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イタリアで1ヶ月「ワーケーション」をやってみて感じたこと

イタリアの食や自然が大好きなドイツ人パートナーと、なんとなく「1ヶ月ぐらいイタリアに住みながら働いてみたいよねえー」と話したのが昨年の夏の終わり、9月始めごろだったと思う。わたしも彼もその年の夏は別々にイタリアでの休暇を楽しんで、その魅力に取りつかれていたのでそんなアイデアが自然と口に出た。ちなみにわたしはソフトウェア開発、彼もデータ関連の仕事をしていて、リモートワークに制限のない会社に勤めているので、ドイツ国外から1ヶ月ほど仕事をするのは問題ない。
「イタリアに滞在するなら、ベルリンが寒くて暗い2月頃がいいよね」と、時期についてもすぐに合意した。クリスマス、年末年始という大きなイベントが終わって、毎年1月2月のベルリンはただただ春の訪れを寒さの中で待つ時期、というのがわたしの中の位置付けでそれは彼も同じだった。

イタリアでの滞在先もすぐに決まった。ローマやミラノは大都市すぎてせわしなさそう、ナポリはカオスでうるさそう、でもある程度の都市のインフラがある町の方が初めての中期滞在には便利だ、あとベルリンにはない海の近くがいい、という理由で選ばれたのがジェノヴァだった。

こうして昨年秋にはairbnbでアパートを予約。その後、欧州ではオミクロン株が大流行して、イタリアでも今年の1月は日の感染者数が15万人ぐらいまで達し、入国規制がどうなるのかとヒヤヒヤしながら状況を見守っていたものの、ブースターワクチンの接種を済ませていたわたし達は、現地の滞在先登録など簡易な手続きだけを済ませて、あっけないほど簡単にイタリアに入ってジェノヴァでの生活をスタートさせた。

今回の記事では、1ヶ月のイタリアでのワーケーション体験を通じて感じたその面白さやアパートを選ぶ際に注意したいこと、仕事の生産性への影響など諸々の感想を書きたいと思います。

滞在初日、アパートから歩いて10分のビーチへ

Airbnbで予約したアパートで生活ーー予約時に見逃しがちな3つのこと

1ヶ月滞在するアパートはairbnbで予約した。多くのアパートは、1ヶ月以上の予約で割引を提供していて、今回予約したアパートも清掃費などの諸費用も込みで一月900ユーロとその立地と広さの割にはお手頃な物件だった。海まで歩いて10分ほどで、カフェやスーパー、レストランが周囲にたくさんあり、広さは50平米ほど。もちろん家具付きで、キッチン設備や洗濯機などの長期滞在に必要なものは揃っていて、まだ肌寒いジェノヴァで暖房がしっかり効いていたのもありがたかった。

とはいえ、完璧な物件というのはそうそうあるものでもない。その部屋は交通量の多い通りに面していたので、特に早朝と夕方の車やバイクの騒音がかなり大きく部屋に響き、特に最初はかなりストレスになった。耳栓をするなどしてやり過ごすうちに徐々に慣れていったものの、この騒音の大きさは滞在中ずっと多かれ少なかれ悩まされた。

今回、ジェノヴァ以外にナポリとイスキア島でも数日airbnbの物件に滞在して学んだことは、写真や設備情報だけを頼りに物件を予約する際に見逃しがちなのが、この騒音レベルとインターネット速度、部屋の温度だと思う。特に都市の場合は、主要な道路に面している場合は騒音が大きいケースが多いので要注意。あと、リモートワークをする場合にはネットの速度と安定は必須なので、その点も確認したい。また、イタリアといえど冬の夜はかなり冷え込むので、暖房もしっかりあることは重要で、滞在の質を大きく左右することを今回学んだ。

イタリアでのワーケーションの面白さ① 現地食材で自炊

今回の滞在で特に楽しかったのは、現地のスーパーで食材を買って、様々な料理を作ってローカルな味を堪能できたことだ。国境を越えるだけでこんなに違うものかと衝撃を受けるほど、スーパーに並べられている商品はドイツと違った。カーボロネロ(黒キャベツ)やロマネスコ、アーティチョークなどのイタリア産の野菜、アサリやイワシが並ぶ魚介コーナー、何十種類とあるチーズやハム、そしてイタリアワイン。内陸のベルリンのスーパーとは大違いのラインナップを見て大興奮したわたしたちは、現地の食材でたくさん自炊した。

イタリアで自炊した料理の一部

イタリアでのワーケーションの面白さ② 週末のハイキング

次に楽しかったのは、週末のハイキング。ジェノヴァがあるイタリア北西のリグーリア州は、世界的にも有名なチンクエテッレをはじめとして、海と山の両方を同時に楽しめる素晴らしいハイキングコースがいくつもある。
ということを、現地に行くまでほとんど知らなかったのだけど、平日夜に週末のハイキングコースをリサーチして、わたしたちは毎週末ハイキングに出かけた。イタリア産リゾット米でツナ缶を具にしたおにぎりと卵焼きを持って。

