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女王とインド人青年との深い絆 「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

昨年2019年は
英国のヴィクトリア女王の生誕200年の年でした。

昨年公開された映画
「ヴィクトリア女王 最期の秘密」
をご覧になりましたか?
(英国公開は2017年)

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ヴィクトリア女王には晩年に仕えた
アブドゥル・カリムというインド人侍従がいました。

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(*こちらの写真はBBC Newsのサイトからお借りしています。
https://www.bbc.com/news/uk-england-hampshire-41285054)

アブドゥルは1887年の
ヴィクトリア女王の在位50周年記念
(ゴールデンジュビリー)
の際に英国にやって来たとき、まだ24歳でした。

ヴィクトリア女王は彼からウルドゥー語を教わるなどして
先生を意味する「ムンシ」と呼び、
寵愛します。

アブドゥルは1901年に女王が亡くなるまで
女王に仕えるのですが、
この二人の親しい関係は
長い間語られることはありませんでした。

というのは、女王の死後、
即位した息子のエドワード七世が
二人の親交の証拠となる品々を奪い、破壊させたためです。

でも、インドの女性ジャーナリスト、
シュラバニ・バスが、
偶然アブドゥルの甥の子孫が保存していた
彼の日記を発見します。

そして、英国王立文書館には、
女王がアブドゥルから教わった
ウルドゥー語で書いたノートが
処分されずに保存されていました。

バスは、このノートの内容と
アブドゥルの甥の子孫が保存していた
日記を照合して事実を確認し、
2010年、
「ヴィクトリアとアブドゥル:女王の腹心の友 その真実の物語」
を出版します。

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その本の内容に脚色も加えて映画化されたのが
「ヴィクトリア女王 最期の秘密」
でした。

ジュディ・デンチ演じるヴィクトリア女王の人間臭さ、
宮殿内部の雰囲気、
アリ・ファザル演じるインド人青年アブドゥルのまっすぐさ、
宮廷内の駆け引き・・・・
とにかく、「面白かった」の一言でした。

夫・アルバート公を亡くして
英国の女王として国を背負ってきた
ヴィクトリア女王の忙しく孤独な毎日に
人間らしい温かさと物怖じしない若者らしさで
光をもたらすアブドゥルが
だんだん心の絆を深めていく様子も良いのですが、
のっけから引き込まれたのが、
ウィンザー城での会食のシーン。

女王がお召し列車でウィンザーに到着すると、
その知らせがいち早くキッチンにも届き
「もう着いたの?」と
キッチンは大忙し。

食事の時には、
他国の王族も出席していても、
まず、女王が一皿目のスープに手をつけてから、
初めて
他の参加者の前にもスープの皿が
置かれます。

でも、ゆっくり味わっていてはダメなのです。

なぜかって?

それは、女王がスープを食べ終われば、
他の人がまだ途中でも、
全員のお皿が一斉に下げられてしまうから。

女王のペースで食事が進んでいくのです。

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(*こちらの写真はBBC Newsのサイトからお借りしています。
https://www.bbc.com/news/uk-england-hampshire-41285054)

それにしても、女王は多忙で、
朝食を食べながらも
その日のスケジュールを聞くだけでなく、
医師には(食事中なのに)排便のことまで
聞かれたりします。

本当に、食事といっても
気の休まるときではなさそう.

そして、臣下や子供達も
それぞれの思惑があり、油断ができません。

そんな中、信頼関係を築いたアブドゥルを厚遇して
ナイトとして叙爵するという女王に
息子である王子は
「それをやめないなら、女王は精神異常だと判断し
女王の立場からも即刻下ろす」
と言い渡します。

そんな風に息子に言われたビクトリア女王は
冷静な様子で、こう切り返します。

「私は81歳で
9人の子供、42歳の孫がいて
約10億の国民がいる。

リュウマチだし、
子宮脱だし、重度の肥満で
片耳が聞こえない。

私に仕えた首相は11人。
通した法案は2347案、
在位期間は史上最長の62年と234日。

5つの宮殿を持ち
約3000人の職員がいる。

私は気難しいし、
退屈で、欲深い。

太っているし、
視野も狭いし、実際に目も悪い。

多分権力に取り憑かれているし
癇癪も起こす。

だけど、私は精神異常じゃない。

私に逆らうなら、目の前でおやり。」
 
女王役のジュディ・デンチが
爬虫類のような目をして
この長ゼリフを言い切った時の静かな迫力たるや、
凄いの一言でした。

なお、この映画が英国で公開された2017年、
ヴィクトリア女王が実際に
ウルドゥー語と英語で書いたノートのうちの1冊が
女王が愛したワイト島の「オズボーン・ハウス」
で展示されていたそうです。

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(*こちらの写真はBBC Newsのサイトからお借りしています。
https://www.bbc.com/news/uk-england-hampshire-41285054)


今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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櫻木 由紀 Yuki Sakuragi
カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。