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閻魔さまが語るピコの心理

閻魔さま
「ところでおまえ、なぜ地底人ピコが食人に至ったかを話そうじゃないか」


「え!?なぜって…そんなの話す必要あります?2027年7月には、私はピコとの契約を完全解消する予定なんですが…」

(地底人ピコと共同制作した作品を、閻魔さまに提出するという契約を、過去世いくつもにわたり継続し続けてしまっている私。ピコと私の人間関係がこじれすぎて悪縁化状態)

閻魔さま
「それはそうだが、おまえ一昨日……

天之御中主神に、チップを入れられただろ?

それも、5つも」

私「ああ!…そうなんですよね〜。なんでですかねえ?」

閻魔さま「そのチップの意味、わかっているのか?」


「えーと、卵巣ふたつに入ってるやつは、健康状態のチェックと、健康維持のため。おへそらへんのは、GPS。心臓付近のは、パパ上からのメッセージの受信用。右胸のは……さあ?わかりません」

閻魔さま

「盗聴器だよ!目障りだから昨日取り除いたが。

また新しいのを入れられてるようだな」


「……えぇ〜!?盗聴器!?なんでですか!?私なにかパパ上に、しましたっけ!?」

閻魔さま
「天之御中主神の言うとおりで、おまえは忘れっぽいから。そのせいで次の行動が読めないからそんなもの入れられたんだろうよ」


「まさか私がピコと、またやりとりし始めるかもって思われてるとか?」

閻魔さま
「それも含めてだろうが、おまえもいい加減、なぜ自分がそこまで支配されがちなのかを考えるべきじゃないのか?自分のどの性質が、支配管理を引き寄せるのか。説明してみろ」


「え〜…わかんないですよ。そんなの……好き勝手しすぎてるから、とかですか?」

閻魔さま
「そうだが、そうじゃない。おまえ……かつて、まだ人間を喰ってた頃のピコを、庇って死んだろ?3000年前のことだ。粛正されそうだったピコを助けるために、自死したろう」

私「はぁ……」

閻魔さま
「あのとき天之御中主神はわざわざ私のところへきて、おまえの恩赦を頼んできたんだよ。自死といっても意味が違うからといって。だからその後すぐに、天之御中主神の娘としておまえを転生させた。
そのときピコは初めて「愛とは何か?」考える機会が与えられたんだよ。20億年まえの恨みから、過去世のおまえを何度も殺しているのに、ピコはそのおまえによって生かされたんだからな」


「はぁ。そうみたいですね。でも私自身が、なにも考えていなかったという証拠ですよね?

だって今や、ピコと離れたくて、閻魔さまに縁切りをお願いしてる真っ最中なんですから」

閻魔さま
「おまえは過去世の長きにわたり、ピコに何度も報復され、早逝が多すぎた。だから地上で何度も転生してるくせに、感情というものの複雑さが、今ひとつ理解できていない」


「それはわかります。人間としてはまだ小学2年生くらいの感覚、ありますもん」

閻魔さま
「おまえは、母性愛とも、男女の愛とも違う基準で、生きている。おまえはかつて、ピコを助けた。そしてその後の転生で、ピコが肉食を断ち、殺しをやめ、ビーガンの地底人になったころ……

おまえはピコを手放した。

もう心配いらないからといって。

私のいっている意味がわかるか?」

私「ええっと……私が無責任だっていいたいんですか?」

閻魔さま
「無責任かはわからんが、おまえはピコが楽しく生きているならそれでじゅうぶんだといって、その後すぐ……

天之御中主神の提案した側室契約を、受け入れた。

そしてそれを知ったピコは激怒して、おまえを殺し、調理した。

地底にあるピコの自宅で。そうだろう?」

(ピコの粗暴さと女癖の悪さに悩む私に、パパ上は「神である私の妻か側室になれば、未来世の長きにわたり良縁しか引き寄せなくなる。契約をしなさい」といっていた。当時の私は神の妻になる意味がわからなかったため、結婚には踏み切れず、側室にとどめた)


「ピコんちの、あの、意味不明なまでにでかい台所で、ですね。やたらとでかい冷蔵庫も、ありましたし。私はその中に、入ってたんですよね。あー怖。ホラーですよ。まったく」

閻魔さま
「今世のおまえも相変わらずだが。おまえの中では男女の愛よりも、亀やカエルの方が、大事だろう?」

私「大事ですよ。そりゃ」

閻魔さま
「即答だな。しかし急に突き放された状態になったピコは、それで怒り狂ったのだとは思わないか?

おまえはもともと強烈な人間不信があるピコを、大きく助けたあとに、さらに大きく裏切ったということだよ」


「ええ〜!?でも……ピコは、過去世すべてにおいて、私を憎んでいましたよね?だからこそ当時の私は、ピコがビーガンになったあたりで、自分の役目が終わったように感じたんだと思います」

閻魔さま
「おまえは今世、とうとうピコとのこじれすぎた縁を、切るだろう?2年後に。私も天之御中主神も、それが最善だと思っている。だが一方でおまえは、怒っているピコが、大事なペットたちに手を出すのではないかという恐れを抱いてる。おまえは私と天之御中主神に、祈ったな?

私の大事な生き物たちを、誰にも、ピコにも傷つけられないようにしてくださいと」


「はい…そうです。だってピコが、私を脅すようなことをいうから。私を傷つけるために、関係ない存在を巻き込むのは、ちょっと…ありえないと思って」

閻魔さま
「わかるか?ピコはかつて、その動物たちと同じ立場だったんだよ。

おまえにとって、ピコは最大限の愛情を注ぐ対象だった。

だがだんだんよくなっていくピコの様子をみて、おまえはピコを手放し、離れようとした」

私「ダメでしたか?」

閻魔さま
「ダメとはいわんが、もっとピコと話し合うべきだったかもしれんな。おまえは自分が忘れっぽいから、他人も同じだと思いがちだ。でも真実は、そうではないだろ?」

私「そうですね……」

閻魔さま

「おまえの愛はとても雑で、説明不足だ。圧倒的に言葉が足りない」

私「それは…はい。わかる気がします」

閻魔さま
「それなのにこの間おまえ、「閻魔さま、ピコをよろしく頼みます」などというしな。私からみればそれなりに一貫性はあるが。

ピコの目線でみたら、支離滅裂なおまえにさんざん振り回されたと感じるだろうよ」


「うーん……地上の夫もいっています。説明がなさすぎるって」

閻魔さま
「そうだ。言葉が足りなすぎる。そしておまえはひとりで答えを出してしまう。だから次の行動が予測できない。天之御中主神はそれがあるから、おまえにチップを仕込んだんだろう。私とおまえがなにを話してるかも、把握しておきたいのだろうし」


「うーん……そうですか。私、今後どうしたらいいんですかね?」

閻魔さま
どうにもできない。その性質は、直らない。だがせめて、言葉を増やせ。そうすればおかしな疑いを持たれずにすむ」

私「気をつけます…」

ここで会話中断。
自転車乗ってるときに話した内容です。

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五月女夕希/野良漫画家
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