ベルリンでソフトウェアエンジニアになるために就職活動をしました:就活と面接で意識したこと、労働市場の状況など
注)元記事は、旧ブログに2018年12月に投稿したものです。当時の情報を記載していますので、現在は情報が古くなっている可能性があります。
---
今年の夏にベルリンでコーディングブートキャンプに参加したあと、本格的に就職活動をしました。
就職活動に使ったサイトや就活と面接の際に意識したことなどをまとめたいと思います。
ベルリンのITエンジニアの就職事情、給与と物価の状況
まず、ベルリンにおけるITエンジニアの就職事情ですが、特に経験者は引き続き需要が安定してあるのではないかと思います。体感値ですが。
英語で就業できる環境が多く、ビザのハードルも比較的低めであり(米英と比較して)、若者にとって魅力的なライフスタイルが得られる、ワークライフバランスが取りやすいなどの理由で、ベルリンは世界中のITエンジニアの就労先として人気の場所となっています。
お給料のレベルですが、こちらの記事に最近の調査データがまとめられています。
- Tech salaries 2018: How much do developers earn in Germany?
上のデータ、私の感覚値とも近いです。
3-5年以上の経験がある人で、50K - 65K(日本円で年収650万ー800万)ほどでしょうか。
税金や社会保険料は日本よりも高く、手取りは4割ほど引かれた額になります。
一方で物価は、食費や日用品に関しては東京よりも若干安く、一方でアパートの賃貸料は幅が大きいという感じです。最近は賃貸料が上昇中なので、最近の契約になればなるほど高くなりがちです。
私自身は、東京に住んでいたときよりもアパート代も生活費も3割ほど抑えられています。
ちなみに未経験または経験2年未満ほど、いわゆるジュニアのポジションで就職する場合の給料レベルですが、35K - 45Kほどが一般的です。
未経験で就職できるチャンスはどれほどあるのか?
私はエンジニアの職歴ゼロで今回就職したのですが、私の周りでも経験ゼロから就職できた人は何人もいます。
とはいっても、経験者に比べると圧倒的にそのチャンスは限られています。経験があった方が就活がスムーズにいくのは間違いないです。
実際、ブートキャンプのクラスメートで就職活動でなかなか良い結果が得られない人も少なくありません。
なので、下にも書きますが、未経験から就職を目指す場合には、とにかく数を打つ、ポートフォリオを充実させる、日々技術の習得に努める、人脈づくりに励むといったエキストラの努力が求めらるかと思います。
私が就職活動で行ったこと
さて、実際に私が就職活動として行ったことを書きたいと思います。
3月-9月:技術の勉強、ポートフォリオづくり
就職活動の下準備という感じですが、市場で戦える技術と作品は就活の最強の武器です。
私は1000時間ほど勉強してから就活に臨もうと考え、実際にその通りにしました。
そして、ブートキャンプに参加した際にはゲームを一つ、アプリケーションを二つ開発しました。
実際に面接担当者が私のつくったゲームで遊んでくれ、ゲームについて質問されたこともありますし、これまでのプロジェクトで開発を進めるときに大変だったことやそれをどう乗り越えたか、解決したかというのは面接で比較的よく聞かれる質問です。
また、プログラミングの勉強を進める上で大変だったこと、どういったブレークスルーを体験したかなどを面接担当者にシェアすることもありました。勉強期間中は、その後の就活で自分の考え方や行動の仕方を共有する上での良いエピソードが得られたと思います。
- 参考:プログラミングを1000時間勉強して、ソフトウェアエンジニアになるまでにやったこと
9月-10月:履歴書やオンラインサイト上のプロフィールを充実させる
8-9月はコーディングブートキャンプに参加していたのですが、キャリアサポートも受けられるブートキャンプだったので、この期間中に履歴書(CV)をつくって、ブートキャンプのスタッフにチェックしてもらいました。
ちなみに、CVは Novoresumeで有料のテンプレートを買って(3ヶ月契約で合計25ユーロほどだったかと)、作りました。自分でWordで作ることも可能ですが、Novoresumeでは洗練されたテンプレートを使え、いつでも簡単にオンラインでアップデートして、PDFに落とせるというのが魅力でした。良い時間の節約になったかと思います。
CVはFull-stack開発者用、Frontend開発者用の二つを作りました。
そのほか、プロフィールを充実させた/登録したサイトは以下の通りです。
- LinkedIn : もともと長らく使っていましたが、プロフィールの内容はしばらく放置していたので、就活を始めるにあたって、肩書きを変え、過去の経験内容を整理し、分かりやすく書き直しました。
