だめんずトランスジェンダー。
僕はLGBTQのTであるトランスジェンダー。女から男に戸籍を変えて生きているFTM。1980年生まれ 鈴木優希
仕事は地元名古屋で同じFTMを主に集めたオナベバーVenusと系列店としてLGBTQを集めたレズビアンバーWを経営している。
系列店はオープンからまだ一年弱、オナベバーVenusは18年目を迎えた。
経営者と言ってもVenusに僕自身も店に立つ日々で自分自身もプレイヤーであるスタイルはこの歳になっても変わっていない。
自問自答はあるけれど、仕事に対してはいつの時も真剣に向き合ってきた。
ただ、僕が出来ることと言えば、その仕事しかない。
その他の事はめっぽうダメ。とくに恋愛は怖ろしいほどのダメンズだと自覚している。
ぽっかり抜けた青春時代
自己分析すると抜け落ちた思春期の恋愛経験がこじらせているのではないかという結論に辿り着く。
物心ついた時から性別違和というより、鈴木英理子ではあるけれど、ハッキリ男の心だった。だから当たり前に女の子が好きだった。
人はそれを同性愛というけどそうじゃない。
あくまでも男として女の子が好きであり僕にとっては至って普通の異性愛という認識だった。
ただ、世の中的な存在は自分は女であるということはわかっていた。
だからこそ、まわりのみんなと同じでないといけないと思いこんでいたから、こんがらがった。
自分の心にしっかりキツイ蓋をして、家でも学校でも女を演じた。
初恋は幼稚園の先生だった。髪が長くてスタイルが良くて派手顔な先生だった。
小学生、中学生になっても相変わらず、いや、歳を重ねるごとに、より自分の本当の心が男であるなんて大変な真実は、あってはならない事だから悟られてはいけないと漠然とした不安を抱えながら日々を過ごした。友人との話は適当にクラスの良さげな男子を好きな設定にして乗り越えた。
本当に好きな女の子とは友達になることがMAXだった。近くにいられることは嬉しいけど、恋の相談をされることが一番切ない瞬間だった。
好きな子に好きと言えないことはもちろん、まず自分に起きている事態が何事なのかが不安で押しつぶされそうな毎日だった。
悲しみの高校時代
名古屋市立の高校に推薦入学。同じ中学からも何人か同じ高校に通う事になった。順調に始まった高校生活。
この頃になると、また「女」を演じることになることはもう慣れっこで覚悟の上だった。
が、高校生活はこれまでとはかなり違うものだった。
それは、年齢的に恋愛に性的なことが入ってきた事だった。
処女を捨てたとか、誰とやったとかそんな話で持ちきりだった。
ほんとの僕は心は男だから、架空に好きな人を作ることは出来ても、実際にセックスすることは出来ない。一度だけ試してみた事はあったけど、どうしても気持ち悪くて最後まですることが出来なかった。どちらかというと、自分がやりたい事をやられてる不思議?屈辱?劣等感?なんだかよくわからないけど、その時の僕の心はとても複雑で、男の人とセックスをすることが無理だと知らしめられ絶望感を感じた。
エッチできない自分。
この先自分はどうしたらいいのか?
そんなセクシャル的な悩みと並行して、好きな女の子が男とやったという話を聞かされることに僕はどんどん耐えられなくなっていった。
バランスを取れなくなった僕は自棄になった。
タバコ、お酒、家出、、、どれもほんとは好きでもないのにそんなことで紛らすしか出来なかった。
荒れていく娘の姿に家族はきっと失望、憔悴した事だろう。
原因がわからない親。原因を言えない僕。
分かり合えるはずもなく、ついには家庭内暴力と行きつくところまで行きついてしまった。
そこから高校を中退。高校卒業同様の資格だけはという親の意向で働きながら通信高校に通った。
職場でも女という括りから解放されることなく、女扱いされること、「本当の自分をわかって欲しい!」と行動する勇気もない自分に負け続け、何をしてもまともに続かず、職を転々とした。
もちろん恋愛することも出来なかった。
この頃の僕は、
「愛こそすべて」なんて歌詞の歌が流行った時、甘くて切ない恋愛映画を見た時。
そんな当たり前のことも出来ない自分は、この広い世界にたった一人置いていかれたような孤独感でいっぱいだった。
現実からも自分の心からも、どんなに目を逸らしても追いかけてくる。逃げることは出来ない。もう自分自身も限界だった。
初めての彼女
そんな時、僕は初めてリアルな恋愛をする。
通信高校を卒業した僕は、性別を問わない恰好ができるという一点で美容専門学校に入学した。
そこでも女を演じて、一目惚れをした女の子ともこれまで通り「女友達」になった。
専門学校入学を機に一人暮らしをしていた僕の家にその子はよく遊びに来た。そのうち学校からも近かったため、泊っていく事が多くなった。
シングルのパイプベットで一緒に寝る。その子は何とも思っていない様だったけど、僕にとっては「寝返り打ってこっち向いてくれないかなぁ」なんて夜通しドキドキして眠れない。そんな幸せな時間だった。
そこから僕の気持ちは止められず、人生初めての告白。
戸惑っていたけど受け入れてくれたこの子が僕にとって初めての彼女となった。
彼女のおかげで、これまで真っ暗だった僕の人生は見るものすべての色を変えた。こうしてだいぶ遅れて僕の恋愛は始まった。
ここからはもう女を演じる事も無理して男を好きになろうとすることも一切やめた。というか、出来なくなった。
ハッキリと心は「男」であり、見た目も男になりたい!とより強く思う事となる。
欲望のタガが外れた!
そこから幼稚な僕の恋愛が始まった。
これまで我慢に我慢を重ねてきたから、ダムの放流の様にやりたかった欲が全て止まらなくなった。見た目をボーイッシュにして、レズビアンバーやレズビアンイベントにも通った。セクシャリティをオープンにする事で出会いも多くなった。
そして最高の難関であった親にカミングアウトをした事で、よりタガは外れ女の子を家に呼びまくった。
母に「えりちゃんが男でも女でも良いけど、いい加減な恋愛、不埒な恋愛をする人はお母さん嫌いだよ」と悲しげに、そしてあきれたような表情で言われたことを今でも思いだす。
遅れてきた青春遅咲きの狂い咲き。
この時の自分も今思うと痛い奴だった。
これまで性同一性障害で苦しんできたから、なんて言い訳をして自分本位の恋愛を繰り返してきた。
だめんずのこれから
43歳になった今でも自分勝手な恋愛観は変わっていないように思う。
「大丈夫か?自分。」
とあきれることもあるが、自分なりに社会を生きてわかったこともあり今は「カッコイイ大人」になりたいと、目指すところがあるから、これまでよりかはだいぶマシかなとも思うが至ってまだそのレベルだ。
性同一性障害。僕と同じFTMトランスジェンダーでもしっかり人を大切に、家庭を築き良き立派に夫をしている人も沢山居る。
心と体の性別が違う性同一性障害だったことで青春時代が抜け落ちている=恋愛が幼稚であるという方程式はlgbtq全てに当てはまるのではなく、きっとこれは鈴木式である(笑)
元々持って生まれた性格か?
背負ったもののせいか?
それはわからないけど、そんなことは結果どうでもいい。
今、この有限な人生の時間の中。
これからは、恋の相手、人生を共にする相手、愛してくれる相手に思いやりを持って生きていきたい。かっこいいことは出来ないかもしれないけど、人として、だメンズの巻き返しを図る!
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