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#28 操業停止点とは何か
~操業停止点で思考停止してはいけない~
損益分岐点分析を行うグラフ(図表)が,縦軸が費用+利益,横軸が売上,真ん中に45度線を引くという,およそ数学的センスのないグラフが流布していて,それが金科玉条のように教科書に載っています。たまに,縦軸は金額,横軸は数量で,Y=aX+bという数学的に理解できるグラフを掲載しているテキストもありますが,少数派です。筆者は,断然,数学的に理解できる少数派を押しています。
ところで,損益分岐点に似た用語で操業停止点というものがありますが,こちらはあまり財務会計系のテキストにはあまり出てきません。というのは,操業停止点はミクロ経済学の領域で,限界費用曲線だの可変費用曲線だのを使わないと理解できないややこしい部分があるからでしょう。45度線グラフの数学センスではアレルギーを起こすかもしれません(筆者も経済学は門外漢なのではありますが…)。
ところで,損益分岐点売上高とは売上と費用が同額で利益が出ていない状態です。損益分岐点売上高を下回れば当然,固定費のすべてを稼ぐことはできませんが一部は固定費分を稼ぐことができます。しかしながら,さらに売上高が下がって操業停止点売上高を下回ってしまうと,固定費すら稼げない状態となり,もはや事業を続けることが無駄ということになります。収支を単純なモデルで考えてみます。変動費率を30%,固定費を70万円とした場合,損益分岐点売上高(BEP)は100万円,操業停止点売上高は70万円,操業停止点売上高時の赤字は70万円×30%=21万円です。
瀕死の会社を見て,なぜこんなになるまで手を打たなかったのか,と言うは易し。負のスパイラルに入ると周りが見えなくなり,特に現金商売の場合は自転車を漕ぐのを止めればたちまちキャッシュが不足するのが目に見えていて,赤字を垂れ流して営業を続けるのです(自分も経験があるので,その感覚は痛いほどわかります)。しかしこれは,単なる延命策,緩慢な死を迎える準備をしているのにすぎません。営業を止めると支払いだけが残るような気がして(実際そうなのですが),体を動かしていないと,何もしていないと不安になるから,ただ無意味に営業を続けるのです。これは,もはや思考停止状態としか表現できません。経営の現場で大切なのは,営業を続けてもいい赤字とダメな赤字を峻別する,ということなのです。
筆者は事業再生系の専門家ではありませんが,たまに銀行経由の再生案件で,実抜計画(実現可能性の高い抜本的な経営改善計画)を作ることがあります。ですが,そのたびに感じるのは,再生案件はキツイ,自分には向いていないなぁ,ということです。会社を再生させるコンサルタントは,大将を逃がすためにシンガリを務めるツワモノの武将のようなもの,生半可な覚悟では務まりません。やはり筆者は,成長戦略のコンサルティングの途を進みたいと思います。
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