- AngelList : AngelListは就活にとても使えます。ベルリンでも多くのITスタートアップが求人情報を出しています。私もプロフィールを作って、求職モードをオンにしました。
- Honeypot : Honeypotもベルリンの多くのスタートアップが使っている求人プラットフォームです。Honeypotはリバース採用となっていて、コーディングテストに受かったユーザーが登録したあと、求職者側からは一切登録企業側の情報が見られず、登録企業が求職者に対してアプローチする仕組みとなっています。逆に本当に自分に興味をもってくれた企業からコンタクトをいただける確率が増えるので、マッチングの確率も高まります。
- MoBerries:こちらも大手の採用プラットフォーム。求職者と企業側の双方からコンタクトができるマッチングプラットフォームとなっています。
私が主に使ったサイトは上記の4つですが、talent.io(https://www.talent.io/)もメジャーなサイトです。私は今回、talent.ioはジュニアのポジションがないということで、登録できませんでした。
10月:就活の戦略を立てる
ブートキャンプを終えて、本格的に就活を始めるにあたって、最初に戦略を練りました。
ブートキャンプはフルスタックエンジニアに必要なスキルを学べるようにデザインされていましたが、正直バックエンドがとても難しく、というか期間が短すぎて少々消化不良気味でした。むしろ、Reactはよりすんなりと理解でき、また最初に苦戦したあとはとても好きになれたフレームワークだったので、Reactをもっと極められるようなフロントエンドのポジションに狙いを定めて就活をしようと考えました。
また、ブートキャンプが終わった直後にベルリンにいる現役の日本人エンジニアの方々からもフィードバックを得られる機会があり、そのときにも、Reduxやテストで使うJestなどのReact関連の技術を勉強しつつ、フロントエンドに絞って就活した方がいいんじゃないかというアドバイスをいただきました。
なので、主にフロントエンドに絞って、Reduxなどの関連技術を学びながら就活をしていこうという戦略を立てました。
※ 結果的にバックエンドエンジニアとして就職することになり、この戦略の方向とはまったく違う結果となったのですが、このときに戦略を立てて方向性をつけられたこと自体は良かったのかなと思っています。
10月-11月:応募する
さて、CVを準備し、メジャーな就活プラットフォームに登録し、戦略を立て、ようやく実際に応募を始めます。
私がやっていたのはこんなことです。
- LinkedIn: 求人情報のページから気になる会社にワンクリックで応募したり、各求人ページから応募をしました。
- MoBerries, AngelList: 気になる会社に応募。
あとは気になるメジャーなスタートアップには、直接サイトから応募しました。
HoneyPotはリバース採用なので、ひたすら企業側からのコンタクトを待つのみでした。
実際、手応えはどんな感じだったかというと・・・
LinkedInのワンクリック応募(文字通り、ボタンをワンクリックして応募できる機能)はまったく手応えなし。全然反応がありませんでした。
AngelListからは5社ほど応募し、1社コーディングチャレンジまで進みました。
MoBerriesは表示される求人は多かったのですが、それに対してワンクリックで応募しても、反応はほとんどありませんでした。
Honeypotは、3週間のアクティベート期間中、合計3社からコンタクトがあり、1社はコーディングチャレンジまで進み、1社とはスカイプ面接まで。
また、どこからともなく、ある日私の携帯にかかってきたリクルーターからの電話がきっかけで、その後の面接やテストに進んでいったこともありました。
直接、企業のサイトから応募したのは3-5社だったかと思いますが、1社からは面接への招待がありましたが、すでに内定が出ていたのでお断りしました。
私の経験では、使い心地の良かったサイトは honeypot と AngelListです。
特にhoneypotは周囲のエンジニアからも評判が高いので、ベルリンのスタートアップを目指して就活する場合には、絶対に登録した方が良いかと思います。
11月:コーディングチャレンジ、面接を受ける
さて、応募したあと、ほんとにわずかな数ですが、面接に招待され、コーディングのテストを受ける機会をいただくようになりました。
私や周囲の経験値だと、多くの場合、内定を得るまでのステップは大体3-4回ほどのようでした。
標準的なステップは、1:最初に人事か現場のリードと電話 or スカイプ面接 > 2:コーディングテスト またはコーディングチャレンジ(もしくはその両方) > 3:現場リードや人事と技術&人物面接 > 4:役員または社長と最終面接
