知ってるけど、会ったことはない」
私
「私たちのように、創作物を創造主に献上する契約をしてたのかな?」
地底人
「そうかもしれない。彼女に作品を書かせたレスタトはアンライスのツインソウルだった」
私
「アンライスの小説で描写されてる吸血鬼の雰囲気と、あなたはよく似てるよね」
(注)ライス作品内で吸血鬼の面持ちは彫像や彫刻のようと表現される)
地底人
「だからそれは、長く生きてるからだってば。彼らも僕も、長く生きている吸血鬼であって、人間じゃないから。いちいち感情が揺さぶられないんだよ、もう」
私
「それは…アンライスの小説に書かれてたように、悲しいこと?吸血鬼が感情的になれなくなって、感動できなくなったことについて、あなたはどう思ってる?」
地底人
「うーん別に…今のところ僕は、感情的ではないことを嘆いていないし、ただ淡々と日々の仕事をしているだけだよ、それに…」
私
「それに?」
地底人
「君はわかるだろ。長く生きれば生きるほど、心の中から憎しみなんて無くなって、絶望や失望も無くなっていく。すべての存在は進化しかしない。良い方にしか進まない」
私
「それは私が10代のころ、あなたがずっと耳元で言い続けてきたことだよね」
地底人
「君が何度も死にたいなんて考えるからさ。ひたすら生命の有り様を説き続けたわけ」
私「呪文みたいに」
地底人
「すっかり浸透しきってるだろ?まだ若かったスポンジみたいな脳味噌にさ」
私
「ありがとう」
地底人
「…ほんとうに、こうやって、話せる日がくると思わなかった。君が死ぬまでずっと、君に創作のインスピレーションを与えるだけで終始すると思っていたよ」
私
「いま、感動したでしょ?泣きそうになった」
地底人
「うん。感情を失ったわけじゃないからね。感情的にならなくなっただけでさ」
私
「あなたは私のツインなの?」
地底人
「誰よりも縁が長く、深い者のひとり」
私「あなたを…」
地底人
「視るな、肉眼で。僕は絶対に表に出ない。表に出るのは君であって、僕じゃない。これからも」
私
「あなたが死者なのかどうかを考えると、みぞおちから丹田らへんがいつも、ぐるぐる…」
地底人
「考えるなよ。時間は合ってないようなもの。君はいつでも戻ってこれる」
私「私のお腹の中に、契約書が入ってる?」
地底人
「いや、僕が入ってる」
私「………」
地底人
「契約を忘れるな。そして君は死んだとしても、逃げられることはない」
私
「契約から逃げられないってこと?」
地底人
「僕と君にはみっつめの契約がある」
私
「えーっと、知り合いの霊能者に契約内容をダブルチェックをしたいけど、無駄だよね?」
地底人
「僕が何年神官やってると思ってるの。地上の霊能者なんかが僕の心を読めると思う?それに他人に出していい情報はもう、ほとんどないよ」
私
「つまり、直接こうやって話すしか答えは得られない?」
地底人
「君がすべて思い出せばいいだけだ」
私
「…みっつめの契約について考えるとなんだか、切なくなる気がするよ」
地底人
「君はとても飽きっぽいしせっかちだ。どうせここ(地底の神殿)に帰ってきても、退屈で、またどこかにふらふら行ってしまうよ」
私
「すべての生命は進化しかしないって、今、やたらあなたの言葉が沁みるよ」
地底人
「生きている限り愛は深くなり、拡大するしかない。すべての生命は神に戻るしかない」
ここで会話を中断。
かつて白山比咩神社の菊理姫神様は「愛をもっと持ち、深くしなさい、それが進化の道だ」と言いました。
憎しみや嫌悪などは、進化成長するたびに消えていく感情なのだろうと思いました。
ご支援いただけると幸いです。 よりよいものを創造していけるよう、取材や制作に使わせていただきます。