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吸血鬼と美女と野獣

私「美女と野獣って知ってる?」

吸血鬼夫
「メアリシェリーの原作なら知ってる」


「私はディズニー映画を10歳のとき観てさ。すごく感動したわけ。で、成人してからはね、こういう…男性を支える女性特有のヒロイズムみたいな?意識が広まるのってどうなのかなってちょっと思ったりしてさ」

吸血鬼夫
「つまり、ドメスティックバイオレンスで離婚に至る夫婦特有の…」


「そうそう。でね、さいきん思ったんだよ。たとえば私のケースのように、自分の片割れが吸血鬼だったり、狼族だったり、恐竜タイプやゴレムみたいな地底人だったとしたら?そのことを自覚してなくても、観たら感動しちゃうと思うんだ。本人にとっては、片割れに出会ってああなるってのは、あり得る未来だからね」

吸血鬼夫
「ああ、そうかもね」


「私がその存在を認識しているモンスターをざっと並べたけどさ。もっと、人間離れした外見の存在っていっぱいいるだろうし」

吸血鬼夫
「なるほどね…あのね、今思い出したけど、インタビューウィズヴァンパイアの原作者、アン・ライスの前に、彼女のツインソウルの吸血鬼レスタトが現れただろ。で、小説を書かせたわけだけど、レスタトは、ライスの脳に働きかけて、生前の姿を見せていたんだと思うんだよ」

私「どういうこと?」

吸血鬼夫
「うーんと…アン・ライス本人が、とてもイケメン好きなんだと思うよ。だからレスタトは配慮したんじゃないかな」

私「へえ…配慮ねえ」

吸血鬼夫
「吸血鬼だっていつも満腹でいるわけじゃないだろうから、幻を見せるわけ。もしくはライスを訪ねるときは執筆中で滞在が長くなるだろうから、事前にたっぷり血を飲んで、人間らしい造形に戻して出かけたはずだ」

私「もうちょっと説明ください」

吸血鬼夫
「昔話だけど、僕を吸血鬼にした人物は、当時でもかなり高齢だった。だから僕はそこそこ強力な吸血鬼スタートだった。つまり初めから、血を満腹になるまで飲むなんてことをする必要がなかった。飢えに耐えられるわけ。でも若い吸血鬼は、飢えればすぐ今の僕みたくなる。血管だらけで瞳孔が赤くなる」

私「あなた今までずっと飢えてたの?」

吸血鬼夫
「飽食しないって言ってよ。僕は宗教従事者なんだからね。血族内で補わせてもらってる吸血だって、血の蒸気を吸い上げるようなやり方なんだから」


「そうか…だからあなたは、仙骨治療に同席できるんだ」

吸血鬼夫
ライトボディの吸血鬼といえば、そうかも。見た目は悪魔かモンスターだけど」


「ねえ、日中とかさ、無理に生前の姿とらなくていいよ。モンスター造形で現れてくれて大丈夫。意外とヒキガエルみたいに愛嬌があるから

吸血鬼夫
君はどうしても僕をヒキガエルと同列にしたいようだな。君の地上の夫もその件で以前、怒ってただろう」


「まあ要するに、あなたがだんだん、生活感のある身近な存在になってきたってことだよ。人間だったときの姿を幻覚で見せられても、吸血鬼って挙動が…独特すぎて…近づきにくさがあったからね。超然としすぎてて。だから今のほうがいい」

吸血鬼夫
「じゃあ、いいことなのかな…よくわからない」


「ちなみに…超然。この表現、アン・ライス作品によく出てくるんだよね」

ここで会話を中断。
狐や天狗などのご眷属は、神様お手伝い係と、その他がいる。
人間もそう。吸血鬼もそう。
世界の構造はシンプル。

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