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音楽のルーツ、名盤のご紹介-04 / 90年代後半〜2000年代、UKロック、ポストロック他

今回は90年代後半〜2000年代、UKロック、ポストロック他ここから更に自分の今の音楽にダイレクトに影響しているもの、音楽の転換期を迎えるキッカケになった作品を含めてご紹介します。



MOGWAI / "Young Team"

1997年リリースのデビューアルバム。1995年結成グラスゴー出身の4人組バンド。
静と動のコントラストによる究極カタルシスを味わえる轟音系ポストロックバンドの代表であり、今の自分のバンドに変容させるキッカケとなった。
ライブ時にはメンバーが曲によって立ち位置、楽器パートを入れ替わるのも特徴で私はあの編成に憧れた。私のバンドは当初4人編成だったが、曲を作る時にどうしてもギター2本では足りなくてもう1人メンバーを増やしたいと思ったのもMOGWAIに出会った頃だ。

彼らは現在も活動中であり、フルアルバムは全11枚、EP、サウンドトラック含めると倍近くのリリースとなり、好きなアルバムを選ぶのに困った。
個人的にはエレクトロニカ寄りの打込み系メインの曲よりは音の洪水が押し寄せるロックサウンドがやっぱり好きなのだ。

MOGWAIはアルバム通してと言うよりは名曲が様々なアルバムの中にポツポツと存在している為、選ぶのが少し難しい。
"2 Rights Make 1 Wrong"、"Helicon 1"や”My Father My King”などの曲はライブでは昇天するし、アルバムでは“ジダン”のドキュメンタリー映画『ジダン 神が愛した男』のサウンドトラックも結構好きだったりもする。サッカーは全く知らなかったけど映画も観に行った。
ではあるが、やっぱり初心に戻るべく轟音ポストロックとしての名盤ファーストアルバムを選んだ。ラストの"Mogwai fear satan"は彼らのライブで体感した者だけが味わえる轟音カタルシス。

とにかくMOGWAIは私は一番ライブを見に行ったバンドだ。
バンドも当初UK歌モノロック系だったが、アルバム"Mr Beast"に出会い、そしてこのファーストを遡って聴いて開眼し、その後の音楽人生を大きく変えていく事となった。"歌"がなくても心に響く音楽が出来るのだと知った時、歌メインのサウンドからインスト系の曲を作り始め、当時所属していたレーベルオーナーからまぁ非難を受けた。周囲からも以前(歌モノ)の方が良かったなど言われる事もあったが、私はそれでもこれが自分の音楽の行く道だと確信してしまっていた為、大きく道を外れて新しい道を歩き出した。
今は本当にその道を歩み続けて良かったと思う。今の自分があるのはMOGWAIのお陰なのだと言っていいだろう。


Travis / "The Man Who"

1999年リリースの2ndアルバム。グラスゴー出身のロックバンド。1stアルバムはOasis的サウンドだったが、この2nd以降はイギリス的な湿った匂いが漂う憂いのあるメランコリックなサウンドへとシフトし、レディオヘッドらとともに90年代後半のブリットポップ後のUKシーンを構築していく。
私的には特にColdplayのクリスも通じるボーカルの声質感もとても好みである。
カバー写真の様な少し曇った空がよく似合うどこか陰鬱感を感じられる世界観が安心するのだ。でもそこに美しいサウンド垣間見れるところも惹かれる。それが今の自分を作っていると思う。


Coldplay / "Parachutes"

2000年リリースの1st.アルバム。
かくゆう私もYellowのミュージックビデオを初めて見てからのファンである。シングルカットされた”Shiver”も良い。
その後彼らは更なる大躍進を遂げ、グラミー賞7回受賞、ストリーミング300億回だったりと世界屈指のロックバンドとなったのではあるが、残念ながら私が好きなアルバムは本作とインディーズ時代の"Brothers & Sisters"、かろうじて2nd.アルバムまでである。その後の彼らの商業的に成功するパターンのサウンドが私には上手くハマらなかった。
初々しく、荒削りでも陰鬱感溢れ、メランコリックなサウンドにクリス・マーティンの柔らかでファルセットが光るボーカル、これぞブリティッシュ感特有でもある曇り模様が似合う音がもう堪らなく切なくなる。それがとにかく自分の琴線に触れまくるのだ。

オマケだけれど、Pretenders(1983)の"2000マイルズ"をクリスがカバーしてるのはとても興味深い。良いクリスマスソングが出来なかったとプリテンダーズをカバーするのは、私も学生時代よくコピバンで弾き語りとかしてたのでちょっと嬉しかったりもする。


Radiohead / "OK Computer"

1997年リリース。
やっぱりこのアルバムを選んでしまう。
"KID A"にしようと思った。あのアルバム通したウェットで陰鬱感が堪らない。しかしながらOK Computerを聴き返してみると各曲のクォリティが高く、粒揃いの名曲が並ぶ。彼らのキャリアの頂点とも言える作品だろう。

