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山奥の村、別れの雨【ジョージア旅行記5】

こんにちは!yukiです。

今日は、
ジョージア旅行記の最終回です。

旅で出会った3人の仲間たちと、
ジョージアでもかなり田舎の
ウシュグリという村へ行った
お話をしていきますね。

今回ちょっと長くなってしまいました。

お時間あるときに
読んでいただけると嬉しいです。

楽しんでいただけますように!



山奥のウシュグリへ


鳥の鳴き声が小さく聞こえてくる、
とても静かな朝。

目を覚まして時計を見ると、
午前8時を過ぎたころでした。

ほかの3人はまだぐっすり寝ています。

ここメスティアでは、
ロシア人のエリザベスアンナ
オーストラリア人のマイクと、
一緒に行動しています。

3人とは、
メスティアに向かうバスで
たまたま出会ったのでした。

この日はウシュグリという村へ、
1泊のショートトリップに行く予定。

「9時に出発しよう」
という話になってましたが、
時間になっても誰も起きてきません汗

昨夜、
チャチャ(ブドウから作ったウォッカ)を
たくさん飲んだせいでしょう。

まあいいか、と
温かいお茶をいただきながら
のんびり待ちます。

「おはよう…眠い…」

9時半頃、
マイクが起きてきました。

それに続いてエリザベスとアンナも。

みんな、とても眠そうで、
思わず笑ってしまいました。

10時すぎに宿を出て、
町でウシュグリ行きの車を探します。

ちょうど運良く、
2人の中国人観光客がチャーターしている
大型車に空席があったそうで、
乗せてもらえることになりました。



メスティアを出て少し走ると、
舗装路はでこぼこの山道に変わります。

山の中を2時間ほど走ったのち、
パッと視界がひらけ、
集落が見えてきました。

「ウシュグリについたぞ!」

運転手さんが皆に声をかけます。

うわあ、
なんだか現実感のない光景!

山の麓のなだらかな一帯に、
いくつかの集落が少しずつ離れて
形成されています。

いくつも残る“塔”は、
侵略者から身を守ると同時に、
銃で反撃するために建てられたもの。

この塔…
どこかで見た気がする…
ラピュタかな。

(帰国してから映画を見返しましたが、
 ヒロインが住んでいた家に、
 似ている塔が建っています)

高い所に建つ教会で、
運転手さんが降ろしてくれました。

「君たちは、
 ウシュグリに泊まっていくんだよね?
 私たちはしばらく滞在したら帰るけど、
 乗せてかなくて大丈夫かい?」

「ええ、私たちは泊まるので大丈夫。
 ありがとうございました!」

山から冷たい風が吹き下りてきますが、
集落では雪解けが進んでいて、
あちこちでカエルがゲコゲコと鳴いています。

「まずは宿を見つけて
 荷物を置きたくない?」

「うん、それが良いよね」

丘を下っていくと、
10歳くらいの少年
こちらへ駆けてきました。

「泊まるところ決まってる?
 うちで民泊やってるから、
 泊まっていきなよ!」

「ちょうど良かった、
 お家見せてもらえる?」

「もちろんさ、着いてきて!
 ただ、1軒につき2人しか泊まれないから、
 別々になっちゃうけど良いかい?」

「もちろんOK!」

少年の名前はジョージ。
(ジョージアのジョージ!)

ジョージに連れられて村を歩きます。

途中、
見るからに強そうな犬が、
トコトコ人懐っこくついて来ました。

ビクトリアによると、
家畜を食べてしまうがいるので、
護衛のために飼われているのだそう。

吠えたら超コワそう…笑


歩きながらジョージが言います。

「僕、めっちゃ足速いんだぜ!
 競争しようよ!」

「おっ、子供だからって
 手加減しないぞ!」

マイクが受けて立つことに。

ビクトリアの合図で
バッと走り始めました。


結果は…
なんとジョージの勝ち!

マイクもめっちゃ速かったけど、
ジョージは自分で言うだけあって凄かった。
長靴なのに。


やがて私たちは、
集落のなかに入っていきました。

やはり雪解けで
足元がぬかるんでいます。

家畜のフンも混ざっているので、
かなり注意して歩かないと、
大変なことになってしまう!