という感じです。
コーディングテストは codewarsに出てくるような問題を3問程度受けたことがありました。
コーディングチャレンジは、企業側からのお題に沿って、簡単なアプリケーションを作って提出するというものです。
あとは対面で、プログラミングに関する質問を出されて、真っ白な紙にコードを書いて説明するといったこともありました。
Javascriptの面接でよく聞かれる質問は、YouTubeやオンライン上でたくさん共有されているので、そういったものを頼りに準備をしておきました。
面接では必ず自己紹介をすることになるので、1-2分程度で完結にこれまでの経歴などを言えるように練習しました。
あと、企業のプロダクトについて理解を深めておくことは必須です。なぜこの業界、このプロダクトに興味があるのかをきちんと言えるようにしておきました。
もう一つ、面接の際に意識したことは、事前に面接の際に質問したいことをリストアップしておくこと。「質問はある?」というのは必ず聞かれることですが、質問は必ずした方がいいです。質問しない=関心がないととられてしまうので。できるだけ相手との距離を縮められるような質問(例:どうしてこの会社に入ったんですか? この会社で働いてこれまでどうですか?)や、自分のやる気を示せる質問(例:入社までに学んでおいた方が良いスキルはなんですか)を必ずするようにしました。
英語でのインタビューのコツというのは、YouTubeで探せば山ほどでてきますので、そういうのを見て準備しておきました。
内定、ビザの切り替え、就職
就活を始めてから1ヶ月、運良く早い段階で今の就職先から内定をいただき、他に面接が進んでいた企業と比べてもそこが第一志望だと思えたので、オファーを受ける旨を返信し、他の企業にもその旨連絡し、就職活動は終了となりました。
その後、入社先の企業からもらった契約書にサインをして、契約書などをもって外国人局へ。それまでは、私はフリーランスビザでした。ソフトウェアエンジニア職で、ある一定の給与水準を満たしているとブルーカードというビザがもらえます。
私もブルーカードに切り替えたいと、書類を準備していったのですが、予約をとっていた外国人局がブルーカードの発行を担当していないということで(ベルリンには外国人局が二つあり、ブルーカードを発行しているのはそのうちの一つのみです)、新たに予約をとるように言われました。ですが、通常外国人局の予約は早くて1ヶ月、長いと2-3ヶ月先になってしまいます。とりあえず、早く就労開始したいので、一旦就労ビザを出してくれませんかと言ってみたところ、割とあっさりとその場で既存のビザを就労ビザに切り替えてくれたのでした(しかも無料で)。
と、私のケースはラッキーだったのかもしれませんが、周囲の日本人を見ても、ITエンジニア職のオファーを得て、ビザの切り替えができなかった、ビザの取得で問題があったというケースを聞いたことはないので(かかる時間が長くなることはあっても)、多くの場合ビザはなんとかなるのかと思います。
意識していたこと
私は就活開始から1ヶ月と、運良く予想していたよりも早く就職活動を終えることができましたが、実際は短くても2-3ヶ月、長ければ半年近く就職活動に時間を要するかもしれないと考えていましたし、その覚悟もしていました。
私が就活をするにあたって、精神的な支えとなっていたブログ記事があります。こちらの『How to Break Into the Tech Industry—a Guide to Job Hunting and Tech Interviews』です。
彼は、全ての人に内定を得るまでに必要な回数 n が与えられているといいます。その n に達するまで、ただひたすら応募し、面接を受けていくしかないのです。そして、面接は仕事を得ることを期待して受けるな、経験を重ねるために受けろといいます。
私はこの考え方に共感し、ただ数を重ねる、経験を重ねていくことを意識しました。
今の就職先の面接も、当初は受かるとまったく思っていなくて、経験を重ねるために受けたようなものでした(もちろん、面接の準備もしましたが)。結果、肩の力が抜けて、面接でも本来の力が発揮されたのかもしれません。
もし、3ヶ月就活をしても結果がでなければ、インターンとして始めることも検討していました。
結果的に1年後ぐらいに、正規のエンジニア職につけていれば良いと考えていました。
長期的なキャリアを見据えているのであれば、最初は少しステップアップに時間を要しても仕方がないかと思いますし、今もそういう気持ちでいます。
以上、参考になりましたら幸いです!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?