1曲目からの"Airbag"がもう最高過ぎる。
#4"Exit Music"からの"Let Down"の切ない美しさや"No Surprises"の鉄琴とギターアルベジオの旋律で自死について歌うトムのボーカルでもう胸いっぱいになる。
そして特に#7"Fitter Happier"のコンピュータのボイスボックスを弄って朗読させたと言うこの曲を聴くと涙が込み上げてくる。こういう曲がアルバムに入る事でより感情が没頭され、完璧な作品へと仕上げる。自分も作り手として学びたいと思っている。


SMASHING PUMPKINS / "Machina / The Machines of God"

2000年リリース、5thアルバムでこの後バンドは実質的に解散する。
1988年に結成、ニルヴァーナと並ぶ90年代のオルタナ・グランジ最盛期を代表する存在スマパン。
2nd.アルバム"Siamese Dream"や3rd.アルバム"Mellon Collie And The Infinite Sadness"が名盤とされていると思うが私は迷う事なくこの作品を選ぶ。私にとってこんな名曲揃いのアルバムはない。
#1"The Everlasting Gaze"からジミー・チェンバレンのドラムが痺れる。アウトロの前のめってイケイケなプレイに笑みが溢れる。#8"This Time"はイントロからもうシューゲでキラキラなのにリズム隊のアンサンブルがグイグイとノリを構築する感じが特に私の心をトキめかせてくれる。やっぱりロックってリズム隊なのだよなぁとしみじみ感じる。

グランジ音楽が好きと言う訳でもないが、ここにはメタル、ニューウェーブ、ゴシック、シューゲイザーと様々な要素がミックスされスマパン色で形作られる。特にシューゲイズサウンドをかなり感じられるため、アメリカのバンドではあるがブリティッシュ感が漂っていて好きなのだ。あのシガー・ロスもバンド創設時に影響受けていたのがスマパンと言うのも何だか嬉しくさえ思う。

本作はレコーディング中にメンバーが脱退してしまい、リリース後には解散する事になるのだが、愛を求め、寂しさと空虚さの中、作品を作る孤独、ビリーの心中を思いつつ彼の叫びが聴こえてくるようだ。それはいつぞやの自分に重ねてしまったりする。メンバーの色々な問題を抱えながら制作を進める苦悩、毎朝起きる度にもうやっぱりダメだと落胆し、それでもメンバーと幾度と話し合い、自分にも問い続け、踏みとどまって何とか越える道を導きだし続けられ作品が完成した時には泣いた。
と言うことで、このアルバムは自分に重ねてしまう思い入れのある大切なものになっている。


Saxon Shore / "The Exquisite Death of Saxon Shore"

ペンシルヴァニア出身の5人組ポストロック系インストバンド。
2ndアルバムの"Four Months of Darkness"と同様によく聴いたアルバムだ。
シューゲ的なフィードバックノイズ、アルベジオとピアノの旋律、エレクトロニカ要素がMOGWAIを匂わせUKロックファンも聴きやすいポストロックで美しさのサウンドスケープが空の景色も変えてくれるよう。
私は特に#2"This Shameless Moment"、#7"Marked with the Knowledge"が大好きで今でも聴くし、#10"The Lame Shall Enter First"はアルバムを昇華させるべきトラックで大好きだ。

私のバンドの曲作りでもこの言葉で言い表せない美しさをいかに形にする為にその対照である暗闇をいかに深く落とし、その頭上にある光が儚く尊いかのコントラストを大事にしている。
その目指す光が輝く時を知らせてくれる眩いアルバムなのだ。


Björk / "Post"

1995年リリース3rd.アルバム。アイスランド出身。
前進バンド「The Sugarcubes」時代から彼女の歌声は抜きん出て輝いていたが、ソロになって楽曲制作の才能にも魅せたれた。そしてビョークの声は本当に伸びやかで自由で、魂からの言葉が"生"を生み出しているかの様で、自分もこんな風に歌えるようになりたいとバンドを始めた頃思っていた。

作詞作曲アレンジを手がける彼女の音は、実験的かつエキセントリックで多様性を含みながらもキャッチーでもあり、そして何より彼女の飛び抜けた歌唱力で確固たるオリジナル性を確立した。彼女のスタイルや衣装なども突飛だと言われる事もあるが、私にはそんな彼女の才能に羨望するばかりだ。
97年リリース”Homogenic”と迷ったが、やはり#1"Army of Me"から始まり#2"Hyper ballad"、"enjoy"などの素晴らしい楽曲にシビれ、こちらを選出した。30年近く前なのに今でも新鮮に聴ける。パワーを貰える作品だ。


【予告】

次回は名盤ご紹介の最終回(の予定)です。
今の自分の音を作る上で絶対的不可欠なバンドのご紹介です。


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