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5億年前の私たち

肉体を失った友はかつて、

私の養育者であり、
父であり、
友であり、
ペットだった。

そのうちのひとつの話。

舞台は地底。
実父の人身売買事業により、
私は内臓をいくつも失った。

友は私の行く末を案じ、
私を身請けしてくれたけれど、
肉体が傷つきすぎて、私の意識は戻らなかった。

そういうわけで友は私の生命維持装置をはずすのだけど、
友はそのあとすぐに、死を選んでしまったのだった。

永遠に生きられるはずの地底から脱出して、
地上を選んだ。

生まれ変わりのある状態を望み、
私の行く先である地球へともに降り立った。

その後地球では生まれ変わりのたびに、
たくさんの恨みや怒り、失望を堪能し、
私と友はここまで生きてきた。

私が決して裏切ることはないと知っている、
感情的でドラマチックな物語をともに編んできた。

友は殺人を躊躇わない人種だけれど、
今回限りでそれをやめるらしい。

そのために私のところへやってきた。

私は殺人をためらう人種だ。
だから友は私を選んだ。

新しい生き方をするために。

私たちはツインソウルでもないし、
いつも肉親というわけでもないし、
かつて恋人でも夫婦だったこともない。

いつも凝縮された甘い部分だけ味わう、
そんな友人関係だ。

なぜかわからないけれど愛しあっている。
いつもそう。
10年前後という契約もあるのにね。

異種族同士でありもっとも近い。

私は古い記憶を手繰り寄せ、
友とのたくさんの昔話を記録するだろう。

私の創作は記録なのだ。
いつだって。
昔から。
未来においても。

いつか夢で、きみの作った器を見せてほしい。
私も覚えていられるようにする。

ご支援いただけると幸いです。 よりよいものを創造していけるよう、取材や制作に使わせていただきます。