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ナチスから逃れて英国へ〜ユダヤ人の子供達を救った「子供輸送」

1997年の夏、
スコットランドのエジンバラに
約1週間滞在しました。
 
いくつかはしごした美術館・博物館の中に
「子供史博物館(Museum of Childhood)」
がありました。

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(画像はwikipediaよりお借りしています)  

ピーターラビットのお人形や
1970年代に普及した子供用自転車
(ローリー・チョッパー)
といったものから、
日本や中国のお人形まで様々なおもちゃが並んでいました。

でも、それだけではなく、
おもちゃを買う余裕のなかった家庭で
靴底と家にあった余り布で作ったお人形なども
展示されていたのです。

また、今回、改めて調べてみると、
この博物館の収蔵品の中に
「キンダートランスポート(子供輸送)・ベア」
というテディベアがあったのです。

「キンダートランスポート」って?
と調べてみると、それは
英国が1938–1939年の間に行った
約1万のユダヤ人の子どもたちを
ナチス・ドイツの迫害から逃して
英国に疎開させる秘密作戦でした。
 
1938年以降、
ナチスドイツによるユダヤ人迫害が
激しくなったため
「せめて子供だけは救いたい」
とこの作戦が秘密裏に行われることに
なったのです。
 
子供たちは家族と離れて鞄ひとつを持ち、
夜行列車でオランダへ移動し、
そこからフェリーで英国へ、
そして鉄道でロンドンの
リバプール・ストリート駅へやってきたのです。
 
そして、この駅から英国各地の
ボランティアの里親家庭に
引き取られていったのでした。 
 
博物館にあった
「キンダートランスポート・ベア」は
1939年の最後のキンダートランスポートで
ウィーンから英国に旅をしてきた
小さなシュタイフ社のテディベア。
 
つまり、子供達の一人が
限られた手荷物と共にカバンに詰めて
英国まで連れてきた
大好きなおもちゃだったのでしょう。
 
キンダートランスポートで
逃れてきた子供たちの中には
のちに他国に逃げ延びた親と再会して、
また一緒に暮らすことができた子も
いたそうです。
 
そして、2006年9月に
ロンドンのリバプール・ストリート駅の前に
この駅に到着した10000人のユダヤ人の子供達を記念して
「Kinder transport – The Arrival(子供輸送—到着—) 」
という銅像が建てられたとのこと。

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 (画像はWikipediaよりお借りしています) 

博物館に保存されている小さなテディベアも
そのような歴史とともに生きてきたのですよね。
 
その後、この銅像の前で
実際に子供輸送で生き延びた子供達
が集まってイベントが行われたそうです。
(仮に当時十歳でも
70代以上になっていたのでは)
 
1997年にあの博物館に行ったときは
そこまでのことを知らずにいました。
 
子供たちもおもちゃたちも
そんな悲しい旅をしなくても良いように、
世界が平和でありますように、
と祈らずにはいられませんでした。
 
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
 
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櫻木 由紀 Yuki Sakuragi
カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。