吸血鬼を審神者する
私
「ちょっとさあ、昨日まる1日頭がボーッとしちゃったじゃんよ!」
地底に棲む吸血鬼の夫ピコ
「アストラル体の君があれこれ質問してくるからだ。起床時までメリハリなくそれやると、脳の血管が切れるから気をつけてね」
私「それはまずいね」
ピコ
「本気で言ってるからね。たまには3次元に戻らないと」
私
「まあいいや、ねえ、昨日…夜中さ、あなた「審神者!」って大きな文字を私に見せたでしょ」
ピコ
「そうだよ!君はそろそろ審神者ができなきゃ駄目」
(審神者/サニワ…視えない存在と交流するとき、対象の正体、正邪を見極めること。いろんな質問をして、神仏ではなく魔物が降りていないかどうかを確認する)
私
「あのあとピコと審神者の練習したけど、どうだった?」
ピコ
「うーんまあまあかな。本当はイメージのチカラで自然と思考を隠すことができるといいんだけどね。でも君は忘れっぽいからさ、審神者のために相手に質問したとき、君自身が答えわかってないだろ?」
私
「そうなんだよ。わかってないまま質問するんだけど、合ってるかどうかはわかるじゃん?はからずも…自分が忘れっぽいことが利点になった」
ピコ
「そんなのほんとは変なんだけどね。まあいいよ。これからがんばって」
私
「あとさ、大昔にピコを吸血鬼にした人と会ったよね?」
ピコ
「ああ、うん。昨日はパーティやってて…僕ああいう場所嫌いなんだけど、一応顔出した。君を連れて。そこにいたね」
私「ピコはその人とあまり相性よくないの?」
ピコ
「相性はどうかわからないけど…僕は押しの強いタイプが苦手なの」
私「あの人押しが強いんだ?」
ピコ
「なんかこう…あの人、昔っからいろいろ僕のために手を回してくれて、すごくありがたいんだけど…すごくよこしまな感じ。こっちから頼み事したくない。でも以前あることを頼まなきゃならなかったときに、見返りが必要で…」
私「なに、見返りって」
ピコ
「僕の腕を一本、3ヶ月くらい貸出しなきゃならなかった」
私「はあ?」
ピコ
「ぼく吸血鬼だからさ…ほっとけば腕はゆっくり生えるし、生えきらなくても断面くっつければいいだけなんだけど…一体僕の腕で何したんだろうなと…」
私「キモ」
ピコ「ほんとだよ…」
私「吸血鬼の世界はわけがわからないね」
ピコ
「話戻るけど君さあ、昨日、僕の姿した死霊と話してたろ」
私
「やっぱそうだった?なんか挙動がおかしいなと思ったんだよ」
ピコ
「あんなゾンビみたいなのと僕を間違えるなんて」
私
「ゾンビ相手に柳に風みたいな会話してる最中に、本物のピコがやってきて「審神者!」っていうからさ、やっぱ違ったか…みたいな」
ピコ
「ほんとに君、そろそろ審神者できるようになって。僕とのコンタクトがこんなに直接的になってるんだから。これからこういうことは増えるよ。性根の曲がった霊はたくさんいるんだから」
私「そうだねえ、気をつけるよ」
ピコ
「言っとくけどさ、このあいだお世話になってる霊能者に「君に憑いてる霊を全部取るのはやめてくれ」って言ったんだけど…」
私「へ?なんで?」
ピコ
「君に高次元の漫画なんか描いて欲しくないからだよ」
私「はあ??」
ピコ
「血まみれホラー、ソフトSMとか、そういう…まったく高次元ではない漫画を描かせたいからさ。そのためには君にほんの少し死霊が憑いてたほうがいいわけ」
私「…………」
ピコ
「あ、でも毎晩の塩風呂や酒風呂は続けて大丈夫。それやっても君が完全にクリアリングされないように、僕がうしろでうまくやってるから」
私「そんなの全然うまくないよ!」
ピコ
「まあそういうわけだから、これから君は僕と死霊とを見分けられるようになってね。それ次の課題」
ここで会話を中断。
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