チンクエテッレからレヴァントに向かうハイクコース

有名なチンクエテッレももちろん素晴らしかったのだけど、それ以外にも素晴らしいハイキングコースがあることも現地に行って知った。ジェノヴァからチンクエテッレは電車で1時間ほど。その中間にあるサン・フルットゥオーゾのハイキングコースもおすすめなのだけど、そこも気軽に行ける。

かなり平たいベルリン・ブランデンブルグで過ごしてきたわたしは、丘を登り降りして高い場所から景色を眺めるのがこんなに気持ち良く楽しいことだったのを長い間忘れていたようだ。言葉を失うほどに美しい景色や自然に圧倒される瞬間がなんどもあった。週末、こんな風に気軽に素晴らしい自然を体験できるのは最高だった。

ジェノヴァ郊外Nerviの岩場

イタリアでのワーケーションの面白さ③ 良い気候と自然に癒される

今回のワーケーションを思い立った大きな理由の一つが「ベルリンよりも良い天候の場所で過ごしたい」だったのだけど、期待以上に太陽の日差しを温かい気候には癒された。イタリア北西部にあるジェノヴァでも、ベルリンより平均して5ー10度は温かく、滞在中は最高気温は20度弱、最低気温は5ー10度だった。晴天の日が多く、太陽の光にあたるだけでこんなに気分が穏やかになるものなのかと思った。仕事のあと、澄んだ空の中、海に沈む夕日を眺めながら散歩する時間には本当に癒された。

仕事の後、海辺でアペロ

イタリアでのワーケーションの面白さ④ 現地文化が身近になる

ある国に中長期滞在すると、数日間の短期滞在よりもずっと現地文化を身近に感じられるようになると思う。たとえば、今回の滞在時にはイタリアの国民的な音楽祭であるサンレモ音楽祭(開催地のサンレモはジェノヴァと同じリグーリア州にある)が開催されて、公共放送のRAI1で視聴することができた。イタリア人作曲家によるイタリア語の歌詞の歌謡曲を老若男女の歌手が歌うのを見るのが楽しく、またそこで知って気に入った曲が、その後もずっと街角で流れていたのでイタリアのポップソングが突然身近なものになった。

自炊を通じて現地の食材も身近になったし、週末のハイキングで何度もすれ違ったボーイスカウト集団、洋服や靴を売る個人商店の多さから感じたイタリア人のモードへのこだわりなど、少しずつ知った現地文化がいくつかあった。

毎日の現地体験を通じて、少しずつ現地文化が身近になってだんだんと関心の幅が広がっていったり、理解できる単語が徐々に増えていく過程をゆっくり味わえるのは中長期滞在ならではの魅力だと思う。

最初は苦手だった「甘い朝食」も結構好きになった

ワーケーションによる仕事の生産性の影響は?

主にワーケーションの魅力をつづってきたけど、実際仕事への影響はないのかというのは多くの人が気になる部分だと思うし、わたしもイタリアへ行く前に一番不安だったのはその点だった。いつもと違うネット環境、物理的環境がどう仕事に影響するのか、パフォーマンスが下がらないかが不安だった。

結論から言えば、今回の滞在に関していえば、生産性は特にベルリンで仕事をするのと変わらなかったと思う。マイナスとプラスの点をそれぞれ挙げると、マイナスだったのはモニターがなかったこと。職場から支給されている13インチのMacbookだけで仕事を進める自信がなかったので、個人用の15インチも持っていき、それでなんとか事足りた。照明や椅子、机などなど、仕事環境で使う物理的なものがどれだけ重要かは個人差が大きいと思うけど、わたしの場合はそれほど大きな影響はなかった。そのほか、普段よりもマイナスだったのはネット速度で、一人だったらおそらく問題なかったものの、二人同時にズームに接続すると動画画像が荒くなることがあった。

プラスの点は、普段よりも食が充実し、良い気候の中で過ごせたことで前向きで楽しい気分になれたこと。気分が良いと仕事も前向きに進められるので、その点は生産性に貢献してくれたと思う。

ざっくりと振り返るとそんな感じで、仕事の生産性という点ではプラスマイナスゼロで変わらずといったところだ。

今後またワーケーションをする機会があれば、事前にしっかりネット環境、騒音レベルは最低限確認したいと思う。


イタリアへ行く前はなにかと不安だったけど、実際にやってみたらとても楽しく充実した日々となった今回のイタリアワーケーション体験でした。

それにしても、改めてイタリアは見所の宝庫だと実感。特に今回のハイキング体験が最高だったので、またどこか良いハイキングコースの近くでワーケーションできないかと、ベルリンに戻ったわたしは早速また地図とハイキングガイドと睨めっこしてる。

イタリア語の勉強も引き続き頑張ってる。


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