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#58 戦わずして勝つ
~戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり(孫氏)~
競争戦略といえば,ポーターの5フォースやコトラーの競争地位別戦略などを想起する方も多いでしょう。そもそも競争戦略とは,競合との激しい競争の末に疲弊するのではなく,競合が同じ土俵に上がるのを防ぐという「競争回避」の戦略を上策としています。そいういことでいえば,孫氏の兵法にある「戦わずして勝つ」と同義ということになるでしょう。
このように,大量消費社会における競争回避の戦略は,圧倒的な参入障壁を築いて競合を同じ土俵に立たせないということでした。また圧倒的なシェアを獲得するために,消費者の認知率そして訴求力の向上を企図してそれ相応のマーケティングコストをかけていました。
しかしコロナによる世界的な消費後退を契機として,消費者は本当に自分の嗜好あるいは感性に合うものしか必要としないし,快適に生きていくために必要最低限なものしか選ばないという,ミニマリスト的な指向を強めています。消費者の価値観は多様化は加速度を増しており,今や十人十色ではなく一人が10通りの選択肢から消費を決定するという「一人十色」の時代と言われています。あるいは,10通りの選択肢を状況やシチュエーションによって使い分ける,ということでもあります。
このようにセグメント化されたマーケットに,それぞれマーケティングコストをかけるのは採算が合わず現実的ではありません。したがって消費がより細分化していく近未来のマーケティングは,マス・マーケットに参入障壁を築くのではなく,レッドオーシャンからブルーオーシャンへ移動し身の丈に合ったマーケットで活動する,というニュアンスを帯びてくるのかもしれません。
ところで情報化社会となった現代,消費者の情報収集力は20年前とはけた違いに高度化しており,消費者それぞれがサプライチェーンの各プレイヤーの情報に容易にアクセスできるようになっています。そして消費者は,それぞれの製品やサービスの機能やベネフィットといった論理的適合性だけでなく,ストーリーやコンテキスト(文脈)といった感性的適合性を重要視するようになってきています。ストーリーやコンテキストがどれくらい消費者の共感を得るかというのは,どれくらい多くという量ではなく,どれくらい深くという質に関することなのではないかと思います。
つまりこれからの時代は,競合他社より目立つことが重要視されたマスマーケティングではなく,商品やサービスの特性や機能を明確に訴求するというセグメントマーケティングでもなく,消費者に選ばれるのを待つという感性的なマーケティング思考が重要になってくるでしょう。
顧客は追いかければ追いかけるほど逃げていく,追いかけるのを止めたとたんに顧客から寄ってくる,というようなことが言われることもあります。それは,もはや他社と競争するというよりも,できる限り情報を発信し,製品やサービスのストーリーを成立させて,そのストーリーに共感しコンテキストを共有した顧客に選択されるのを待つ,ということなのかもしれません。
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#経営 #コンサルタント #競争戦略 #マーケティング4 .0 #アフターコロナ
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