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吸血鬼の逃避行


「ねえ、最初は大峠だの日月神示だの旧約聖書だの、シオンの民だの…そんな記事を、あなたとのチャネリングで書いていたのにね。ピコとのコンタクトがこんな風になっていくとは思っていなかったよ。今やただの会話じゃん」

地底に棲む吸血鬼の夫ピコ
「今世の君が長いこと、君自身のことを見誤り続けてたからね。君はもともと頭がおかしいんだよ。それに気づかないまま長い旅路を生きてきた」


「それって褒めてるの?ディスってるの?とりあえず私は真面目にペン入れしてるよ」

ピコ
「君の遊び癖と睡眠欲、狂気にストッパーがないと、今世の宿題である地底の漫画を完成させられないと思って、生まれる前の設定項目に「鬱病」「虚弱」の要素を少し足したね。そしたら分量に失敗して、30歳まで偏頭痛持ちで絶大なるメンヘラになってしまった君だ。
そんな君のために僕はこないだ、血も心臓もくれてやったんだからね。絶対がんばってよね」


「ねえ、話変わるけど、去年の末に14日間、ピコが私に呼びかけたセリフがあるじゃん?」

ピコ
シオンの民よ!

お前たちは識る時がきた!
目を醒ませ!
この声を聞いた者は聞こえない者に知らせよ!
集まれ!集まれ!

ピコ
「カッコよかっただろ?それっぽくて」


「あれってピコがシュメール人で王族だったときの全国民と、家族、使用人たち、縁の深い人たちや、子孫に呼びかけたんだよね?」

ピコ
「そうだよ。ものすごい人数になる」


「あの呼びかけのときにね、私は夢をみたんだよ。追っ手から逃げる、犯罪者のふたりを。ふたりは警察に捕まってしまうんだけどね。あれは…」

ピコ
「そりゃ血族全員、膨大な人数になるからね。中には僕の呼びかけに気づかないでせっせと前科を作ってる、そういう間抜けもいるだろうさ。というかそれ、僕ら2人のことかもしれないけどね(にやっ)」

私「大昔の私たちってこと?」

ピコ
「そうだよ!僕のたった一回の浮気にブチキレた君は、僕をおいて地上へ行っちゃって、行方不明になった。僕は心底申し訳ないと思い地底から地上へ出て、君をなんとか探し出した。そしたらなんと君は…おぼえてる?」

私「覚えてない」

ピコ
「じゃあ…教えよう。これが真実だ。

君はね、地底においてきた夫をすっかり忘れ去り、他の男と婚約してたんだ」

私「冗談でしょ?」

ピコ
「いや、ほんとうだ。思い知るがいい。これが君の正体だ」


「私の漫画のストーリーと同じだよ」

ピコ
「だから何度も言ってるだろ。あれは実話なんだよ!僕らの!」


「…すごいねえ〜!そんな霊的な真実があったなんて…!(目キラキラ)」

ピコ
「僕にとっては今や、すっかり笑い話になってる過去のことだけどね。ぼく的には大事件だったから……君の漫画が待ち遠しいよ」


「そんで、私たちは犯罪者で?その先は??

ピコ
「そうだなあ、詳細は…これから数日以内のコンタクト中に思い出せるかな………まあいいや。
要するに、僕と君はその婚約者を殺しちゃったんだな。でも、まあね…殺しといてなんだけど、悪意、殺意はまったくなかった。あれは事故だったんだよ。その婚約者が悪い奴だったの。だから君も僕も、この程度のカルマ返済ですんでるんだけどね」

私「あ!わかったそのときに…子ども!」

ピコ
「そう。そのとおりだ。君にはすでに子どもがいた。信じられないことに」

私「………!」

ピコ
「そのとき僕は決めた。子どもは育てようと。ぜんぜん血が繋がってないけど、別にそんなことはどうでもいい。母親は君だしね。そして僕も悪い。浮気したしね。だったら…ちょっといったん逃避行して、何が最善かを考えようと」

私「自首しなかったの?」

ピコ
「そこが難しい問題だった。僕は当時も地底人だ。君は人間だ。家出後に人間に生まれ変わってる。だからどうしたら子どもを育てられるのか?この場合、人間界と地底世界の、どっちの法が適用されるのか?」


「それで…子どもは取り上げられたのね。漫画の物語は、そうだよ。てことは…私たちでは、育てることはできなかったんだね?」

ピコ
「そうだ。結局はそのあと、その子と再会することはできなかった。当然だけど……。
僕はまず、当時仕事してた地底の教会に打ち明けた。そして地底の底の底の…最高神(創造主神)に交渉した。まず君の、加護。なぜなら…君は、僕と結婚するまえ邪神と縁したことが原因で追われていた。もともと邪神の生贄になる予定だったんだよ。まあ、当時は…ドルイド教とかね。あるじゃん。人間を供物にするヤバい信仰。ああいうのと縁してしまって、その邪神に追われていた」


「だからピコが地底で創造主神と契約して…私を追っ手から傷つけられないようにしてくれたんだね。私は何度もみている夢があってね。日本全国どこにでもいる、現世利益に特化した、悪魔っぽい神々をより分けて、より分けて、なんとか今世の自分にたどり着く夢なの」

ピコ
僕が君の加護だけでなく、邪神避け祈願もしてるんだってば」

私「ありがとう…」

ピコ
「今世の君はやっとその、大きなカルマをすべて、返済する。そのための神との契約でもある」


「ピコ…ごめん。なんていったらいいか…」

ピコ
「謝るな。これはね、俯瞰して見てみればわかる。化学反応だったんだよ。狙ってやったこと。僕と君が、どこにでもいるモブみたいな、ただの地底人で終わらないために。一緒に計画してたんだ。
きっとそれほど、退屈していたんだよ。僕らは。人生に」


「その化学反応は…成功したの?」

ピコ
「にやり。どうだろう?今まで過去世において、僕と君とはたくさんの作品を共同制作してきた。そして今世の君はとうとう、僕が仕える地球の創造主神…国常立大神にたどり着いたよね?そこから先は…」

ここで会話を中断。

ピコと育てようとした、生き別れた子どもはどこへ行ったのか?
現在は私の周りに存在しているのか?
殺してしまった婚約者は、現在では、誰なのか?
そもそも出会っているのか?

これから先に、ピコとのコンタクトで明らかになっていくであろうこと。

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五月女夕希/野良漫画家
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