エリザベスとアンナ、
マイクと僕に分かれて、
家に案内してもらいました。

年季が入った建物の外見から、
大丈夫かな…と圧倒されてましたが、
中は清潔で居心地も良さそうです。

「シャワーは凍結してて使えないんだ。
 それでもいいかい?」

マイクと僕は顔を見合わせます。

「まあ、一泊くらい、
 シャワー浴びなくたって大丈夫だよね」

ということで、
お願いすることにしました。

外へ出て、
エリザベスとアンナと合流。

・・・彼女たちは、
ちょっと渋い顔をしてやって来ました。

アンナが言います。

「ねえ、シャワー使えないって聞いた?
 そういうの本当イヤなんだけど」

「1泊くらい、
 気にしなければいいじゃん」

マイクが返しましたが、
2人はどうしても嫌なのだそう。

(インドのラダックで8日間シャワー浴びられなかったと言いかけましたが、ドン引きされそうなので黙っておきました)


エリザベスも言います。

「今から車を探せば、
 メスティアに帰れるかもしれないわ」

え、まじ、帰るの?!
来たばっかだよ?!


マイクと僕は、
またもや顔を見合わせました。

マイクがささやきます。

「俺もここに泊まりたいけど、
 このロシアンガールズ、
 言い出したら聞かないぜ。
 どうする?」

「参ったねえ。
 まあ、スムーズに来られたのは
 彼女たちのおかげだし、
 最後まで一緒に行こうか笑」

「そうだな、賛成」

じゃあ帰ろっか、と彼女たちに言います。

ホッとした表情の2人。

せっかく民泊できるんだし、
村の暮らしを知りたかったけれど、
ご縁を優先することにしたのでした。


しかし可哀想なのは、
「お客さん4人も連れてきた!」
得意になっていたジョージです。

しょんぼり落ち込んで、
ほとんど喋らなくなってしまいました。

みんなで謝りながらなだめて、
マイクが故郷のコアラキーホルダーをあげると、
ようやく元気を取り戻してくれました。

「村の出口で待ってれば、
 たまに車が通るから、
 声かけてみるといいよ」

そう言って、
案内してくれたのでした。

チャチャ・パーティ


村の出口で車を待っていると、
ランドクルーザーみたいな
大きな車がやってきました。

「メスティアに行きたいんですけど、
 乗せてもらえませんか?」

「もちろんOKさ!乗って行きな!」

なんてラッキー…!
本当にメスティア帰れちゃいそうです。

車には3人の男性が乗っていて、
皆さんメスティアに住んでるのだそう。

休日で遠出した帰りとのことでした。



でこぼこの山道を走る間に、
日はどんどん暮れていきます。

山道の途中で、突然、
運転手さんが車を停めました。

「せっかくの出会いだ、
 乾杯しようぜ!」

彼らの手には、
ペットボトルに入った透明のお酒。

折りたたみコップに注いで、
勧められます。

「これ、何のお酒なの?」

エリザベスが尋ねると、

「チャチャだよ」

との答えが返ってきました。

でた、チャチャ!
思わず4人で笑ってしまいます。

「お、飲んだことあるのか!
 美味しかっただろう。
 いっぱいあるからどんどん飲め!」

チャチャの回し飲みと、
パンとチーズの回し食いがはじまります。

しばらく飲み食いして出発したものの、
強いお酒でみんな酔いはじめ、
車内がいっそう賑やかになりました。

辺りはもう真っ暗です。

「おい、君たち、
 あの塔に入ってみたいかい?

