アリスの映画作品 「映画はアリスから始まった BE NATURAL」
前回に続き、ドキュメンタリー映画
「映画はアリスから始まった BE NATURAL」(2018年米国映画、パメラ・B・グリーン監督)
のお話です。
世界初の女性映画監督となったアリス・ギイは1000本を超える映画を作ったと言われています。
でも、残念なことに、フィルムが残っていない作品が多いのです。
このドキュメンタリー映画の中でグリーン監督はアリス・ギイの子孫やゆかりのあった人、過去の映画のフィルムを保管していそうなところに連絡を取っていきます。
(フィルムが残っていてもそのままでは見ることができず、専門業者に頼んで復活させたものも。)
そうして探し出したフィルムの中にはアリス本人らしき人が写っているものもありました。
監督は専門家に依頼し、もともと残っていた写真のアリスの顔の特徴とそのフィルムの女性の顔の主な特徴(特徴的な瞼や笑った時の頬骨の上がり方など)が一致することが確認され、そこに写っている生き生きした表情の女性が若かりし頃のアリスだと確定されたのです。
わたしが短編映画の上映会で見たものの中には、前回紹介した「失礼な質問」以外にも様々なタイプの作品がありました。
(これはアリスの監督作品のタイトルを並べたもの。パンフの写真より)
「催眠術師の家で」という作品では、催眠術師の術でトランス状態になった女性が下着姿に。
そこに「怪しい」と憲兵が入ってくると、催眠術師はもう一度催眠術をかけて、
同じ姿に。
そのうちに憲兵と女性の服が入れ替わるようなトリックもあり、衣装の取り換えや役の混ざり合いなど、アナーキーなもの。
「世紀末の外科医」はタイトル通り、外科医が麻酔をかけて外科手術をして、かなり雑に手足を切断します。
切断されている患者は最初は人間なのですが、手術の途中でいかにも人形らしい
人形に。
でも、外科医がかなり乱暴にばっさりと手足を切断するので、人形とわかっていてもドキッとします。
医者が立ち去った後、助手らしき2人が「スペア」と書かれた容器から
手足を取り出して患者に接着剤でくっつけると患者が動き出します。
滑稽さ、残酷さ、そして恐ろしさもあり、なんとも不思議な雰囲気です。
(初めて映画を見てこんな場面を見た人はさぞかしびっくりしたことでしょうね)
「オペラ通り」はタイトル通り、逆回転でオペラ通りを歩く人や馬車を撮影しているので、全員が後ろに進むだけのものなのですが、「逆回転」も、当時は最先端の技術だったのです。
そして、びっくりしたのが「マダムの欲望」(1906年)。
妊婦である女性が子供を乗せた乳母車を押す夫と散歩をしているのですが、この女性、なんとも自分の欲望に正直なのです。
散歩の途中、棒キャンデーをなめている女の子を見つけると、なんと女の子の手元からそれを取り上げて嬉しそうになめてしまいます。
カフェの屋外席でアブサンを飲んでいる紳士を見かけると、紳士が新聞?に没頭しているすきにそのグラスをとって嬉しそうにのみ、全く悪びれることもありません。
(妊婦さんがアブサンを飲むこと自体、体に良くないと思うのですが・・・)
最後の最後までこんな調子で、とんでもないといえばとんでもないのですが、
彼女が人から何かを取り上げて味わう時、とても嬉しそうな表情でそれを楽しむ表情が映画史上初のクローズアップで映し出されるのがとても印象的です。
このクローズアップの場面だけはドキュメンタリー映画の方でも一瞬映るのですが、今回この作品の全体(といっても短いのですが)を見られて良かったです。
当時のフランスでも「欲望を抑えない女性」はまだまだ少数派だったそうで
「食欲を抑えられない」ことは大人の女性としては当時なら
「嗜みのない人」と眉をひそめられたかもしれません。
「女性も食欲など欲望を持っていること」を率直に取り上げているのがすごい、
と思いました。
(「おそらく史上初めて女性の欲望を描いた映画」と言われているそうです。)
さらにびっくりしたのが、「フェミニズムの極致」という作品。
かなり斬新なのですが、長くなりましたので、続きはまた次回に。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
*先日、吉祥寺の月窓寺(げっそうじ)では夏祭りが行われていました。
月窓寺の白衣観音様が333周年記念でご開帳されていたので、お参りさせていただきました