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医療で留学をしたいと思ったら、まず初めにすること

皆さんが留学をしたいと思うのは、なぜですか。私は、海外で学びたい気持ちがありながらも、きちんとした計画を立てず、手段への意識ばかりが先走って右往左往していた時期がありました。


目的と手段が入れ替わらないように

医学生のころは流れに乗って、米国の医師資格を取得するための試験(USMLE)の勉強を同級生たちと行っていました。ですが、よく考えたら数年の臨床留学をして戻ってくるのは目指していることではないことに気づきました。そこで留学先を斡旋してくれる医局はないものかと、安易に考えた時期もありました。また、留学生の公募情報を探しては、(自分のやりたいことではないにもかかわらず)応募しようとしたりもしました。

留学したい気持ちばかり先走って、いったい何が目的なのか分からなくなっていることに、自分では気づけていませんでした。ですが迷宮入りしそうになるたびに、私の将来を真剣に思ってくださる方々が向き合ってくださり、軌道修正へと導いてくださったおかげで今があるわけです。でも当時は、「見学だけして何がしたいのか」、「これは本当に君がやりたいことではないだろう」、「もっと臨床医として研修を積んだ方がいい」といった言葉に、ずいぶん落胆したりしたものでした。
 

まずは、はっきりとした目的を持つ

では改めて、皆さんが留学したいと思うのはなぜでしょうか。
 
異世界を見てみたい、技術を磨きたい、英語を学びたい、海外に住んでみたい、異国の研究者と知り合いたい、日本ではできない研究をしたい、業績を作りたい、あるいは、なんとなく憧れがあるのかもしれません。
 
どんな目的でもいいのです。優劣はありません。
 
ですが、これをはっきりさせておく重要性は、強調してもしきれません。目的によって準備も手段も変わってくるからです。一つの物語として誰かを説得できるような明確な目標を持つことが、受け入れてもらうには必要というのはこちらではよく言われることで、留学に向けての第一歩と私は感じています。
 
目的がよく分からないのであれば、たくさん書物や経験談を読んで、多くの人と話して、刺激を受けて、とことん考えてみるといいと思います。紙に書いてみるのも有用です。

留学という大きな目標があると、英語の勉強や留学先を探すことやお金の心配など、目先のことにとらわれがちですが、「急がば回れ」とはよく言ったものです。決して楽とは言えない準備を進めていく原動力にも、「〇〇のために留学したい」と誰かを説得できる、強い目的意識を持つことは、欠かせません。
 

目的が定まったら

留学する目的がはっきりとしたら、次はそれを達成する方法を考えます。例えば医療英語に慣れたいというのが主目的であれば、海外の医師資格を取るよりも、まずは国内で開催されている学会の英語セッションに顔を出し、参加者と交流してみる、あるいは国内でのワークショップに参加するのが手っ取り早いように感じます。海外に行くとしても、診療の見学や学会参加から始めるのが良いかもしれません。論文をたくさん書きたいのであれば、若手や留学生が多く業績を残している研究室を探す必要があります。海外で臨床経験を積んで日本に持ち帰りたいのであれば、(多くの場合は、初期研修からやり直すことになり、年数がかかるため)人生設計と見合うかどうか、計画を練る必要があります。あるいは、日本での臨床経験が認められるような国や地域を選択することも一つです。
 
計画を立てる上で、国を戦略的に選ぶことも重要です。米国がかっこいいような印象はありますが(私も例にもれず憧れました)、目的が臨床であれ研究であれ、相当な競争率があります。果たして自分の目的を達成するために、その国が最適なのでしょうか。分野によって、進んでいる国や地域は全く異なります。また、たとえば臨床留学をして日本へ持ち帰りたい場合、日本とあまりにもかけ離れた環境で学んだことは、結局のところ、帰国後に地元へ還元しづらいかもしれません。また、目的としている分野が相手国ではどの科、どの職種の専門であるかは確認が必要です。例えば日本でいう「呼吸器内科医」は、欧米では「老年科医+腫瘍内科医+呼吸器内科医」である気がしています。また、違いを学ぶには、必ずしも世界の最先端である必要はありません。むしろこじんまりとした環境でこそ、多くの実地経験を積ませてもらえたりもするものです。
 
次はより具体的に、学生や社会人それぞれにおける留学の形やその利点・欠点もご紹介したいと思います。



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