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不幸な嘘つきと寝酒 ~アラサー女の日常~
私は嘘つきである。
最近ずっと心ここにあらずという気持ちでいるが、それがなぜだかわからない。
どうにか心の中にあるだろう目的物を探そうとするのだが、まったく見つからないのだ。
自分の心は今どこに向かっているのだろう。
色々なことが飽和状態になってしまっている気がする。
今の私は何に焦り、何が不安で、何に対して心配事があるのかはっきりわかっておらず、ただ今日も仕事終わって夕飯を食べて、帰宅してお風呂に入って、束の間心の平穏を求めて寝酒を呑む。
「辛い時にお酒を呑むのは、恥ずかしい人間でしょ。お酒なんて楽しい時にだけ呑むものよ。」
そんなことを思っていた20代前半の私。
仕事にやりがいを求め、恋愛では安心や安定を求めた。そして仕事も恋愛も全部がいつかうまくいくと信じていたあの頃。
幸せはすぐそばにあると思っていた。
あんなに夢や希望に満ち溢れた私は、もうどこにもいない。
別に特別に悪いこと、悲運や悲劇や悲恋があったというわけでもない。
私はただバラバラに散らばったパズルのピースを、ひとつひとつ組み合わせてはめていったつもりなのに、いつのまにか気付いた時には、私のパズルは失したピースで穴だらけになっていた。
綺麗に完成するはずだったパズルはもう完成しない。
問題は”飽和状態”なのだ。
今の私の心は、迷子なのだ。
30代。OL。独身。
ものすごく不幸なわけじゃないので、私は自分自身に「幸せな方だ」と嘘をつく。
最近覚えたシングルモルトのウィスキーを寝酒に、この前実家に帰省したときにスマホのカメラで撮った昔の色褪せた写真の画像をみる。
写真のなかの過去の無垢な私の目をみると、申し訳ない気持ちになってしまう。
過去の小さい私に「ごめんね」って言いたくなる。
私は不幸ではない。というのは、私よりも不幸な人がきっといると思うから言ってしまう嘘。
人に「贅沢いいすぎでしょ」って言われてなぜだかわからないけど涙が止まらない。悔しい気持ちになる。
どうしようもなく今の私は幸せではないのだ。
そして、誰にもわかってもらえないのだ。
だから今宵も、私は寝酒を呑む。