吸血鬼と実父について話す
私「ピコに質問があるんだけど」
地底に棲む吸血鬼の夫ピコ「なんでもどうぞ」
私
「眠りに落ちそうなとき、ふわふわ〜っとなって、ハッ!と…自分の霊体が肉体に戻る、みたいな瞬間があるんだよ。ピコとのコンタクトが始まってからなんだけど。あれってなに?」
ピコ
「えっと…まず、地底はどろどろっとしている。あちこちに微生物が存在し、水分を多量に含み、カタチというものを維持できずに、どろどろ、どろどろ…」
私「うん」
ピコ
「僕はそういう地底の、奥底に棲んでいる。君も昨日、マグマを見たろ?」
私
「見た。マグマの湖みたいなやつ。夕陽のように赤かった」
ピコ
「もともと君は、そういう場所で暮らしてた。僕と一緒にね。だからどうしても、地底にいたときの意識に戻ってしまうんだと思うよ。ずっと僕とコンタクトしてるしね。
君の霊体が、どろどろ、どろどろと…でも、今の君は地上で、肉体という物質を纏って存在している。だから急にハッ!として、霊体が、肉体に戻る。そんな感じ」
私
「へええ〜。そういうことだったんだ。体外離脱と関係してるのかなって思ってたよ」
ピコ
「きみ体外離脱は、無意識のうちにしてるよ。寝ているあいだ、アストラル体になって僕とあちこち出かけてるじゃないか」
私「まあねえ」
ピコ
「あと…ずうっと奥底の地底人同士の交配はね、どろどろと、混ざりあうんだよ。ひたすら、混ざりあう。だからそういうのも、あるかな」
私
「私の顕在意識が寝てるあいだに、アストラル体がピコといろんなことしてるってわけね…」
(なんだか気が遠くなる心地。手に負えないなと思う)
ピコ「あははは、そうそう!」
私
「まあ…いいです。なんでも。じゃあ次の話題ね」
ピコ
「以前自分でやった、前世ヒーリングのことだね」
私
「うん。以前、誘導瞑想の音声に従って、成仏できていない前世の自分を浄霊したんだよ。そのとき、死んだ愛亀の欣二と銀二、ヒキガエルの伝次郎も出てきてさ」
ピコ
「大昔に、彼らと過ごした転生4つぶんの、自分を浄霊したってことだよ」
私
「あんなに怒りに燃えてたんだねえ。私」
ピコ
「君はほら、実父がさ…君の同意なく臓器売買したりね、君を売ったり、とにかくお金のために君を何度も利用してるんだよ。今世はそこまで悪質ではなかったけど、29歳のとき、危うく君を使って、別宅を手に入れるところだった。覚えてる?」
私
「私がね、20代ずっと体調が悪く、メンタルも危ぶまれたので…私の病を利用して、父が団地を手に入れようとしたことがあったんだよ。私の意思じゃないよ、父がそうしたがった」
ピコ
「馬鹿馬鹿しいったらないよ。まあそういうお父さんだからね、さすがの君も「人は生まれつき性悪な場合がある」という、ひとつの悟りに至ったわけだ。普段は性善説を支持している君がね」
私
「父のいくつかの前世に、恋人のために殺人を犯して逃避行する、というものがあったんだよ。人は必ず前世の記憶を忘れて生まれるけど、記憶を無くすわけじゃないんだよね。ただ忘れてるだけ。経験としてはしっかり、身についてる。だから父の中には、殺人の意識が残ってる」
ピコ
「気に入らないから刺しちゃおう、というような意識を、普通に持っているのが君の今世の実父だ。度重なる転生でさすがにもう実行はしないけど、いざとなったら実行できるんだぞ〜と思いながら生きている」
私
「そんなの誇るようなことじゃないと思うんだけどねえ。残念ながら今世の実父はそういう人なんだよ」
ピコ
「君の愛する銀二は時たま、人生において、君がお父さんに傷つけられるときに、助け舟を出すという形で現れる。内臓を失い不具になってしまった君を引き取ったり、売られた君を引き取ったり、とかね」
私
「今世では、両親が離婚したあとに私をとことんいやしてくれたよ。亀の姿で」
ピコ
「君たちは不思議なことに、転生のたび、いつも無私の愛情を与えあってるよね。相性がいいんだろうな」
私
「銀二の愛情表現はいつも可愛いんだよ〜。人間のときも亀のときも。どストレートだしねぇ(でれでれ)」
ピコ
「僕だってストレートに表現してるけど?」
私
「え〜?そう??疑いを持たざるを得ないくらいには、暗黒の裏側があるでしょ。数年まえ私を死ぬギリギリまで吸血してたしさ」
ピコ
「君が怒らすからだろ。漫画やめちゃおっかなって言ってさ」
私
「まあ私も悪いけどさ…でもねえ〜」
ピコ
「ふん。覚えてろ。君のその僕への疑心暗鬼。僕がなんとも思ってないと思うの?」
私
「でもピコは傷つかないでしょ、こんなことで」
ピコ
「失礼な。ほんっとに君は……僕を知らないよね」
(わりとマジな感じでじろっと見下ろしてくるピコ。ちょっと戦慄)
ここで会話を中断。