#60 荒波を乗り切る経営者の勘
~抽象的思考や論理的分析よりも,直感的な理解や意識の方が重要だ(スティーブ・ジョブズ)~
今回は,筆者の個人的な経験からお伝えさせていただくことを,ご容赦ください。私は2002年に30代半ばで起業し,多い時で飲食店を5店舗経営,年商で2億近くになっていたと思います。飲食業の現業の傍ら,飲食店向けのコンサルティング事業も行い,順風満帆とまではいかないまでも,なんとか経営を切り盛りしていました。
そんな折,ふと月商200万円のラーメン店の営業利益20万円(営業利益率10%)と,コンサルタントとしての顧問契約月額20万円を比較したとき,これからはコンサルティング事業を会社の柱にしていかなければならない,と思ったのです。今思えば,経営の柱を飲食事業からコンサルティング事業に切り替えたタイミングは絶妙でした。
セレンディップな話でいうと,その頃たまたま立ち寄ったブックオフで,偶然目の前にあった「中小企業診断士になる」という本に魂が吸い寄せられました。速攻でその本を買って,その日のうちにその本に載っていた予備校に片っ端から連絡し,一番最初に資料が届いたTACという予備校に入りました。その時まさに2008年2月半ば,8月の1次試験まで半年を切っている状態,そこから月120時間くらい勉強し(現場は従業員に任せてほとんど店に出ませんでした)何とかストレートで合格しました。そしてちょうどその年2008年9月に,リーマンショックが起きたのです。
中小企業診断士試験合格後は,リーマンショックで飲食事業の利益率が低下する中,事業会社からコンサルティング会社への移行を進めていきました。当然,撤退戦略ですからいろいろとハードな交渉もありつつ(殿軍の厳しさはこの時に学びました),2011年4月を残り3店舗の完全撤退のデッドタイムと定めて動いていたら,これもまた何とも言えないタイミングで,2011年3月に東日本大震災が起こったのです。
これらのを考えると,ひとことでいえば「ぎりぎりセーフ」,会社を倒産させることなく奇跡的に間一髪で切り抜けてきた,としか形容できません。
2008年のリーマンショックの前に事業構造を変えようと思わなかったら,あの時にブックオフで「中小企業診断士になる」という本に出合わなかったら,完全撤退の期限を東日本大震災と同時期に設定していなかったら,と思うと,「経営者の勘」というものは存在する,と確信せざるを得ないのです(これは私だけというのではなく,経営者であれば誰でも持っている右脳的な直感だと思います)。
そして現在,私は昨年の2019年9月ころから,仕事と生活を大きくシフトチェンジをしようとして,様々な新しいチャレンジをしてきています。このシフトチェンジのゴールは2021年3月に設定しているのですが,そこにこのコロナの荒波がやってきました。個人的には「直感に従って行動してきたことがコロナの波に乗って加速している」という感覚すらしています。
今コロナの影響下で,いろいろなことを変えてゆかざるを得ない状況におかれている経営者の方が多いのではないかと思います。どうすればいいのか,どう変わればいのか分からずに悩んでおられるかもしれませんが,もう一度よく振り返ってみてください。すでに答えは出ているのではないですか?コロナが起きる前から,こうしたほうがいい,あるいは本当だったらこうやりたい,ということが心の中で捉えられているのではありませんか?
「経営者の勘」は存在します。周囲の声に惑わされず,心の声に耳を傾け,勘が閃いたときは逡巡なくやる。今の荒波を乗り切るには「直感に従う」ことも大切なのではないでしょうか。
正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html