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大峠にむけて吸血鬼の本音

私「ピコに素朴な疑問があります」

地底に棲む吸血鬼の夫ピコ「なんでも聞きたまえ」


吸血鬼になる前は、高次元存在だったことがあったといってたよね?その時のことぜんぜん話題にのぼらないんだけど…なんで?」

ピコ「つまらなかったからね

私「は?つまらない…?」

ピコ
「そ。高次元存在の時期はとてもつまらなかった。楽しいことがひとつもない。これといった収穫もない。果たしてこんなことに意味があるのか?って思っちゃってね」

私「んん……?どういうこと?」

ピコ
高次元存在になっちゃうと、もう、守護対象の人間を見守るだけになっちゃうんだよ。本人の自立をひたすら待つのみ。かゆいところに手が届かない…というか、掻いちゃ駄目なの」


「…ああ…うん…?守護霊や守護神が本人をひたすら応援して、自力で立つのを待つというニュアンスはわかる気がするけど…その仕事じゃピコは満足しなかったってこと?」

ピコ
「よく考えてごらん。僕は天使みたいなことやってたんだけどね…もうね、人間の、ひたすら…エゴ!私利私欲!それを美しい言葉で飾ったものを願いごととして受けとって、よしよしって言ってあげて、ひたすら本人の努力を見守る。結果が出るまで待つ。結果が出れば感謝されてさ。まぁお礼言わない人間もいるけど…ひたすらつまらなかったよね」

私「つまらない…そうなんだ…?」

ピコ
「もうさ、ダイレクトに怒りや狂気を大爆発させて、お小遣いでタトゥー入れて、髪の毛立ててエレキギター買ってくる若者のほうが、ずっと素直で正直だよ。応援したくなる」


「え…?それでピコは…闇側に転じて…吸血鬼になっちゃって、ホラー映画や漫画、小説に影響を与える側に移行したってこと?飛躍しててちょっと理解が…」

ピコ
「僕が言いたいのはね、善悪、高低、どちらも中身は大差ないってことなんだよ。結局どちらも地球の浄化を目的にしてるしね。アプローチの仕方が違うだけだ」

私「ふむ…」

(ピコが息を荒げ、どんどん早口になっていく)

ピコ
「それにさ、地上でもそうだと思うけど…

嫌われ者のほうがはるかに役に立つと思わない?」


私「説明をお願いします」

ピコ
高次元存在は見た目がいいからね。キラキラしてて、圧倒的な市民権を得てる。誰も批判しない。人類からしたら無条件に役職の高い存在。
僕そんなの、興味ない。あれは…高次元存在は、霊的サポートをする存在になりたての、ビギナー守護存在のための仕事だよ」


「ピコ…すごいね…!いつも以上に辛辣で…絶好調って感じ…??(自分の頬が強張っているのがわかる)」

ピコ
「僕はさ、最後に人間だったシュメール人のとき、いわゆる…王族だったわけ。地上に生まれただけで褒められたし、道を歩けば民が合掌し、身に覚えのないことで感謝もされた。おまけにハーレム。だからもう、そういうのはいらない」


「…はぁぁぁ…っ、ピコ…なんていったらいいか…(自分の目がどんどん見開かれるのがわかる)」

ピコ「現存している高次元存在の約9割が不要だと思う


「すっごいね…ピコ!そこまで言っちゃうの!この大峠の時代に!!

(青ざめ絶叫する私)

ピコ
「そもそもね、僕があのまま高次元やってたら…君に一滴も血をあげられないし、心臓食べさすとか、絶対無理だからね。きみ今ごろ野垂れ死にだよ。創作活動においても、クセのないサッパリした、キラキラ、ふんわりした、もしくは爽快な…そんなインスピレーションしか降ろしてあげられない。それってどう?」

私「うーんまぁ…個人的には好みじゃないかな…」

ピコ「でしょ。そのうえ…」

私「まだあるの!?」

ピコ
黙って聞くんだ。僕がもしまだ高次元存在だったなら…

今のきみの地上の夫を、君に縁づけてあげられない!」

私「うわーっ!そりゃ困るわ…!」

(超絶虚弱な私を現実的にサポートしてくれた地上の夫…!子育てにおいても家庭内では絶大な役割を持つ)

ピコ
「だろう?それにひきかえ高次元はおせっかい焼きしちゃ駄目なんだよ。
でも、僕は目に見える結果の出ない仕事は嫌いなんだ。だから自分の霊的ステータスよりもっと実務的な、闇側にシフトしたわけ」


「すっごい話…。でもさ…聞いてて思ったんだけど…あなたの子孫である地上の夫もさ、そういうとこあるんだよ。世間的な風潮や、ニュースとかもだけど、絶対そのまま、見たままを鵜呑みにしないの。陰謀論者でもなんでもないのに。本当に役に立ったのは誰なのか?ってとこをすごく気にする」

ピコ
「そりゃそうだよ。よく考えてごらん。彼の先祖は僕だよ?(眉をしかめ、腕を組み、のけぞる)」

私「はぁ…うん、そうだね…?」

ピコ
「僕は政治的プロパガンダを行う側だったんだからね。自分の子孫がそんな、その場の雰囲気だけで物事を判断してしまうような愚か者じゃ困る」

私「ああ、なるほど…」

ピコ
「あっ!うーんと…制作中の君の手を止めてまで、ひたすら喋ってしまった。すまない。もうやめる。これ以上話しても悪口しか出てこないし…ごめんね、続けて」

私「はい」

ここで会話は中断。
ピコはこの質問に対しかつてなく弁舌豊かに返答してくれました。
ほんとに地上の夫の、先祖なんだな〜と、しみじみ感じましたが…。
トガリすぎてて途中から顔に縦線が入りました、私に。

★あとあとピコから、現存する9割の高次元存在が不要という部分は言いすぎた、たぶんね…と訂正がありました。


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