「入っていいんですか?」

「もちろんさ!
 村だと入場料とられるけど、
 廃墟の塔に入っちゃえばいい」

車は真っ暗闇のなか停車し、
塔の中へ案内してくれます。

中はがらんとして、何もない空間。

床の隅には、
通り抜けできるスペースが空いていて、
ハシゴで階を移動できます。

真っ暗で、
写真はまともに撮れず…

まあ、入れただけ、
貴重な経験と思っておきましょう笑

車に戻ると、
またここでもチャチャの
回し飲みが始まります。

その後も、
“しばらく行っては、停車してチャチャ”
というのを何度も繰り返しました。

さすがにお酒が強すぎて、
頭くらくらする…

やがてメスティアに近づいてきたころ、
運転手のニコロズさんが言いました。

「今夜は俺の家に泊まったらいい!
 続きを楽しもうぜ!」

そして家に泊めてもらい、
チャチャを飲みながらの
賑やかな夜となったのでした…。


束の間の休息


薄暗い部屋のベッドで目が覚めました。

遠くから、
鳥の鳴き声が聞こえてくる。

横を見ると、
床に直置きされたマットレスの上で
マイクが寝ています。

・・・頭痛い、気持ち悪い。
明け方近くまで飲んでいたはず。

時計を見ると、午前11時半でした。

フラフラと隣の居間へいくと、
飲んだ状態のまま散らかっている。


動く力が出ないので、
庭に出てぼんやり座ります。

しばらくして、
エリザベスとアンナが起きてきました。

「おはよう。よく眠れた?」

「うん、でもひどい二日酔い。
 2人はよく眠れた?」

「私たちも今まで寝てたわ。
 私も二日酔いよ、
 あんなにチャチャ飲むなんて…」

エリザベスは二日酔いと言いながらも、
キッチンでインスタントコーヒーを
入れてきてくれました。

アンナが、

「yukiあなた、飲みながら寝てたわよ。
 机でうつぶせになって、
 チャチャが回ってくると飲んで、
 またうつぶせになってたわ笑」

とからかってきます。

ぼんやり覚えてる…汗


やがてマイクも起きてきました。

「やばい、記憶がない…」

だいぶですね。

というか、みんな結局、
シャワー浴びてないという。笑


それはそうと、
家主のニコロズさんが見当たりません。

家には誰もいない。
仕事にでも出てしまったのでしょうか。

とりあえず居間をキレイに掃除して、

いったん何か食べよう、
ということで町のカフェに行きました。

野菜や果物を食べているうちに、
二日酔いもだんだん回復!

それから家に戻ると、
しばらくしてニコロズさんが
帰ってきました。

「昨日は楽しかったよ!
 よく眠れたかい?」

ニコロズさんとしばらくお話しし、
たくさんお礼を言って、
明るく手を振ってお別れしました。

そのあと初日に泊まった宿に戻り、
夜までのんびり過ごして、
いつもと違うお店で夕食をとります。

ここ数日の楽しい思い出に、
話が弾むのでした。

とうとう明日は、
メスティアを離れる日。

別れの雨


翌朝6時。

アラームが鳴り始め、
みんながモゾモゾ動き始めます。

外は、しとしとと、
冷たい雨が降っていました。

荷物をまとめ、
宿のマノニさんから朝食弁当を受け取り、
ミニバスのピックアップを待ちます。

3人とは、今日でお別れ。

エリザエスとアンナは再び首都へ、
マイクはバトゥミという西方の町へ、
僕はトルコへ向かうのです。

ミニバスに乗り込み、
メスティアの塔が
遠ざかっていきます。

窓を打つ雨は
どんどん強くなっていく。

私たちの間には、
どこか感傷的な空気が漂っていて、
みんな静かに窓の外を眺めていました。

「バトゥミに行く人は乗り換えだよ」

運転手さんがそう言って、
バスを道端に停車させます。

1台のバンが停まっていて、
マイクと僕はそれに乗り換えるのです。

エリザベスとアンナも
バスを降りてきました。

「一緒に旅できて楽しかったわ。
 また会いましょう!」

雨に打たれながら、皆でハグ。

それぞれの車は、
別々の道に走りはじめました。


「みんなで旅できて、
 楽しかったね」

「本当にそうだよな。
 俺たち、今日からまた1人だぜ!
 どうするよ?笑」

確かに、
ここから1人はキツい!

でもその寂しさもまた、
旅の味わいなのだから…



やがて、雨の降り続く中、
バトゥミに到着。

最後に、
一緒にお昼を食べました。

「yuki、これからイスラエルも行くだろ?
 俺もあと少しでイスラエル帰るし、
 テルアビブでルームシェアしてるから、
 泊まりに来なよ!」

そう、マイクは、
イスラエルに留学中なのです。

「ぜひ行かせてほしい!
 また近いうちに会おうね」

お店を出てマイクと固く握手し、
「グッドラック!」と別れました。



僕は国境へ向かうバスに乗りこみます。

黒海沿いの道を走っていく。

海から強い風が吹きつけ、
雨は横殴りになっていきます。

国境でバスを降りたときには、
もはや傘が意味をなさないほど、
大荒れとなっていました。

でも、嵐で良かったかもしれない

いい天気だったら、
きっと感傷に浸ってしまうから。

風雨になんて負けない、
未知の世界へ進み続ける!と
心は燃え上がっていました。

そうしてジョージアを出国し、
トルコへ入国したのでした。

ジョージア旅行記 おしまい



最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

これでジョージア旅行記は終わりです。

次はトルコでの出来事を
記事にしていきたいと思います!

それでは、今日も良い1日を!


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