T〇der一人目がガチのサイコパスだった件
数あるマッチングアプリ最も悪名高い「T〇der」。
もともとヤリモクが多いイメージがあったので、ほかのアプリはやったことがあったもの、T〇derだけは頑なにインストールしまい、と(マッチングアプリをいろいろ試していた自分がいうのもアレだが)最後の矜持として避けていた。
そんな時、友人から紹介されたweb漫画を読み…
興味に負けてしまった。
言い訳にはなるが、現在は特に恋人やセフレが欲しいわけではないのだが、ライブを見に行く友達や同性の友達が欲しかったというのもある。
同性をいくらいいねしてもほとんどマッチングすることはなかったけど…
はじめて、2日で知り合いに見つかったけど…
そんな禁断のアプリT〇derだが、マッチして一人目のメッセージは
「えちしよ」
二人目のメッセージは
「当方お任せコースのみですが大丈夫でしょうか?」
だった。「当方」って言葉を見たの、バンド募集の掲示板以来だわ。
その他、さわやかで顔がいい男性とマッチしても
「遊び目的ですが大丈夫ですか?」
や、いきなり
「家に行っていい?」
等が多い。それだけでなく、プロフィールにも「絶対イかせます!」といった性的関係が前提であるような文言だらけで、さながら地獄のような様相を呈していた。
いいねはもらえるものの、自分には向いていないだけでなく、理想的な友達はできそうにないということに薄々気づくには3日とかからず、そろそろやめようかなと思っていた頃、一人の男性とマッチしメッセージをもらった。
「ごはん食べにいきません?」
東大卒でコンサル職に就いているという、30代の男性からだった。適当にAとする。
比較的普通そうなプロフィールと写真だったので、会うことへの不安は少なかったものの、給料日前でかつかつだったこともあり、泣く泣く断りのメッセージを送った。家にレトルトもあるし。金曜ロードショーも見たいし。
しかし、Aは
「自分がおごるから、人とご飯食べたいし!」
と食い下がる。延期を提案してみたものの、おごると再度主張するAの誘いを無下に断るのも気が引け、送られてきたおいしそうな中華料理店のURLにつられたのもあり、待ち合わせ場所で落ち合うことになった。
会ってみたAの第一印象はプロフィールの印象とは裏腹に若干チャラかった。
待ち合わせた駅の程近くに家賃10万円で住んでいるというAは自分のことをほとんど明かさず、私の恋愛歴や仕事についてぐいぐい聞いてきた。
また、食事の間、スマホを片手から離さない点もちょっと気になった。
仕事のメールだと言っていたが、私にはLINEのようなチャットボックスが見えた。本当だろうか。
そういう人なんだろうな、でも私はこの人ともうご飯に行くことはないな、と思った。それはさておき、ご飯はおいしかった。しかし、お会計というときに、
問題は起きた。
「クレジットカードはあるでしょ?おごってくれない?」
マジか、と思った。私が呆気にとられていると、Aはやっぱりだめかと悪びれず、合計金額の約半分に当たる1500円を財布から出した。これでいいでしょ、あとは払ってよ、と。
いやいや、どないやねん。
似非関西弁が出てしまうほど驚いた。
出会ったときはコンサルで働いており、家賃が10万と言っていた5歳以上年上のAだが、会社をクビになるのと、首の手術をしなければならないため、お金がなく、このままだと家賃が払えなくなってしまうらしい。
タートルネックセーターを引っ張ってみせた首には確かに肌色のテープがぐるぐると巻いてあった。
しかし、私のほうにも言い分がある。
そもそも食事の誘いはお金がないからという理由で2回断ったが、Aがおごるからというから来たのであって、お金がないなら、誘わなかったらよかったじゃん。そもそも、半額払えるお金さえ私の財布には入っていなかったのだ。
しかし、Aは「そんなやりとりあったっけ?いった覚えないよ」と堂々とシラを切る。財布を見せてもらうと1万円札が3,4枚入っていたので、これで払ったどうですかと提案しても「えー1万円札ってお会計できるの?」と全く撤退しない。
しまいには「このままだと金曜ロードショー見れなくなっちゃうよ」や「そこまでしておごってもらいたいの?」と、じりじり長期戦に持ち込んでくる。
堂々巡りで、30分も押し問答が続いた。
この異常な攻防に、あきれたり怖くなったりして、残りの額を出してしまう人もいると思う。しかし、私は頑として首を振らなかった。私はAが怖かったが、他人から見ると私も相当怖かったと思う。
正直、ご飯に行った会計時の金銭のやり取りでこれほどもめたことはなかった。
収拾がつかなくなりつつあったが、最終的にはお店の閉店時間が先に来てしまい、Aが残りのお会計を支払うことになった。
お店は階段を上った2階にあるのだが、会計後相手から「先に降りていいよ」と言われ先頭を歩いて階段を下りているとき、後ろから落とされるんじゃいないかと本気で怖かった。
駅前の交差点で別れるとき、Aが急に話し始めた。先日、受診した精神科でサイコパスだと診断され、医者から会社を辞めたほうがいいと言われたのが仕事がなくなる原因だという。Aは「上司のちんことか勝手に触っちゃうし」と言っていた。
それを聞いた瞬間、Aの不可解な言動全てに合点が行き全身が総毛立った。何が本当で何が嘘かわからないようなAの話は、サイコパスのなせる業だったのか。
20時の駅前はそこそこ混んでいた。私は帰宅ラッシュの時間でよかった、と思った。もし、人通りが少なかったら一発殴られたり、最悪刺されてもおかしくなかった。
私は、解散した後Aが自分の視界から消えるまで後ろ姿を見守った。そうしないと帰れなかった。駅の近くに住んでいると言っていたAだが、後ろ姿は地下鉄の入り口に消えていった。
私はこみあげてくる妙な不安と闘いながら帰路に着くことになった。
帰宅まで、私はAにつけられているんじゃないかと気が気でなく、自宅の最寄り駅についても一度反対口に出て時間をつぶして帰った。帰り道もプチ男性恐怖症のような恐慌状態で、後ろを歩く男性に異様な恐怖を感じ、玄関のドアを開けるまで気が休まる瞬間はなかった。
久しぶりに命の危険を感じた夜だった。
A家に帰って確認するとAとのトークルームが消えていた。おそらくマッチングが解除?されたということなのだろう。それを確認した所で、やっと本当の意味で安堵することができた。
T〇derはアンインストールした。
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