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リバプールという街に生まれて 「ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実」

12月17日、吉祥寺の行きつけの映画館で
「ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実」
を見るのを、とても楽しみにしていました。

映画そのものも楽しみでしたが、上映後にこの映画の字幕の監修を担当された
ピーター・バラカンさんのトークショーが予定されていたのです。

他にも楽しみにされていた方が多かったようで、トークショー付きの上映は
あっという間に予約が埋まっていきました。

当日は
「きっとジョン・レノンやビートルズのファンなんだろうなあ」
という方でいっぱい。 

この映画はリヴァプールという街の歴史も取り上げ、アイルランドの血を引いて生まれたジョン・レノンがこの街でどのようにあの「ジョン・レノン」になっていったかを丁寧に辿っていました。 

出演者も研究者だけではなく、ジョンの幼馴染や「ザ・ビートルズ」誕生前の
「ザ・クオリーメン」のメンバーや「ザ・ビートルズ」関係者など、たくさんのジョン・レノンを知る人たちが登場します。 

びっくりしたのが、おそらく今80代の「クオリーメン」のメンバーが今も楽しそうに演奏し歌を歌う姿。 

そんな彼らが少年だった頃、少しお金に余裕のあった友達の家に集まっては、新曲のレコードを聴いて盛り上がっていたそうです。 

当時は今と違って「世界同時配信」などはないので、米国の新曲のレコードが英国に入ってくるのは数ヶ月遅れ。 

そんな中でいち早く入手したリトル・リチャードの「ロング・トール・サリー」
のレコードを初めて聴いた時。 

みんながジョンが何というか彼の顔を見ると、あまりの衝撃にジョンは言葉を失っていたとか。

そんな風に彼が少しずつ音楽を聴く側から演奏する側になっていく姿にワクワクしました。

ジョンとポールの出会いも、まさにその舞台となった場所で語られるので、
「聖地巡礼したいけど、なかなか行けない」
ファンにとってはたまらないでしょうね。

そして、この映画は2018年に作られたので、2020年に亡くなった写真家、
アストリット・キルヒヘアも一場面だけですが出演していました。 

彼女はビートルズがメジャーデビューする前にドイツ・ハンブルクに巡業に来ていたビートルズと出会い、初期のビートルズの写真も残しています。 

彼女は「5人目のビートルズ」と呼ばれたスチュアート・サトクリフと恋に落ちて婚約し、彼が亡くなったことをジョンたちに伝えた人でもありました。 

その時の動転したジョンの様子を、彼女は語っていました。 

また、ジョンが17歳の母、ジュリアがミミ伯母さんの家の近くで交通事故で亡くなった時、彼女を最後にバス停に送ったのはジョンの幼なじみでした。 

彼は車にはねられたジュリアの様子も覚えていて、
「自分が後もう少しそばにいたら、彼女はあの事故には遭わなかったのではないか」
と感じ、彼女が亡くなった後、ジョンとの仲も元どおりには
ならなかったそうです。(決して彼のせいではなかったのですが…)

幸せな事ばかりではなく、むしろかなり複雑だった彼の子供時代のエピソードが
かなり丁寧に語られていて、非常に濃密な映画でした。 

トークショーに登場したバラカンさんは字幕を担当されたので、もちろん何度もこの映画を見ているのですが、
「ものすごい情報量なので、見るたびに新たな発見がある」
とのこと。

リヴァプール訛りの英語を字幕にするのはなかなか困難だったとか。

字幕にする際、英語の書き起こしテキストを見たもう一人の字幕監修者、藤本国彦さんから
「どうも意味が通らない」
と指摘された部分の英語をバラカンさんが何度も聞き直して元の英語で何といっているか確認したところも複数あったそうです。 

また、1951年ロンドン生まれのバラカンさんは1940年生まれのジョン・レノンより一回り近く若いものの、ほぼ同い時代に英国で育ったので、
「当時を知っている人間じゃないとわからないことがある」
とおっしゃっていました。

例えば、映画の中でジョンが子供時代によく読んでいた本として
「Just William」
という本が紹介されているのですが、
これは当時の小学生の間で大流行していたシリーズで、バラカンさんも大好きだったのだとか。

そして、当時のリヴァプールは国内でいわば「見下された」状態であり、そこで育つ人としての反骨精神というものもあったのでは、というお話も。

バラカンさんのお話、もっと聴いていたかったです!

映画とトークショーの二本立て、本当に充実した時間でした。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*この日は吉祥寺で「本屋の文化祭」というイベントも。

Zineやグッズの販売、世界の書店のトートバッグの展示、からくり細工の展示、ブックトラックなどなど。

次回開催もあるといいなあ。


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