再会と新たな出会いの喜び「テート美術館展」
7月中旬から10月2日まで、東京・六本木の国立新美術館で「テート美術館展 光−ターナー、印象派から現代へ」が開催されています。
英国滞在中に何度か足を運んだテート美術館には好きな作品もあり、ぜひ行きたいと思っていました。
でもこの美術展、最近の大規模の美術展には珍しく、土日も日時指定がないのです。
(コロナ禍になってから大規模な人気の美術展はチケット購入時に日時指定をすることが多く、事前指定はちょっと面倒ではあるけれど、ゆっくり展示を見られるので随分助かっています。)
夏休み時期のテート美術館展、混まないわけがありません。
わたしは夏休み期間が終わるのを待って、9月に入ってから見に行ったのですが、コロナ感染してしまった今なら諦めざるをえなかったので、行ける時に行っておけて本当に良かったです。
わたしが行った日は入場するまで10分程度待つのみでしたが、会場内はやはり観客が多く、予想以上に若い方が多い印象でした。
(なお、掲載している写真は展覧会ちらしの写真、撮影が許可されている作品の写真です。)
今回の展覧会は「光」がテーマ。
ターナーやコンスタブルなどの英国を代表する画家の作品だけでなく、ドイツの現代画家ゲルハルト・リヒターの作品や光を使った現代アートである大型インスタレーション(空間芸術作品)もあり、伝統的な絵画作品から現代アートまで様々な作品を見ることができました。
今回、ターナーの「海に沈む夕日」、
コンスタブル の「ハリッジ灯台」、
ホイッスラーの「ペールオレンジと緑の黄昏−バルパライソ」など、楽しみにしていた作品はいくつかありましたが、中でも楽しみにしていたのがジョン・エヴァレット・ミレイの「露に濡れたハリエニシダ」でした。
(彼の作品でテート所蔵の「オフィーリア」にも再会したかったのですが、残念ながら今回は出展されていませんでした)
以前見たミレイ展の最後の方に展示されていたこの作品は1889–90年に描かれたもので、1896年に67歳で亡くなった彼の晩年の作品としてとても印象に残っていたのです。
写真で見ても美しい作品ですが、間近に見ると繊細で、本当にきらきらと輝いているような、
「この世界はなんて美しいんだろう」
と思えるような作品で、晩年の彼がこの作品を描いたということが、なんだがとても幸福なことに感じられました。
再会したこの絵はやはりじんわりと優しい光を放っていました。
その他に再会が嬉しかったのは、英国のウィリアム・ローゼンスタインの「母と子」。
バラ色の頰の娘を愛おしげに膝の上に抱き上げた母にあたたかな光が差してなんとも心和む作品で、今回も自然と笑顔に。
逆に、予想外に目を奪われた作品もありました。
ジュリアン・オピーは1958年ロンドン生まれの英国の現代アーティストで、UNIQLOでコラボ商品を見かけたりしていたので、伝統的な絵画作品のイメージがなかったのです。
今回展示されていた「トラック、鳥、風」(2000年)を見た時、静かな闇に浮かぶ月の姿はしんとした月夜の井の頭公園も連想させ、しみじみ
「いい絵だなあ、落ち着くなあ」と感じました。
でも、実はこの作品、彼が撮影した自然や都会の風景をデジタル加工したものとのこと。
意外でした。
そして、いちばん心惹かれたのは英国のジョン・ブレットの
「ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡」。
雲間から差す光の神々しさ、海に光が届いたその水面の輝き、驚くほど光の表現が豊かで繊細なのです。
しばらく眺めても立ち去りがたい作品でした。
絵葉書も買って見たものの、わかってはいたけれど、やはりあの原画の美しさには及ぶはずもないのでした。
現代アートの作品はわたしには難解でしたが、展示の仕方も面白く、興味深く拝見しました。
東京での展示は10月2日で終わり、その後関西に巡回するので、関東地方で興味のある方はお早めにどうぞ。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*コロナ感染したことについて、たくさんの方からお見舞いのコメントやメッセージをいただきました。
とてもありがたく、嬉しいです。
気温も下がって参りましたので、皆様もくれぐれもご自愛くださいませ。