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義母の嬉しいひと言。

1月のある日曜日の夜、夫が横須賀の実家から帰宅した。土曜の夜の飲み会の後、実家で一泊してきたのだ。

夫が
「いろいろ持たされた」
と言いつつ並べたお土産を見てびっくり。

温めて食べられるおでん8袋。
レトルトハンバーグ4つ。
真空パックのいわしや鯛数袋。
昆布の佃煮数袋。
からし入りのきゅうりの漬物。
ドレッシング1本。
なぜか北海道の駄菓子「きびだんボ(きびだんごではない)」。
土曜日に義母と義弟が行った伊豆で買ってくれた魚屋さんの練り物と鯵の干物。
そして、これまた伊豆で買ってくれたらしいえび煎餅ひと袋。

びっくりした。
持って帰ってきてくれた夫も重かったろう。
(ありがとう、夫。)

わたしが料理をすることは義母も知っているのだが、
「あっためて食べられると奥さんも楽でしょ」
と言って持たせてくれたそうだ。

母心だなあ。
わたしの母が元気だった時、小包を送ってくれる時は、お菓子や果物ひとつ、大根半分とか、とにかくありとあらゆるものをひとつひとつ丁寧に包んで、箱ぎっしりに詰め込んでくれたのを思い出した。

夫が帰宅報告の電話をする時、わたしもかわってもらい、義母にお礼を伝えた。

「お母さん、お土産たくさん、ありがとうございます。嬉しいです〜」
「いえいえ、もらってもらえるのが嬉しいのよ」

そして、昨年の夫の手術からまもなく1年になることも話した。

「さっきご飯を食べながら、2人でそんな話をしていたんです。」
「うん、私もさっき思い出してたの。」
「1年たって、こんなに元気になってくれて良かったです。」
「ほんとねぇ。あなたがいてくれて良かったわ〜。
これからもよろしくお願いしますね。」
「こちらこそです〜」

いろいろ思い出した。

去年の1月は、とにかく夫の手術が無事に終わってくれることを祈っていた。
当時はまだ同居も入籍もしていなかったので、手術が終わっても病院側からわたしには連絡が来ることはなく、麻酔が覚めた後に夫自身が連絡してくれるのを待つしかなかった。

「終わりました。
生きてます。」
の2行のLINEメッセージが届いた時には、心底ほっとしたものだ。

あれから1年が過ぎ、彼の体は少しずつ回復し、わたしたちは同居を始め、入籍した。

今は夫は朝晩はわたしが用意した食事を食べているから、彼の身体の大半はわたしが作ったご飯でできている。
それを思うと、一人暮らししていた時のような手を抜き切った食事で済ますことはできないし、少しでも夫の身体に良い食事を作ることがわたしの大切な仕事の一つだと思っている。

だから、月に一度の夫の検診日は、彼の数値がとても気になる。
いわばわたしが作る食事の評価の日のようなものだ。


夫の母は、夫の手術の後に一人で暮らす息子が心配になったようで、
「お前には誰かいないのか」
と聞き、そこで初めてわたしのことを知ってとても喜んでくれたそうで、入籍することも喜んでくれた。

わたしは昨年母を亡くしたけれど、夫と入籍したことで、義母と義弟という家族が増えた。

その義母に
「あなたがいてくれて良かった」
と言われて、こちらの方がありがたくなった。

義母にそんなふうに思ってもらって、良かった。
夫と助け合って暮らせていて良かった。
わたしはこの家族の一員にならせてもらえて良かった。

義母のひと言に心が温かくなった夜だった。

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櫻木 由紀 Yuki Sakuragi
カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。