写真と記録をつなぐ旅 ~上湧別町立上富美小学校の息吹~ Ⅰ
春は名のみの……
まったく、この人間ときたら、学習するということをしらないのか。
いや違うな、熟考というべきか、推敲とするべきか。とにかく、思いついたことをぽんぽんキーボードにうちこめばいいと思っているのだ。そこに至高なる文章を求めるなど、あきらめたほうが良いのかもしれない。
しかも、めったに漢字を使わない。うぬは小学生か? と思われても仕方ない。でも本人はそんな評価など我関せずとばかりに、今日も何やら古びた本をめくり、ひらがなばかりのメモをとっている。この前はどこぞの物置から、ホクユウジンジョウなんとかという卒業証書をみつけて喜んでいた。まあ、変わりものという存在なのだ、この人間は。
こんなものを持ち出してきて、今度は何をはじめようというのだろう。
いやそれ以前に、どこにあった本なのか。法に触れることはないと信じたいが、ここ最近、こやつの行動が怪しすぎてそう断言もできない。なにせ独り言がひどいのである。キコー、キコー、とぶつぶついいながら、たまに光を発する謎の板をなでている。デスマスがどうたら、コジンジョウホウがああたら……。人間の使う言葉くらいは理解できると自負していたが、この者を見ていると己の無知さを思い知らされる。
暦のうえでは春なのだが、この人間の頭のなかは理解不能言語がとびかう猛吹雪のようだった。
時にあらず
ヘイコウ、ヘイコウというからどこかの鉱山か炭鉱の言い間違いかとおもっていたが、違った。学校のことだった。学校がなくなることをヘイコウというのだそうだ。して、学校とはなんぞや? と教えを乞おうとしたのだが、ききそびれてしまった。「今は何も言うな」オーラをひしと感じたからである。
今はその時ではない、ということか。
そういえば、どこだったろうか。
「今年度(2024年度)を最後に、いくつかの学校がなくなり、ひとつになる」という話があった。それを聞いたかの者は、何をか思いついたような表情をしていた。よからぬことではないことを願うばかり……と言いたいところだが、紡ぎだす文章とは裏腹に、意外と小心、もとい思慮分別がある、はずだから大丈夫であろう……。
氷とけ、吹雪やむ?
「これ、タンクジムっていうんだ~」
愛用のカメラを持ってどこへ行ったのかとおもっていたら、目的はこれだったのか。昔の小学校跡近辺である。
「雪とけたら、また行こうかな~」
行くのは自由だが、生きる糧のことも忘れてくれるなよ。
……なるほど、この人間が思いついたこと。それは、これだったのだ。
30年以上も前にヘイコウになった学校のことなんて、誰も気にしないだろう。そこに目をつけたか。
やはり変わりものだ。だが、どんな変わりものでも矜持はあるはずだ。それをとくと見せてもらおうか。お手並み拝見といこう。
「え~と、まえに使った地図どこいったっけ! (*'▽') 」
……(+_+)……