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何気ない風景の中をてくてくと歩く楽しみ

あなたは
「ナショナル・トラスト」と聞くと、
何を想像しますか?
 
1997年に英国に滞在していた時
ホームステイしていた部屋の窓から
見えていたのはそのナショナル・トラストの土地でした。 
 

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(ホームステイ先はこの看板の奥にありました。
この先は許可車両だけが通行でき、そのほかの車両の通行は
認められません)  

と言っても、何があるわけでもなく、
何気なく草木が生い茂っているだけの
土地に見えたのですが
週末になると、
そこをぞろぞろと歩く人たちがいるのです。
 
ホストマザーに
「あの人達は何をしているんですか?」
と聞いてみると、
「家の前の土地はナショナル・トラストの土地で、
週末になると散歩にくる人たちがいるのよ。」
 
本当に何にもないところなので、
最初は「?」と思ったのですが、
英国ではそのようなところを散歩する習慣があるとのこと。

ちなみに、
「ナショナル・トラスト」 (National Trust) は、
1895年に英国で設立された非営利団体です。
 
正式名称は
「歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト 」
(National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty)。
 
産業革命とともに
急速に自然が失われていく中で設立された
「ナショナル・トラスト」は
自然環境の保護も目的の一つとしており、
「ピーター・ラビット」で有名なビアトリクス・ボターも、
湖水地方の美しい風景を守るために広大な土地や農場を購入し、
亡くなった時には広大な土地と15の農場、そして建物が
ナショナル・トラストに寄贈されたのです。
 
(世界最大の環境保護団体とも呼ばれていますが、
目的はそれだけではなく、
歴史的建造物などの保護も含んでいます。)
 
英国のわたしの部屋の窓から見えたのは、
このナショナル・トラストの土地だったのです。
 

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(植物であまりはっきり見えませんが、2階の左端が当時滞在していた部屋です) 
 
また、
「一見何もない、草木が生い茂っているところを歩く」
ことも英国の文化のひとつなのだとか。
 
英国には各地に
「パブリック・フットパス」という散歩道があり、
そのトータルの長さは20万キロ以上とも言われています。
 
(ただし、イングランド・ウェールズとスコットランドでは
定義付けや管理の仕方などが異なります) 
 
それは日本の「遊歩道」のように整備されたものではなく、
場所にもよりますが、大人一人くらいの幅のところもあれば、
牧場やゴルフ場といった私有地の中を通る場合もあります。
 
「私有地を勝手に歩いていいの?」
と思われるかもしれませんが、
1932年に制定された「歩く権利法」に基づいており、
法的に問題がないのだそうです。
 
このように法的にも整備され、
たくさんの方が
パブリック・フットパスやその他の場所で、
森林や田園地帯、古い街並みなど、
以前からその地域にある
ありのままの風景を楽しみながら歩くことが、
文化の一つとして定着しているのです。 
 
ある方のエッセイか何かで
「英国のドーバーを散歩していた時
ある英国人家族が歩いているのを見かけた。
小学生くらいの男の子は
『面白くもない』という顔をしながら
両親の後を歩いていた」
という内容の文章を読みました。 
   
確かに、そのくらいの歳の男の子なら
「もっと他に面白いことをして遊びたいのに、
なんだってこんな何にもないところを
歩かなくちゃいけないんだろう」
と思っても、不思議はないのです。 
 
(その時のその彼は、もしかしたら
全く違う事情でむすっとしていたのかも
しれませんが)
 
それでも、小さいうちから両親と散歩をするうちに
自然の中を歩くことの気持ちよさや
風景の美しさを肌で感じることに
なっていくのかもしれないですよね。 
 
ちなみに、ホームステイ先の家から最寄り駅に行くには
遠回りして大きな道路を通って行くか
舗装されていない道を近道をして行くか
の2択だったのですが、
わたしはいつも近道をしていました。
 

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日頃目にする風景に慣れるにつれ、
英国の画家、ゲインズバラやコンスタブルの
風景画の景色に、
とても親しみを感じるようになりました。
 
やはりその時の景色に馴染むと、
そこを描いた絵画にも
より愛着が湧くものですね。
 
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
  
櫻木 由紀 
 

*「人生よかったカルタ・こども編」
 
今回は、「む」、
「虫歯になってよかった」。
 
どんな理由でも良いので、
(フィクションでもいいので、)
「よかった」理由を考えて見てくださいね。
 

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わたしの解答例は
「それをきっかけに歯磨き指導を受けて
その後は気をつけられるようになったから
よかった」
 
あなたはどんな「よかった」理由を考えますか?
ぜひ、聞かせてくださいね。


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