人間の本質は『善』なのだと信じたい 映画「アンネ・フランクと旅する日記」
今年2022年は、「アンネの日記」出版75周年
の記念の年なのだそうです。
この週末、「アンネの日記」を原案とした
アニメ映画「アンネ・フランクと旅する日記」
が封切りになり、
吉祥寺の映画館に見に行って来ました。
「アンネの日記」を読んだ方はご存知の通り、
アンネは日記を空想の友達である「キティー」
に手紙を書くように書いていました。
この映画では、そのキティーが
現在のアムステルダムに
アンネが想像した少女の姿で
日記から抜け出してくるのです。
キティーは、
アンネがどうなったかを知りません。
アンネの日記には、
アンネの最期は書かれていないからです。
キティーは、アンネを探し始めます。
(ですから、この映画の原題は
「Where is Anne Frank?
(アンネ・フランクはどこ?)」
なのです)
そして、わたしたちはキティーと一緒に
アンネが生きた当時の
アムステルダムのユダヤ人の生活や
アンネの生活をたどっていくのです。
予想外の発想で始まるこの映画では、
現在のアムステルダムで
キティーがアクションヒーローばりの身体能力を見せたりするなど、
賛否両論ありそうな部分もありますが、
だからこそ子供達もどんどん引き込まれそう。
監督はこの作品をアニメで作ることに
こだわっていらしたそうですが、
アニメだからこその美しい表現や、
アニメで描くからこそこの内容を
今この時代に多くの子供達に
見てもらうこともできるのだろうと納得。
そしてこの映画ではアンネたち一家が
ナチスに捕らえられ、
アンネが亡くなるまでの7ヶ月も
描かれていました。
収容所で起こったことはあまりに残酷なので
アンネについての作品でも
あえて触れないものが多い中、
監督はこの作品を引き受ける時の条件として、
その最期の7ヶ月を描くことをあげたのだとか。
監督のご両親は
アンネたちと同じ週にアウシュビッツに到着し
生還することができた方達なのだそうです。
もちろん、子供達が見ることのできる描き方ではあるのですが、
強制収容所に向かう列車に乗ったアンネが
「列車に乗って嬉しかった、
隠れ家での2年に及ぶ潜伏生活のあと、
初めて太陽の光を浴びたから」
と感じるものの、やがてこの旅路が、
自由に続いているものではないと悟った、
という言葉からも、
打ちひしがれそうな恐怖を感じました。
そして、過去のことだけではなく、
現在のアムステルダムの様子も描かれていて、
オリジナルの「アンネの日記」が保管されている
アムステルダムの「アンネ・フランクの家」に
ひっきりなしに観光客が入れ替わり立ち替わり
やってくる様子も描かれています。
その中には、
明らかに「アンネの日記」を読まずに
やって来たらしい観光客もいて、
なんのためにここに見学にきているのか、
と思いますが、これも現実なのでしょう。
また、監督は
現在の紛争地域に住んでいる子どもたちを
描くことにもこだわり、
自分の村を侵略され、
他国に逃げても入国を認められず、
ようやくたどり着いたアムステルダムでも
滞在を認められない難民の姿も描いています。
この映画のエンドロールで
「紛争地帯から逃げざるを得なかった
子どもたちが2020年にも1700万人いる」
とあり、今回のウクライナ侵攻の前に
すでにそんなに・・・と絶句。
アンネが願った平和や自由は
いまだに実現されてはおらず、
多くの人が苦しんでいる現実を
突きつけられました。
それでも、
「これほど人間の邪悪な面を見てきても、
今なお心の底で私は信じてる。
人間の本質は“善”なのだと」
というアンネの言葉を、信じたい。
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
*映画館のポスター以外の写真は
わたしが1997年にアムステルダムの
「アンネ・フランクの家」に行った時の
パンフレットです。
その時のことは、拙著
「1997〜英国で1年暮らしてみれば〜Vol.4」
にまとめています。
https://amzn.to/34DAjkh