フォニックス~こだわりは大事。でもとらわれ過ぎないで~
こんにちは。Little Readers Clubという屋号で活動しているユウキです。
英語圏で広く実施される「ガイデッド・リーディング(Guided Reading)」という、絵本を使った英語のリーディングの指導法を日本での教育に取り入れるべく活動を行っています。
本日は、最近よく聞くようになった「フォニックス」について。そもそもフォニックスってなんだ?というところから、大事なんだけど、とらわれすぎないでね!というところを、お話しします。
(トップの画像はNetflixで放映された Fuller Houseから拝借。後述に関連します)
そもそもフォニックスってなに?
フォニックス(Phonics)は、英語の音と文字の関係を学ぶものです。英単語の発音には特定のルールがあり、このルールをフォニックスを通じて学びます。フォニックスが分かると、文字がどのように音に変換されるかを理解できるため、知らない単語を読めるようになります
(※ルール外の単語もたくさんあります…💦)。
英語圏では、フォニックスは学校でかなり力を入れて教わります。娘はイギリスで3歳―6歳を過ごしましたが、4歳で初等教育が始まった時から、まずは音の認識、そのあとは単語、そして文章、、とちょっとずつステップアップして英語を読めるようになりました。
音と文字の関連が分かると、知らない単語も読めたり、意味が推測できたりするようになります。
日本では「英単語=丸暗記するもの」という認識であり、授業で英語が始まった際に苦手意識を持ってしまったり、英語に拒否反応の出る人が出てしまったりしたのは、日本の教育でフォニックスを教えないことが原因の1つなのではないかと感じます。
フォニックスの基本
学校でのフォニックスの授業を通じて、以下を学んでいきます。音を認識し、音をくっつけたり(ブレンディング)や切り離したり(セグメンテーション)することで、新出の単語でも読めるようになります。
音素認識: アルファベットの各文字や文字の組み合わせが持つ音(音素)を理解します。例えば、「c」「a」「t」がそれぞれ「k」「æ」「t」という音を持つことを学びます。
ブレンディング: 個々の音を組み合わせて単語を形成する練習です。例えば、「c」「a」「t」をつなげて「kæt(cat)」と読むことができます。
セグメンテーション: 単語を音に分解する能力です。「cat」という単語を「c」「a」「t」と分けて、それぞれの音を認識します。
フォニックスのメリット
フォニックスのメリットには色々ありますが、正しい発音が分かる・新出単語でも読める(スペルを丸暗記しなくてもいい)というところが大きいかなと思います。
なぜそんなに重要なの?
英語は音を大事にする表音文字で、音の違いを理解することが言語理解のために重要と考えられているからです。日本は表形文字(漢字)を使い、英語は表音文字(アルファベット)を使用するという言語の特性の違いがあります。
でも、、とらわれすぎないで!
しかし、フォニックスは重要な要素ですが、完璧に発音することを目指す必要は全くありません。
Fuller Houseはご存じでしょうか?私が子どものころに日本でも放映された、Full Houseの続編です。さすがにオルセン姉妹は出ていませんでしたが、DJやステファニー、ジェシーおじさんなどの配役はそのままで、原作のパワフルな一家のドタバタ劇がさらにパワーアップし、Netflixで配信されました。子供向けですが、大人も十分楽しめました!
Fuller Houseのエピソードのなかで、「非ネイティブにはその発音の違いが難しいんだよな・・・」と思わされることがありました。
冒頭の画像に写っているステファニーとジミーの話です。ジミーが希望の仕事のオファーを受けたが、オークランドなので、引っ越さないといけないということになります。この時に、ジミーがˈɔːkləndと発音したため、ステファニーはニュージーランドのAucklandだと勘違いしてしまいます。彼らの住むサンフランシスコからは相当な距離となるため、ステファニーは超遠距離恋愛に不安を感じます。
・・・が、会話のすれ違いから、実はカリフォルニアのOakland(サンフランシスコから車で30分の距離)だとわかり、事なきを得るというエピソードです。カリフォルニアのOaklandの場合、発音はˈoʊkləndとなります。最初の母音の部分が、Auだと「オー」に近く、Oaだと「オゥ」に近い発音となります。
この違いを非ネイティブが自然な速度の英会話で聞き取ることは、至難の業です。でも、、少なくとも非ネイティブとして英語を使っていくなら、この差異を発音できるようになる必要は全くありません。
上述したように、フォニックスは英語圏のネイティブの子どもたちでも、かなり力を入れて指導されます。
娘は3歳のときにイギリスに引越し、4歳で小学校0学年(レセプションと言います)に上がった際に、学校側の発音の指摘でフォニックスのスペシャルレッスンを受けました。
ある日学校から電話がかかってきて、「娘さんは普段英語ではない言語で会話していますか?イギリス人なら3歳児で完成しているはずのfの音が完成していないのです。可能なら、専門家のスペシャルレッスンを受けてほしいです」と言われました。娘はそこから、学校側が別に雇用している専門家のレッスンを、半年くらい受けました。
同じクラスのイギリス人の女の子も受けておりましたが、その子は片耳が聞こえていなかったことがこの時に分かったそうです(親御さんも気づいていなかった。娘さんに話しかけて反応が悪い時があったが、聞こえないふりをしていると思っていたそうです)。
ネイティブ・スピーカーでもこのように発音を細かく指導されて、数年かけて音を習得します。
何が言いたいかというと、ネイティブでもここまでやることに対して、非ネイティブが「完璧な発音をしたい」と同じようにやろうとするのは無理があるし、またその必要もないということです。
(勿論、トライされている方を非難する意図ではありません!)
私もイギリスで仕事をしていた際に、同僚が面白がって私にCoal(石炭)とCall(電話)の発音の違いや、Year(年)とEar(耳)の発音の違いを出題してきたりしましたが、私が誤って発音しても、それで話が全く通じないということはありません。ジミーとステファニーのように、何か話が嚙み合わないな?となるはずです。非ネイティブの自覚があるなら、誤解を生みそうな表現に補足をすればいいだけの話です。
おわりに
フォニックスを学び、正しい発音を理解しようとすることは大事です。ただし、コミュニケーションの本質は音ではなく伝えたい内容であるはず。フォニックスはとらわれすぎず、「日本語にはない概念、音って面白いな!」くらいで取り組んでいけばいいと思います。